「ミルクだけが、ゲイの権利獲得に貢献したのではない」ミルク 百ももさんの映画レビュー(感想・評価)
ミルクだけが、ゲイの権利獲得に貢献したのではない
1970年代、アメリカでゲイとして初めて公職者になったハーヴェイ・ミルクの実話をガス・ヴァン・サントが映画化。
ストーリーは、サンフランシスコのゲイ・コミュニティで中心的存在であったミルクが、政界に進出しゲイや市民の権利擁護のために戦うというもの。よく、真実は小説より奇なりなどと言うように、本作も元々の実話がとてもドラマチックな展開をもっています。ミルクの年譜をまとめるだけでもなかなかにおもしろいものになるでしょう。
ですから、本作の評価のポイントはストーリーよりもむしろ、その見せ方、演出にあります。そしてその点で評価してみると、本作は非常に上手い作品だといえるでしょう。淡々としつつも丁寧な描写で、物語も流れるように展開していく。さすがアカデミー作品賞ノミネート作だけあります。
本作でオスカーを獲得したミルク役のショーン・ペンの演技も上手いです。物語の盛り上がりに沿って、徐々に彼の演技にもアクセルがかかる。演技と作品が、お互いに歯車となってうまくまわっています。また、脇をかためるミルクの後援者(彼らもみな同性愛者)も魅力的。全員実在の人物で、現実にも活躍しているようです。
ただ、ラストは少しあっけなかった。ミルクの周囲の人々のその後であったり、社会一般の動きがもう少ししっかり描かれていてもよかったんじゃないでしょうか。それに、あまりに巧みな作品であったゆえに、心をどっと打たれるような衝撃もちょっと味わうことはできなかったかな。
しかし、演技もよいし見応えのある秀作には間違いないです。本作を観ると、実際のミルク本人についても知りたくなりますね。
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