劇場公開日 2009年4月18日

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「ゲームっぽいシーケンスのアクション映画」マックス・ペイン 永賀だいす樹さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ゲームっぽいシーケンスのアクション映画

2013年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

単純

興奮

映画『シン・シティ』や『30デイズ・ナイト』といったグラフィック・ノベル原作のダークな世界観がたっぷり詰まった作品。
原作はゲームらしいけれど、映画からコミカライズしても成立しそうなシーンがどっさりと。

薄暗いオフィスで対話してみれば相手方の顔半分が影に沈んだり、ドアを開けて閉めてみたら死角から登場したり、アメコミ風の画がパッと思い浮かぶ。
何より麻薬による幻覚で出てくる黒い天使のモチーフが、アメコミのテイストそのもの。

しかし『シン・シティ』が街を主体としていたのと対照的に、本作では元殺人課刑事のマックス・ペインがメイン。
家族を殺された復讐者という典型的過ぎるキャラクターが、何人かの協力者を得て真相に迫るという展開。
麻薬の幻覚効果で独自の世界観を作りながら、けれど観客が座っていられるのも、この種の典型をきっちり守っているからだろう。

誘惑してくる美女を迎えてみても不快な挑発にかんしゃく起こして追い出したり、現場に自分の存在を示す証拠が残されて署内の立場が悪くなったり、事件を追ってみれば亡き妻の職場につながったり、こういう一種"お約束"な流れはテレビシリーズ『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』にも似た安心感がある。

肝心のアクションは汗の臭い立つ肉体派というより、どことなくゲームのテイスト。
フーフーいってもみ合う格闘は少なめで、ズドンと撃ってバッタリ倒れる。思わせぶりなアノ人があっけなく退場する。間一髪で証拠をゲットして脱出する。などなど。
すっきりしているので、『エクスペンダブルズ』のような肉体派アクションは苦手な人にもタッチできる。

何より北欧神話の一部を取り込んでいるあたり、そっちの知識がある人には歓喜する要素。
戦場で死んだ英雄を運ぶヴァルキュリア。その名を冠したアレ。
使い方は「F」を二つ重ねた某ゲームの"名前だけ借用しました"に毛が生えた程度ではあるのだけど、やはり神話の要素を入れた作品はがぜん面白くなる。いいアクセント。

ただ、本作に通底するゲームっぽさの悪い面が露呈しているのはマイナス点。特にラストのあっけなさは少々拍子抜けだ。
ロシアのワルな女・モナとのからみが少ないのも、消化不良。
あんなに助けてもらっておいて、マックス的にも映画的にあの扱いでは、観客だって黙っていないと思う。

では評価。

キャスティング:5(モナ役ミラ・クニスの使い方の雑さにマイナス)
ストーリー:4(話の筋は分かりにくいものの、"典型的"を積んでカバー)
映像・演出:7(幻覚症状のビジュアル演出は一見の価値アリ)
お約束:6(女性関係以外はベッタベタ)
アクション:6(見栄えのよさは及第点。少しツッコミ入れるとモロい部分も)

というわけで総合評価は50点満点中28点。

アクション映画で優雅な時間を過ごしたい方には候補の一つとしてオススメ。
ゲームっぽいアクション映画とはどういう作品なのか参考にしたい人にもオススメ。

永賀だいす樹