劇場公開日 2008年11月22日

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「ベン・スティラー版「ザ・マジックアワー」?」トロピック・サンダー 史上最低の作戦 antさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ベン・スティラー版「ザ・マジックアワー」?

2008年10月31日
PCから投稿

笑える

怖い

興奮

中途半端な俳優が、映画撮影中に現実の事件に巻き込まれ、失いかけていた役者魂を取り戻すと言う点では三谷幸喜監督「ザ・マジックアワー」に似ている。火薬/爆発担当の人が活躍するところも同様。ただしこちらは女ッ気はほとんどなし。「マジック」の舞台が昭和を思い出させる街だったのに対して、こちらはそういったまどろっこしい設定はなし。80年代ベトナム映画を思い出させる撮影現場はジャングルなので、同時代感はないが携帯電話の向こう側にいる人たちがいかにも今風。

映画はいい演技が出来ない俳優のせいで監督がクライマックスの大爆発シーンを撮り損ねる。仕方なくカメラを意識させない隠し撮り方式に切り替えるが、俳優たちは本物の戦場(麻薬栽培地域)に迷い込んでしまう。先にベン・スティラー、次にニック・ノルティらが捕らわれる。ロバート・ダウニー・Jr.らによる救出劇よりも、そこまでの過程でのやり取りの方がギャグとしては面白い。そしてベン・スティラーの意識の変化は意外にも真面目なものだ。

ベン・スティラーが脚本、監督主演を兼ねているので最終的に彼が美味しいところを持って行き、カッコ良く撮られているのは当然。他の役者ではジャック・ブラックは毎度お馴染みのドラッグ絡みの役なのでインパクトは薄い。黒人になりきったロバート・ダウニー・Jr.はその演技で笑わせるだけでなく、役者としての心得も披露するところがさすが。それに匹敵するのがメイクでチビハゲデブに変身し(一個は違うか)極悪プロデューサーを演じたトム・クルーズ、やりすぎとも言えるほどのキレ演技で笑わせる。こんな酷くて身勝手な映画関係者っていそうで怖い。

前半はグロ度が意外に高いので苦手な人は注意。欲を言えばOW氏に出てないのが残念。

ant