劇場公開日 2008年9月13日

パコと魔法の絵本 : 映画評論・批評

2008年9月9日更新

2008年9月13日より有楽座ほかにてロードショー

ファミリー向けに仕上がった極彩色の中島ワールド

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日本映画界に衝撃を与えた、「嫌われ松子の一生」から2年。中島哲也監督、待望の最新作は……恐ろしいほど涙腺を刺激する。極彩色の中島ワールドで今回描かれるのは、記憶が1日しか持たない少女・パコと、一代で会社を築いた頑固ジジイ・大貫を中心とした、どこか病を抱えた濃い人々だ。原作が戯曲ということもあり、病院という閉鎖空間を舞台に、冒頭から前作以上に小劇団の主流といえるハイテンションとツッコミ笑いが炸裂! それを狂言回しとして引っ張るのが、「舞妓Haaaan!!!」以上にブッ壊れたキャラを演じる阿部サダヲだ。これに乗れるかどうかが最初の評価の分かれ目となるだろう。

とはいえ、医師と患者が一丸となり、パコが愛読する絵本を上演する展開になってからは、観る者を選ばない。特殊メイクで病めるキャラに変貌、最終的にCGキャラに化してしまう俳優陣では、まさに一代で「ガイアの夜明け」な人生を築き、哀愁たっぷりな大貫演じる役所広司。そして、元名子役の苦悩を全身全霊で演じた、妻夫木聡がダントツで素晴らしい。ブラックな味わいが強かった前作がテリー・ギリアム風だと例えるなら、あくまでもファミリー向けに仕上げた今回はティム・バートン風だといえる。そのため、前作の熱烈な支持者には、若干モノ足りなさも感じるかもしれない。とはいえ、作品ごとに進化する“天才・中島哲也”を目の当たりにすることだろう。

くれい響

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