劇場公開日 2008年10月11日

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「自転車で平和町から大野町へ通うのは大変だと思うぞ・・・」しあわせのかおり kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自転車で平和町から大野町へ通うのは大変だと思うぞ・・・

2024年5月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

幸せ

 ロケ地のほとんどはわが地元の金沢。知らない場所も数多く登場したのがショックだったため、金沢検定受検を諦めてしまいました。その悔しさゆえに、「大野から野町行き電車?」とか「平和町へ行くのになぜ電車?」と鉄道記念日にちなんで突っ込んでみたりしてみました。ううう、ローカル・・・

 デパートの営業部に勤務する貴子(中谷美紀)が出店交渉のため王さん(藤竜也)が営む小さな中華料理店に通いつめ、味に魅了されて自ら弟子入りするというストーリー。安定した会社勤めを辞める決心にも心打たれますが、貴子が王の心を徐々に開いていくところが好きだ。

 ストーリーは単調ながらも中谷美紀と藤竜也の演技の魅力、それに密かに貴子に恋心を抱く田中圭の見事な金沢弁にのめり込んでしまいました。他の役者さんは“だら”とか“ぞいや”としか言ってなかったし、主演二人が中国人と東京人だったからかもしれません。

 この映画はとにかく料理の映像が凄い!これまでにも洋邦問わず、料理が印象的な映画はあったし、食欲がわいてくる映画は多かったけど、シンプルでありながら撮影角度や音響効果だけで魅せてくれる作品は少ないような気がします。そのリアルさを喩えるなら、タマネギを刻むシーンで涙が出てきてしまうほど・・・。

 名月会へ参加するエピソードではマンネリ化した料理対決モノ路線になるかとも恐れていたのですが、意外な展開でした・・・たしかに蝉の声が聴こえる季節にカキは・・・といった感じ。料理によって人に幸せを与えるといったテーマで比較すると、『バベットの晩餐会』や『厨房で逢いましょう』に近いものがあるのかもしれません。

 ほぼ金沢という映画なのにご当地映画の雰囲気がなかったのはよかったと思う。それどころか泣かせるシーンが上海ロケなんだから金沢のことすら忘れてしまいそうです。ただ、紹興酒の産地紹興の地が大野の町に似ていたことが気にかかる。王さんが金沢に永住しようとしたのも同じ水を感じたためなのだろうか、と。

 この映画を観た後ではなぜだか左手首を鍛えたくなってきますが、我が家では電磁調理器となってしまったため中華鍋を振るうことはできなくなりました。今後、中華料理の世界にチャレンジするためには爆発覚悟でカセットコンロを使うしかないのでしょうか。

【2008年10月映画館にて】

kossy