劇場公開日 2008年7月19日

「十数年ぶりに再鑑賞」崖の上のポニョ ぽよのすけさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 十数年ぶりに再鑑賞

2025年8月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

子どもの頃に観たきりだったポニョを十数年ぶりに鑑賞。
当時は「歌がいい!かわいい!楽しい!」で終わっていた物語が、大人になった今ではまったく違う表情を見せてきた。

○フジモトは「恐ろしい魔法使い」ではなかった。
記憶の中のフジモトは悪役だった。だが改めて観ると、彼は家族を想い、海と人間界の均衡を守ろうとするただの優しい父親だった。妻であるグランマンマーレに頭が上がらない姿も微笑ましく、むしろ人間臭さが魅力的に映る。

○おばあちゃんたちの愛らしさ
ジブリ作品に欠かせない存在、老人たち。
デイケア施設でキャッキャとはしゃぐおばあちゃん軍団は愛らしく、トキさんの棘ある言葉、偏屈さがありながらも愛情深いところが作品に厚みを与えていた。彼女たちがいることで、非常時の物語に「温かな日常」が添えられているのを感じた。

○宗介のまっすぐな愛
「僕が守るよ」「ぼくおさかなのポニョも 半魚人のポニョも 人間のポニョもみんなすきだよ」と宣言する宗介。イケメンすぎる。一生かけてもこのセリフ言える人はそういないのでは。
幼さゆえの無鉄砲さではなく、ポニョに対する真剣さがにじむ言葉だった。ただの5歳児なのに、ヒーローのように頼もしく映る。ポニョが惹かれるのも当然だと思えた。

○海の持つ無数の顔
今回一番心を打たれたのは、水の表現だ。
• 穏やかで透明感のある母なる海
• 魚のように跳ねる、生そのもののような海
• 津波を思わせる脅威としての海
• 深海に広がる命の根源としての海

子どもの頃は「追いかけてくる怖い波」としか感じなかったが、大人になった今は「命を与え、奪う両義性」を持つ存在として胸に迫ってきた。特に津波を連想させるシーンでは胸がざわめき、ただのファンタジーでは済まされない現実の重みを思い出させた。
CGではなく手描きでこれだけ多彩な水を表現することに驚かされる。水は背景ではなく、物語を導き、命を象徴する巨大な存在として常に画面に息づいていた。



○結びに
子どもの頃に感じた「かわいい世界」から、大人になって気づく「自然の脅威と優しさ」「家族の絆」「愛の純粋さ」へ。視点の変化によって、作品がまるで別物のように立ち上がってきた。
海は恐ろしくもあり、温かくもあり、命の源そのものだ。その“海の顔”に圧倒されながら、改めて宮崎駿の底知れぬ想像力に感服した再鑑賞だった。

ぽよのすけ