劇場公開日 2008年9月6日

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「中途半端なテーマ設定とエンディングにちょっとガッカリです。」幸せの1ページ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5中途半端なテーマ設定とエンディングにちょっとガッカリです。

2008年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ホントに『幸せの1ページ』のタイトルのまま、エンディングを迎えてしまい、さあこれからいいシーンになるぞと期待していた小地蔵は、期待のハシゴを外され、ガッカリしました。
 だってそうでしょ。原題の『ニムのアイランド』からわざわざ思わせぶりな『幸せの1ページ』と変更したからには、何かハートウォームなメッセージを期待するではありませんか。それは、皆さんの想像にお任せにされては、いささか消化不良は否めません。
 やはりシナリオの詰めに問題があると思います。その辺は、同じ監督・脚本の10月公開『センター・オブ・ジ・アース』でも共通しています。
 そもそも主役がジョディさん演じるアレクサンドラなのか、天才子役アビゲイル演じるニムなのか、はたまたニムのむ父親の海難脱出なのか、どっちつかずなのです。
 そしてテーマは、アレクサンドラが南の島への向かうアドベンチャーなのか、彼女の引きこもりが治されていく心の軌跡なのか、ニムとの交情なのか、またまたラブストーリーなのかもはっきりしません。

 それでも楽しめてしまうのは、ジョディさんを喰ってしまったアビゲイルの堂々とした演技とニムの愉快な友達の動物たちの存在です。
 アビゲイルはまだ12歳です。けれども彼女ひとりのシーンでも、存在感溢れる演技をこなして、その場をちゃんと作り込んでいたのです。ロケ中には、萎縮するどころか演技することを楽しんでいたというから恐れ入ります(^^ゞ
 噴火口を覗くシーンでは、垂直の絶壁をよじ登るロッククライミングにも体当たりしたり、水中のシーンもあって「都会的な女の子から、本物のアクション女優へと変化を遂げたよ」とスタント担当もベタ褒めだったとか。
 そんなアビゲイルを見ていると、ジョディさんは、3歳でデビューした自分の子役時代のことを思わず思い出してしまうそうです。
 ニムが島への侵入者を、追い払うために、トカゲや爬虫類のお友達を、次々空中に飛ばすところは嬉々とやっていて、楽しそうでしたね。空からトカゲがいきなり降ってくきて、島に侵入した「海賊」(ただの観光客)たちは慌てふためくところは、面白かったです。またニム親友のトドのセルキーやトカゲのフレッドの芸達者なところも楽しませてもらいました。あれなら子供たちも喜ぶでしょう。

 但し本作で衆目の関心を集めるところは、ジョニさんのイメチェンぶりでょう。何しろ製作側でも、「ジョディ・フォスターとコメディなんて結びつくわけがないと思った」そうなのですから。それでも脚本を読んだジョニさんは、根底に流れるスピリッツに感銘し、「自分自身を本気で投げ込めるコメディなんて稀なこと。でもこれなら」と直感したそうです。
 対人恐怖症で外出恐怖症、おまけに極度の潔癖症の引きこもりという注文の多いキャラを、顔面七変化で器用に演じていました。一歩下界に足を踏み出したときの引きつった表情は絶品もの。更にドタバタ喜劇シーンまでこなしています。笑えるジョニさんなんてねぇ~、これまでのイメージとは全然違う彼女に出会えますよ。

 ただコメディばかりでは、ありません。呼びつけておいて、アレックス・ローバーではないと知るや、部外者は島に入るな帰れ!と言う身勝手なニムi、あなたをどんなことがあっても独りにはさせないと抱きしめる姿は、しっかりシリアスに感動させてくれました。

 ニムの父親ジャックと、想像上の冒険家アレックス・ローバーの二役を演じ分けたジェラルド・バトラー。彼もニムとの優しい親子関係を描いてイメチェンしてたし、二役も別人と思えるくらい演じ分けていました。
 アレックスは当初別な俳優の起用が決まっていましたがバトラーの提案で、二役にしたそうです。『幸せの1ページ』を開くきっかけとして、アレクサンドラが心に描く理想の男性像であるアレックスとジャックの風貌が二役で似ていることは、ラストでとても意味あることになっていきます。

 ところで、撮影現場となった、オーストラリアの豊かな自然を美しくとらえた映像は、本作の大きな魅力の一つでしょう。見ているだけで南の島のリゾート気分に浸れました。 熱帯雨林や輝くビーチ、水中には美しいさんご礁といった美しいロケーションはもう一つの主役といってもいいと思うくらいです。

流山の小地蔵