消されたヘッドラインのレビュー・感想・評価
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職人仕事が冴えわたり、娯楽の王道を行くポリティカルスリラー
オスカー受賞監督でありながらあまりにも過小評価ではないかと常々思っているケヴィン・マクドナルド作品の中でも、職人的な上手さが炸裂しているハリウッド的エンタメスリラーの傑作(マクドナルドは英国人だけど)。ラッセル・クロウ演じるやさぐれベテラン記者が、政治家で友人でもあるベン・アフレック(ちゃんと嘘くさくていい!)と対峙することになるストーリーで、ジャーナリズムと政治の関係をとても面白く扱っている。演技巧者をそろえた適材適所の群像劇、名撮影監督ロドリゴ・プリエトの夜を巧みに使った映像など、全パートのバランスの良さも秀逸で、ウェルメイドすぎるから作品としてあまり評価されていないのかしらと勘ぐってしまうほど。またBBCのミニシリーズのリメイクであることも過小評価に繋がっているように思うのだが、関わったすべての人たちが高水準の仕事をしてみせたからこそのハイクオリティが堪能できる。
【87.2】消されたヘッドライン 映画レビュー
作品の完成度
映画『消されたヘッドライン』は、ジャーナリズムの倫理、政治の腐敗、そして個人的な友情という多層的なテーマを巧みに織り交ぜた、見事なサスペンススリラー。2003年の英国BBCの同名ミニシリーズをベースにしながらも、舞台をワシントンD.C.に移し、現代のアメリカの政治状況とメディアの変遷をリアルに描き出している。複雑なプロットをスピーディかつ明快に展開させ、観客を飽きさせない構成は特筆すべき点。原作の骨子を尊重しつつ、映画としてのケレン味とエンターテインメント性を高めた脚本は高く評価できる。特に、情報の断片が少しずつ繋がり、全体像が明らかになっていく過程は、知的興奮を誘う。映画が描くジャーナリズムの役割と意義は、情報過多の現代において示唆に富むものであり、単なる娯楽作に留まらない深みと社会的メッセージを持つ。
監督・演出・編集
監督のケヴィン・マクドナルドは、ドキュメンタリー出身ならではのリアリティと緊迫感を本作に持ち込んでいる。手持ちカメラを多用したドキュメンタリータッチの映像は、物語の生々しさを強調し、観客をストーリーの中に引き込む。編集は非常にリズミカルで、特に取材シーンやチェイスシーンは、スリリングな緊張感を高める。情報が錯綜する状況を、カットバックやモンタージュを駆使して効果的に見せており、観客が混乱することなく物語を追えるよう配慮されている。プロットの複雑さを視覚的に整理し、物語の推進力を維持する手腕は見事。
キャスティング・役者の演技
ラッセル・クロウ (Russell Crowe) - カル・マカフリー
ワシントン・グローブ紙のベテラン記者、カル・マカフリーを演じたラッセル・クロウ。彼の演技はこの映画の核を成す。権力に屈しないジャーナリストとしての信念と、旧友を想う個人的な感情との間で揺れ動く複雑な心情を、抑制の効いた演技で表現。無精ひげを生やし、くたびれたスーツを着た姿は、理想と現実の狭間で葛藤する記者の姿を完璧に体現している。派手なアクションがなくとも、その存在感だけで画面を圧倒し、物語に重厚なリアリティをもたらした。彼が演じるカルは、単なるヒーローではなく、人間味あふれる魅力的なキャラクターとして観客の心を掴む。
ベン・アフレック (Ben Affleck) - スティーヴン・コリンズ
将来を嘱望される若き下院議員スティーヴン・コリンズを演じたベン・アフレック。彼が演じるコリンズは、表向きは誠実で理想に燃える政治家だが、その裏には隠された秘密と苦悩を抱えている。アフレックは、その二面性を巧みに演じ分け、特にカルとの友情と、政治家としての立場との間で揺れ動く葛藤を見事に表現した。彼の表情から読み取れる不安や疲労は、物語のサスペンスを一層引き立てている。アフレックの演技は、観客がコリンズという人物に共感し、その運命を案じる上で重要な役割を果たしている。
レイチェル・マクアダムス (Rachel McAdams) - デラ・フライ
ワシントン・グローブ紙の若手記者デラ・フライ役のレイチェル・マクアダムス。彼女は、経験豊富なカルとは対照的に、デジタルメディア時代のジャーナリズムを象徴する存在。当初はカルとの反発があったものの、次第に信頼関係を築き、真相究明に貢献していく過程を生き生きと演じた。マクアダムスは、デラの好奇心旺盛で行動的なキャラクターを魅力的に描き出し、物語にフレッシュな風を吹き込んでいる。彼女の存在は、旧来のジャーナリズムと新しいジャーナリズムの対比というテーマを際立たせる効果も果たしている。
ヘレン・ミレン (Helen Mirren) - キャメロン・リン
ワシントン・グローブ紙の編集長キャメロン・リンを演じたヘレン・ミレン。彼女の演技は、作品にさらなる格調と説得力を与えている。ジャーナリズムの理想と、会社の利益や部下の安全を守る現実との間でバランスを取ろうとする編集長の苦悩を、彼女ならではの威厳と人間味で表現。ミレンが放つ強い眼差しと、一言一言に込められた重みは、ジャーナリズムの倫理観を象徴する存在として観客に深く印象づけられる。彼女の存在感は、物語全体を引き締め、プロフェッショナルな世界観を構築する上で不可欠な要素。
脚本・ストーリー
物語の根幹は、二つの殺害事件が偶然にも繋がり、それが巨大な陰謀へと発展していく過程にある。英国BBCのオリジナルシリーズから、政治家、ジャーナリスト、そして企業という三者の関係性を丹念に描き出し、それぞれの立場の利害と倫理観を浮き彫りにした脚本は秀逸。特に、ジャーナリズムの使命とは何か、という問いを物語の中心に据えた点が評価できる。情報がSNSやインターネットで瞬時に拡散される現代において、真実を追求し、権力を監視するというジャーナリズムの役割が、いかに重要であるかを再認識させてくれるストーリー。原作の魅力を損なうことなく、現代の状況に合わせてアップデートされたプロットは、多くの観客に共感を呼ぶ。
映像・美術衣装
ワシントンD.C.の街並みを捉えた映像は、政治の中心地としての重厚な雰囲気を醸し出している。物語の緊張感を高めるため、暗く、落ち着いたトーンの色彩が多用されている。美術は、新聞社の雑然としたデスク、政治家の洗練されたオフィス、そして裏路地の薄暗い雰囲気など、それぞれの場所が持つ独特の空気感を巧みに表現。衣装も、カルの着古したジャケットや、コリンズの完璧なスーツなど、キャラクターの内面や社会的地位を物語る重要な要素となっている。
音楽
映画の音楽は、物語の緊迫感を高めるサスペンスフルなスコアが中心。特に主題歌やエンディング曲はなく、劇伴が全体を通してストーリーを盛り上げる役割を担う。音楽は、場面の雰囲気を繊細に演出し、観客の感情を巧みに誘導する。静かなシーンでは不安を煽り、アクションシーンでは躍動感を加え、物語の起伏を音楽的に表現している。
受賞・ノミネート
『消されたヘッドライン』は、アカデミー賞や主要な映画祭での受賞歴はないものの、アメリカの脚本家組合賞や英国インディペンデント映画賞などで、脚本や助演男優賞(ジェイソン・ベイトマン)のノミネート歴がある。批評家からも概ね高い評価を受け、その脚本の完成度と俳優陣の演技が特に称賛された。
作品 State of Play
監督 ケビン・マクドナルド 122×0.715 87.2
主演 ラッセル・クロウA9×3
助演 レイチェル・マクアダムス B8
脚本・ストーリー 原作 ポール・アボット
脚本 マシュー・マイケル・カーナハン
トニー・ギルロイ ビリー・レイ A9×7
撮影・映像 ロドリゴ・プリエト
B8
美術・衣装 美術 マーク・フリードバーグ
衣装 ジャクリーン・ウェストB8
音楽 アレックス・ヘッフェスB8
構成が秀逸。だがオチは……
構成が素晴らしいです。
事件、友情、ジャーナリズム、陰謀、政治と複雑にテーマを孕んでいながら、とても丁寧に整理され、物語を追いやすい構成と展開のテンポ感が、こちらを引き込んでくれます。
例えば、新聞記者の調査の進展と登場人物たちの人間関係の深化が上手く並走されていくから、余計な混乱をせずに次の展開に興味を持ち続けられるのです。
面白い言い回しながらも端的によく芯を突くようなセリフ構成、私はたまらなく好きです。
派手な演出は必要とせず、カメラのアングルや編集のリズムで、心情や物事の動きなどを綿密に表現されていると感じました。
豪華キャストの名演もまた、作品のクオリティを高めています。
しかし、オチと言いますか、最後の変転の部分には、少し拍子抜けしました。
個人的葛藤と国家的陰謀のスケールを、一線上に収束させるということには、疑問を持たずにはいられません。話としては理解できるのですが、オチとしてシンプルに魅力に欠けますし、最後の最後で感情的に追いつけなくなったことが非常に残念です。
豪華キャスト!
邦題はミスティクではないかな?
最後に新聞は出されたわけだから。ただ、4時間待たせた原稿で印刷したから、
はじめのヘッドラインは消された。でも、それは誤報になってしまうから、消されるのは必然。
ラッセル・クロウとベン・アフレックが大学でルームメイト?ていうのは、違和感あり。
ラッセル・クロウが太って長髪なのも敏腕記者って感じがない。デスクも汚すぎ。
登場のシーンとは合っているけど。
物語の途中までは政界と癒着した業者の陰謀話なのに、最後は矮小化した話になってる。
暗殺者も決着をつけるって言ってたが、あの結末を意図していたのかな?
少し残念な結末。
一つ判らなかったのは、奥さんが愛人の報酬をどこで知ったか?奥さんが軍事産業側でないから、
旦那から聞いたのか。だったら旦那も不用意な。
午後ロード 録画視聴にて。
豪華キャストだけれども…
街中で起こった事件が実は議員をも巻き込むほどの大きな陰謀の一齣だっ...
ラストがちょっとわからなかった
スリルに溢れ見応えがあった。
この手の映画にしてはそれほどわかりづらいとも感じなかった。
ただ、ラストは、もうちょっと時間を割いて描いてほしかった、ここだけわからなかったから。
ラッセル・クロウも良かったし、有能な新人記者を演じたレイチェル・マクアダムスも良かったし、ヘレン・ミレンも!
前に見たことのある映画できれいだなと思っていた女優がR.マクアダムスで、彼女を再び見ることができてちょっと嬉しかった。。
内容は好きだったし娯楽としてのサスペンスという感じで楽しめたけれど、邦題がいまいち。(原題は STATE OF PLAYだったっけ)
ハラハラする社会派スリラー
こういう作品に巡り会う機会は本当に少なくなりましたね。複雑な内容を非常にわかりやすく描いた社会派スリラーは本当に久々でした。映画が終わった後もっとこういった大人向け作品を制作してほしいと思いました。
一人の女性が殺害されたのをきっかけに新聞記者とブロガー(というよりコラムニスト)の女性が警察と協力して事件の真相を解明しようとするのですが、そこにはとんでもない政治的陰謀が隠されていました。
注目はラッセル クロウ以外のキャスト陣の演技、スリリングなストーリー展開そして、この手のサスペンス映画に欠かせない音楽です。特に編集長役のヘレン ミレン、連邦議会委員役のベン アフレック、ブロガーを演じるレイチェル マカダムズそして、わずかな出演時間ながらも強烈なインパクトを与えるPRマン役のジェイソン ベイトマンの演技は見るものを引き付けます。
それから、ストーリー展開も非常によかったです。内容は「ボーン~」シリーズ並みに難しいのですが、スリラーらしく先の読めない展開となっていてドキドキさせられました。そして、何と言ってもカッコよかったのが使用されているサントラ曲の数々です。スリリングな物語をさらに盛り上げています。
ところが、この作品には残念ながらいくつかの弱点があります。まず、ラッセル クロウははっきり言ってミスキャストだと思います。とはいえ、当初起用される予定だったブラッド ピットも違う気がします。監督が私だったらきっとジョージ クルーニータイプの俳優を選んでいたと思います。それから、映画自体がちょっと長いのも事実でもう少しコンパクトに纏めてほしかったです。あと、欲を一つ言えば、最後にもうちょっと何か捻りがほしかったですね。本編終了後に思わず“え?これだけ”と心の中で言ってしまいました。
しかし、この手の社会派スリラーが好きな人でもそうでない人でも楽しめる内容だと思います。ネットから様々な情報を得られる現代、新聞はどのようにして生き延びて行くべきなのかにも触れている良作です。機会があったら是非観てください。
面白かった!!
物語の結末としては不満が残るが、ミステリーとしてはおもしろかった・・・
実はバディもの
自ブログより抜粋で。
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いろんな人間関係や思惑が入り乱れる重厚な推理劇の割には、キャラの立たせ方やストーリー展開が巧いので混乱せずに観られて見応えもたっぷり。二転三転する真相に何度も驚かされるテンポの良いエンターテイメント作品として楽しめた。
ただ予告編などではアメリカの裏側で暗躍する強大な力と新聞社の対決という点をアピールしているが、辣腕新聞記者が新人女性記者と組んで締め切りまでにスクープを挙げようとする業界もの映画として捉えた方がいいように感じた。
予告編から抱いたイメージ通りに、話は底知れぬ恐ろしさを醸す民間軍事企業との対決を中心に展開するのだが、社会派映画のようなものを期待すると最終的な意外な落としどころにがっかりするかもしれない。
実のところ現場叩き上げ記者を絵に描いたようなカルと時代を象徴するWEB版(言い換えるとブログ版)を担当するひよっこ記者デラの“バディもの”としての掛け合いの方がこの映画のテーマを代弁していると言え、国家をも揺るがしかねない大事件が一件落着してエンドロールが流れ始めたそのバックの映像から受けた、事件解決の安堵感とは裏腹の寂寥感にもそれは伺い知れる。
この『消されたヘッドライン』の原題“STATE OF PLAY”とは「現状」という意味なんだそうだ。現状、すなわちここに描かれているのは過去と未来の狭間なのだ。
新聞が、ひと頃IT革命ともてはやされた時代の流れの中で、紙媒体から次世代のメディアに替わろうとも変わることのない、変わってはならない真実を追う姿勢。
いろんな要素を内包したこの映画が、最終的に描こうとしているのは報道メディアとしてのその姿勢なんだろう。
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