劇場公開日 2008年1月19日

「ギリギリの攻防」ヒトラーの贋札 スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ギリギリの攻防

2015年10月7日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

なかなか興味深いナチスのユダヤ人収容所物でした。
ベルンハルト作戦で、強制的に収容所で贋札作りをさせられていたユダヤ人達の恐怖感が手に取るように伝わってきて、ハラハラドキドキ・・・まあ主人公はそこでは死なないことが分かってはいつつも、それでもハラハラドキドキさせられたのは、やはりいつ死んでもおかしくない収容所の状況が成せる業だったと言えましょうか。

まあユダヤ人虐殺を題材にした映画は今まで何作も作られてきましたが、今回は特別なスキルを持った者たちが集められた贋札作りの収容所と言うのが、かなり興味を惹かれた部分でしたね。
贋札作りを拒めば即銃殺、贋札作りが完成してもおそらくは即銃殺、こんな究極の状況で生きなければいけなかったユダヤ人達の心境たるや、いかほどのものだったのか・・・。

しかし他の収容所に比べて物凄く恵まれた環境だったのも、かなり印象深かったですね。
それだけナチスもこの贋札作りに運命が懸かっていたことへの表れなのでしょう。
そんなナチスに媚びへつらってでも生きようとする主人公のソロヴィッチと、正義感を振りかざして決してナチスには協力しようとしないこの作品の原作者でもあるブルガーの構図には、本当にヤキモキさせられました!

今日銃殺されるよりも明日のガス室を選ぶでしたっけ、それが究極の状況に置かれた本当の人間心理ですよね。
ただ仲間を決して裏切らない主人公は元々は悪党だっただけに、微妙に感情移入できない部分があったのは、ある意味実話ならではのリアルさだったでしょうか。
歴史を大きく動かした贋札作りの顛末は、淡々とした作りだったものの、とても見応えのある内容に仕上がっていたと思いましたよ。

スペランカー