劇場公開日 2008年1月12日

「淡々として地味だが、言外の演技が光る」ジェシー・ジェームズの暗殺 きーとろさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5淡々として地味だが、言外の演技が光る

2019年7月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

怖い

静かで哀愁漂う作品です。風景なんかも美しい。しかし長尺で淡々とした物語の運びで、私にジェシージェームズの知識がゼロだったこともあり、前半は退屈に感じてしまいました。
後半は終始空気が張り詰めてくるので、楽しめました。疲れもしましたが。

演者はとても良かったです。
ブラッドピットが渋い。場面によって気のいい感じにも、気難しそうにも見え、何を考えているのかわからない怖さがありました。やっぱりブラピの演技好きです。

ケイシーアフレックも同様に何を考えているのかわからない怖さと知的な雰囲気。終盤は序盤と印象が変わるので少し戸惑いましたが、良かったです。彼のジェシーに対する心理描写は控えめというか、正直掴みにくかったです。観た人に考えて欲しいということなのかもしれません。

私が一番好きだったのはサムロックウェル扮するチャーリーです。登場人物の中で一番普通の人っぽく、感情移入しやすかったです。場の雰囲気を良くしようと頑張って明るく振る舞っていたり、いい人そう。上記2人の感情が掴みづらい分、心理描写はストレートでわかりやすいです。サムロックウェルも感情が伝わりやすい演技をしているように思いました。

他に特筆したいのは、ぎこちない会話をしながら食卓を囲むシーンと、終盤にジェシーがボブを笑えない冗談でからかうシーン。場の空気のヒヤッ…具合がエグくて素晴らしかったです。表面上は笑ったりしているのが更に心の内の疑念や不安を際立たせて、観ているこちらも怖くてヒヤヒヤしました…もはやホラー感覚です。

圧倒的な力を持つと恐れられて孤独になるし、賞金をかけられれば命を狙われたり、裏切られることを考えて疑心暗鬼になって、常に気を張っていないといけなくなってしまうでしょう。ジェシーはもしかしたらそんな生活や自分自身に疲れ果てて、暗殺されたら楽になれると考えてもいたのかもしれない。そう思わせるような描写も見られました。悲しい…。

話の内容とはマッチしているのですが、全体的に地味な印象。登場人物が多い割にセリフや説明が少なく、関係性や状況がわかりづらいのがもったいないかなと思います。
セリフが少ないので言外での心理描写、表情や仕草での演技が光ります。上記した俳優さん達が好きな方にはおすすめできるかと思います。ちなみにジェレミーレナーも上記3人に比べると脇役寄りですが出演しています。

きーとろ