劇場公開日 2008年7月5日

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スピード・レーサー : 特集

2008年7月4日更新

ウォシャウスキー兄弟が「マトリックス」を超える映像革命に挑んだ「スピード・レーサー」が今週末いよいよ日本上陸。吉田竜夫による伝説のTVアニメ「マッハGoGoGo」をベースに、ウォシャウスキー兄弟が実写とアニメを融合して作り上げた驚異の映像が話題だが、それだけが見どころではない。本作を楽しむための5つのポイントをチェックしてみよう。(文・構成:編集部)

「スピード・レーサー」はここが凄い!
本作を楽しむための5つのポイントをチェック

画像1

【その1】新次元映像<ライブ・アクション・カートゥーン>を実現!

マトリックス」で新次元映像ブレット・タイムを実現したウォシャウスキー兄弟が、本作ではまた新たな映像表現に挑戦。その新次元映像は、ライブ・アクション・カートゥーン。ライブ・アクション=実写映像とカートゥーン=TVアニメの融合だ。

今まで誰も体験したことのない 超スピードが画面に溢れる
今まで誰も体験したことのない 超スピードが画面に溢れる

しかもそれは、人物は実写で背景はアニメ、といった単純なものではない。まず、彼らがこの手法によって目指したのは、世界像全体にアニメ的な風貌を与えることで、この世界を物理法則の支配から解き放ち、実際には実現不可能なレースカーの運動と速度に説得力を持たせること。この作戦は見事に成功、今まで誰も体験したことのないスピードが画面に溢れる。

もうひとつの目的は、セルアニメ特有の手法を実写的映像に用いることで、実写ともアニメとも違う、新たな映像体験を観客に提供すること。例えば、あるシーンの背景では前景、中景、遠景と、奥行きごとに3種にレイヤーを分け、そのそれぞれを別の速度で別の方向に動かして見せる。また他のシーンでは、昔のセルアニメ同様、背景を色彩だけにして、人物の動線を描き、人物の動きを強調する。別の場面では、人物はそのままに、背景のみをワイプで別の背景に切り替える。これらのユニークな映像手法で、「マトリックス」とはまったく別の新次元映像を体感させてくれるのだ。

【その2】カーレースはエクストリーム・スポーツだ!

幼少時に原作アニメ「マッハGoGoGo」を見たウォシャウスキー兄弟がシビレたのは、その「スピード感」。彼らはその超速スピードの快感を現在の観客に伝えるため、カーレースをエクストリーム・スポーツに変貌させた。彼らが美術のオーウェン・パターソンにまず伝えたのは「カーレースのトラックを、巨大なスキー・スラロームとスケートボード・パークを足して2で割ったものにしたい」ということ。本作のレーストラックは空中で円を描き、タイヤは軽やかにトラックを離れ、スポーツカー同士は宙で交錯する。これはもうレースカーではなく、スケートボード。この現代的なスピード感に加えて、交通法規に縛られず、その隙間を軽やかに疾走するというスピリットも、エクストリーム・スポーツそのものなのだ。

映画全体がポップでカラフルな色に彩られている
映画全体がポップでカラフルな色に彩られている

【その3】70年代アニメのカラフルな色彩を増幅!

日本で67~68年に放送された原作アニメは、そのポップでカラフルな色彩も特徴。ウォシャウスキー兄弟は、この魅力を極限まで推し進めている。彼らが命名したこの色彩の呼称は“ポップティミスティック(ポップ主義的)”または“テクノカラー(テクノ風色彩)”。視覚効果担当のダン・ダグラスは「この映像を創り出すために、色彩の彩度を通常の限界を超えたところまで押し上げた」と告白している。

この色彩コンセプトに基づく極彩色は、登場人物たちのファッションから住居、カーレースの背景となる世界各地の名所、映画全体の隅々まで貫かれ、物体の過激な運動速度と相まって、観客の視覚を極限まで刺激し続ける。

【その4】原作へのオマージュ満載!

とにかく、原作アニメからの引用は満載。マッハ号のハンドルの中央にはボタンがあり、そのボタンを押すと稼働するギミックの数々も原作通り。タイヤも原作と同じヨコハマタイヤというこだわりぶりだ。オートジャッキで車をジャンプさせて障害物を飛び越えたり、スピードの弟が車のトランクに隠れていたり、ガールフレンドがヘリで協力したりと、お約束のシーンはみな登場。さらにスネークはじめ原作の悪役キャラたちも登場。他の新キャラも昔のアニメ的な風貌だ。

主人公の弟とそのペットのサルは可愛いが、 大人にはウザい!?
主人公の弟とそのペットのサルは可愛いが、 大人にはウザい!?

こうした演出の背景にあるのは原作アニメへの敬意だが、それに加えてウォシャウスキー兄弟の新たな野望がある。彼らは本作を、原作アニメ同様、子供の観客にも楽しめるファミリー映画として作った。これはウォシャウスキー兄弟が初めて挑む「R指定ではない映画」なのだ。大人は子供の心で、子供はそのまま素直に楽しめるのが本作。その意を汲んで日本語吹替え版も公開される。大人にはウザい主人公の弟とそのペットのサルも、6歳の子供には楽しい。ジョエル・シルバーは6歳の息子といっしょに大いに楽しんだと語っている。

【その5】オリジナル主題歌をHIP HOPに!

コアなファンじゃなくても、なんとなく主題歌に聞き覚えがあるなら、ヤラレてしまうのは最後に流れる曲。「スパイダーマン」では最後にオリジナル主題歌が流れたが、本作で流れるのは、オリジナル主題歌のHIP HOP版。冒頭4小節ほどはアメリカ放送時の主題歌である日本版主題歌の英語替え歌だが、すぐさまHIP HOPに変貌、その男女掛け合いのライムの原作ぽいレトロ感とレースクイーンっぽいビッチ感がなかなかイケると思って聞いていると、なんと英語に混じって日本語の歌詞が聞こえてくるではないか。日本語を知る観客にしかウケないこんなギミックが最後に待っているのだ。

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