劇場公開日 2008年9月13日

「笑って、笑いながら泣いて、泣きながら笑って。」パコと魔法の絵本 いきいきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5笑って、笑いながら泣いて、泣きながら笑って。

2008年9月2日

泣ける

笑える

楽しい

「お前がワシの名前を知ってるってだけで腹が立つ」
 と理不尽な物言いをして他人を傷つけてきたワガママ放題のクソジジイが、
 強がっていた自分の弱さを自覚し、
 どうしていいか分からない感情が溢れ出してきた時、
 あったかで、やさしい物語が動き出す。

 一代で会社を大きくし、
 ワガママ邦題で傲慢に生きてきた大貫(役所広司)は、
 元・有名子役の室町(妻夫木聡)、
 ピアスとタトゥー入りの看護士のタマ子(土屋アンナ)、
 謎の人物な堀米(阿部サダヲ)、大貫の甥でボケキャラの浩一(加瀬亮)、
 浩一の妻でお金にとことん弱い看護士の雅美(小池栄子)、
 轢かれた消防士の滝田(劇団ひとり)、
 傷だらけで傷を負ったヤクザの龍門寺(山内圭哉)、
 ジュディ・オングと噂話が大好きなオカマの木之元(國村隼)、
 ピーターパン気取りの医者の浅野(上川隆也)、
 と患者も医者も何かを抱えていて、クセのある人物ばかりの病院で、
 純粋な心を持っているパコ(アヤカ・ウィルソン)と出会う。
 パコは毎日、毎日、同じ絵本を読んでいた。
 ある日、パコを引っぱたいてしまった大貫は、パコの病気のことを知り、
 プレゼントの絵本の秘密を知り、
 パコのために何かをしてあげたいと想いはじめる。

 元となっているのは MIDSUMMER CAROL ガマ王子vsザリガニ魔人
 という舞台だそうで、それを 下妻物語 や 嫌われ松子の一生 という、
 カラフルだけど毒のある作品を作ってきた中島哲也監督が
 豪華なキャストを使い、
 監督らしい極彩色満載のカラフルでポップな世界に仕上げ、
 クライマックスではフルCGのキャラクターたちと、
 病的な人物の実写との楽しくて大胆な合成を豪快に織り交ぜて、
 クソジジイと純粋少女の奇妙な交流をシニカルに、でも、あったかくて、
 サービス精神旺盛な笑いタップリに描き出した、子供はもちろん、
 もしかしたら大人の方が楽しめるかもしれない、
 笑って、泣けるファンタジックな絵本。

 ストーリーはギャグがなかったら、
 こちらが照れてしまうくらい純粋でストレートではあるが、
 その照れ隠しなのか、序盤から阿部サダヲが笑わしてくれて、
 僕はあのボタンが押したくてたまらない。
 その辺のテンドンというか、繰り返しがクドイと思ってしまったら、
 ちょっと楽しめないかもしれない。でも、僕は大好きです。
 ガンダムネタなどは子供でも、まだ分かるかもしれないけど、
「人間~なんて、ララ~ラ~ラララ、ラ~ラ~♪」などと歌い始められても、
 ジュディ・オングの曲を歌い始められても、よくわかんないだろうし、
 大人のほうがギャグは楽しめるかな。

 アヤカ・ウィルソンは新人みたいなのでまだ演技はともかくとして、
 可愛すぎるぐらい可愛くて、パコという少女に、
 作品に説得力を持たせてるように思うし、豪華な出演者の中でも、
 やはり、役所広司のクソジジイぶりはさすがで、
 ちょっと下手に演じる演技もよかった。
 阿部サダヲの暴れっぷりは楽しく、もっと暴れてくれ~などと思い、
 國村隼のカフェオレなジュディ・オングも、
 上川隆也のキラキラなピーターパンも最高で、他のみんなも最高。

 主要キャスト以外でも貫地谷しほりの使い方も面白く、
 彦麻呂なんて爆笑です。一瞬であれだけ笑わせられるとは思わなかった。
 だけど、エンドロールで他にも知ってる名前があって、
 気付けなかったのが、ちょっと悔しい。

 ちょっと変わっていて、不器用な生き方しか出来ない、
 ダメな大人たちが少女のために、
 無駄だと思っていたことに一生懸命になる。
 その変だけど、楽しそうな姿に、バラバラだった者たちが、
 まとまっていく過程に、なんだか泣けてくる。
 サイドストーリーも笑えるんだけど、泣けてくる。
 僕にも、先生、涙の止め方を教えてよ。

 やるな~、と思ってしまった、
 クライマックスのフルCGのキャラたちと実写の融合具合も素晴らしく、
 オチの切れ味もなかなかでした。

 あえて言うなら、クローズZEROの黒木メイサほどではないが、
 エンディングならまだしも木村カエラの歌のシーンは途中にはいらないか、
 そして、ラストもドリフを少し期待してしまったか、
 というぐらいでしょうか。

 大好きです。

いきいき