「やるせないこの空気感が好き。」カムイ外伝 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
やるせないこの空気感が好き。
レビューした皆さんも言ってる事だが、やはりCG加工した部分が気になる。
鮫、船、海、跳躍する人間——
太陽と砂の熱さえ伝わってきそうな映像が見事であればあるほど、
そして役者陣が生身で高水準のアクションを披露すればするほど、
CGの嘘臭さがいよいよ際立ってしまう。うーん、残念。
だが徹頭徹尾崩れない作品のトーンは好きだ。
作品全体を覆う、やるせない空気。
和やかなシーンにすら漂うぼんやりした重苦しさ。
そして、随所に見え隠れする狂気。血と暴力への渇望。
この映画の筋書きなら、もっと悲壮感や怒りを煽ってカタルシスに変える事も出来たはず。だがこの映画はやるせなさや虚無感といったものを出すために、敢えてそういった感情の昂ぶりを抑制しているように思えてならない(あの白日夢のような虐殺シーンが最たる例だ)。
どこか超然とした山崎努のナレーションが、この映画の世界観に完璧なまでにハマっていて味わい深い。
けどまあ“エンタメ超大作”と銘打って売り出すにはちょいと苦しい映画かなあ。個人的には同じ制作陣で続編希望なんだけども。
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