「人間ってすごい」崖の上のポニョ takahiroさんの映画レビュー(感想・評価)
人間ってすごい
大画面に映るオープニングの海のシーン、これを全部アニメーターが手で描いたのかと思ったら、人間ってなんてすごいんだと、泣きそうになった。
きっと同じものをCGで見せられてもなんとも思わないはず。
ただ鉛筆で描いた線に色がついた絵が動いているだけなのに、そこに宮崎監督のイマジネーションが加わると、それはCGなんてものをはるかに超えてしまう。
ハリウッドは2Dは古くてつまらないと思ってその技術を捨てたらしいけど、きっと彼らはこれを見たら後悔するはず。
お子さんがいる方で、うちの子わかるかしらと思っているひとがいたら、そんなこと考えずに、いっしょに見に行ってほしい。
宮崎監督は特集番組で「子供達はわかるんだよ、理屈で映画をみないから」と言っていました。「こどもにわかるか?」という時点で、理屈で映画を見る大人目線になってしまっています。子供達はきっと目を輝かせて見るはずです。
そして、いっしょに見たお父さんやお母さんたちは、宗介のように育ってほしいと思うはず。彼の存在は、この暗い世の中の希望でしょう。
最近のうんざりするような、漫画やテレビドラマの映画化の中にあって、巨匠と言われる人たちが真摯な気持ちで、子供達に向けて(もちろん大人にも)オリジナル映画を作っているなんて、もう他にはいないんではないだろうか。
しかも、俳優を使うことに「商業的」なんて批判もあるようだけど、その俳優達は宣伝目的でテレビに出まくることもしない。
最近の宮崎作品が公開されると、決まって俳優起用や物語がわからないことが批評の対象になることが多いけど、作品を見る目がそこだけというのは余りも悲しい。様々な機会で監督は、お決まりの論理で映画をつくることに興味はなくなってると言っているのだから、私たちも理屈なんて考えず映画をみたらすごく楽しめる心が洗われるような素晴らしい作品になってます。そう子供の目で。
そして、映画が終わって外に出たら、この世の中がすこし綺麗に見えるかも。