劇場公開日 2009年7月15日

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「謎のプリンス? 勿体ない映画。」ハリー・ポッターと謎のプリンス とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0謎のプリンス? 勿体ない映画。

2021年9月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

怖い

主人公ハリ―、対する敵役ヴォデルモ―ト。隠れ主役としてスネイプ先生という軸で回っている物語だと思っていた。
 勿論、ロンやハ―マイオニ―、ダンブルドア校長も重要な登場人物であることには違いないんだけど、スネイプ先生という存在が、善と悪との二元論なんていう単純な物語で終わらせなくて、このファンタジーを大人も堪能できるものに昇華させていると思っていた。
 だけど、この映画では…。

 主役をはじめとする子どもたちの成長譚。
 ハリー、ロン、ハ―マイオニ―の恋模様が甘酸っぱい。
 と、同時に、社会風刺ともいえる人間模様の皮肉?も思いっきり描いて、先生だって一人の俗物だよというところも描き出す。
 有名人や優等生をとりまきにする教師って(笑)。こんなひいきする教師がいたら日本だったらすぐにマスコミから袋叩きなんだけど、実際はこれに近いことは行われている。そこになんとか入り込みたい人々。はなから諦めて冷やかな眼で見ている人々。そんなこととは無関係な評価。様々な人間模様。
 それに加えて、ヴォデルモードを倒す策を見つけると言う名目のヴォデルモードの過去探索。なんでヴォデルモードがこんな奴になっちゃったんだという過去が解き明かされる。
 そして、スネイプ先生がスネイプ先生たる所以も語られる本作。
 と、同時にレジスタンスの様子も…。

と、原作が詰め込み過ぎなので仕方がない。どのように取捨選択するかが難しい。
のは判るけれど、けれどね、けれどね、と言いたくなる本作。

よくみると、皆さん、良い芝居をしていらっしゃる。
 大好きなスネイプ先生の苦悩。ドラコの逡巡・恐怖。もちろん主役の三人も。トム・リドル(子役)も良い味出しているし。スラムボーン教授の俗っぽさに対する嫌味・風刺も原作の持ち味だ。

だけど何なんだろう???
 謎解き。学園物。闇の世界が近づいてくる緊迫さを煽っているけど、そこが回収されないで、パーティだのの日常の描写。猥雑さ。レジスタンスの面々も僅かなシーンしか映し出されない。
 勿論、戦時下にだって青春はあるのだから、学園でクディッチやパーティが開かれていいのだけど…。
 映画オリジナルの場面は、迫力があって、映像としては見ごたえあるけれど…。

場面場面がぶつ切りのような感じを受けるのは私だけであろうか。

そして、前作・前々に引き続き、喪の作業がなおざり。

予告や冒頭映像で煽りに煽っておいて肩透かしの印象すらある。

ハリーだけでなく、ロンやハ―マイオニ―、ドラコの心の動きを取り入れて人物を描いているように見せかけて、もっと複雑でじっくり描かなくてはいけいない人物・スネイプ先生が描き切れていない。役者の力で描かれているように見えるけど。

魔法の世界を借りて人間社会を描き出した原作。
 あまりにも冗長で、いろいろなものを詰め込み過ぎた原作を、そのまま映画にするのは無理だけど、映画として何が描きたかったのかわからない。ただ、筋を追っただけ?
 これだけの、芸達者、CG等のスタッフを集めておいて勿体ない。

しかも、原作も暴走。ひねくり回しすぎて…。
 原作読んだ時も何故この展開?と唖然としたが、なおさら映画では、ダンブルドア先生とスネイプ先生の心情を描き切れていないから、ただ観客・読者を驚かせるためだけの展開にしか見えない。
 ダンブルドア先生が何故あの命令を下すのかは一応説明されているけれど、必然と思えるまでには納得できない。
 原作にそういう荒業が使われているので仕方がないけれど。
 ダンブルドアは、教育者ではなくなっていて、なりふりかまわず、ハリーでも、スネイプ先生でも、昔の知り合いでも、使えるものは使えってか?一見、信頼しているようで道具として使っているところが恐ろしい。

そんな後味の悪さも加味されて、点数が低くなる。

とみいじょん