劇場公開日 2008年11月15日

ハッピーフライト : 映画評論・批評

2008年11月11日更新

2008年11月15日より日劇2ほかにてロードショー

航空機の飛行に関わるプロの姿を描くグランドホテル形式の群像劇

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いくら矢口史靖監督作とはいえ、またも「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」路線を期待するのは間違いだろう。もちろん、デビュー当時の不幸な女路線でもない。今回は、パイロットやCA(キャビン・アテンダント)をはじめ、航空機の飛行に関わるプロフェッショナルの姿を描く。つまり、“矢口版「大空港」”、もしくは“空港版「THE 有頂天ホテル」”といえる、グランドホテル形式の群像劇である。

一機の飛行機が飛び立ち、着陸するためにどれだけのスタッフが携わっているのか。そんな素朴な疑問に応えるべく、監督はお得意の徹底調査。その効果は絶大で、専門用語・アイテムが飛び交うなか、7カ所ほどに散らばった各エピソードを巧くまとめている。さらに、窓際族状態なオペレーション・ディレクターを演じる岸部一徳や、愚痴りまくりのグランドスタッフを演じる田畑智子などの好演が光る。アクシデント発覚以降は、パニック映画お約束の展開に突入。「大空港」のパロディ「フライング・ハイ」ほど狂っちゃいないが、綾瀬はるか演じる新人CA役など、ちょいとやりすぎな描写は気になる。「THE 有頂天ホテル」に比べればキャストの弱さ、「クライマーズ・ハイ」に比べれば緊張感が欠けることも否定できない。とはいえ、常にエンタテインメントを追求する矢口節の力技は、伊丹十三の後継者は、じつは彼かもしれないと思わされるほど。今後、飛行機に搭乗する際に、間違いなく周囲を気にしてしまうことだろう。

くれい響

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