「人は誰しもが誰かのよそ者」第9地区 ikuradonさんの映画レビュー(感想・評価)
人は誰しもが誰かのよそ者
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去年の夏、アメリカではひとつのショッキングな広告ヴィジュアルが話題となった。
「NO HUMANS ALLOWED」
直訳すると、「人間以外、お断り」。
これは、我々人類がそう遠くない過去に見たサインに良く似ている。
このシンプルな宣伝が人々の注意を惹きつけ、「第9地区」は大ヒットを収めたのだ。
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督がプロデュースを務め、南アフリカ出身の新鋭ニール・ブロムカンプがメガホンをとった本作は、今までになかった角度とロケーションでエイリアンと人類の抗争を描写している。仲間にも敵にもなりうる、そもそもエイリアンとは”地球外生命体”のみを指し示す言葉ではなく、自分とは違う異質な者、よそ者のことなのだ。そして人は誰しもが誰かのよそ者だし、何かをキッカケに突然仲間からよそ者にされることだってある。
激戦アクションも見所なのだが、やっぱり全編に散りばめられている用意周到な”皮肉”がいちばんの見所。愚かな人間(強者)に対する愚かな弱者(エイリアン)の構図は目新しいけど、結局のところ人間は敵がエイリアンであろうと同族の人間であろうと、牙をむかれれば牙をむくし、孤独がやってくれば人間であろうとエイリアンであろうと寄り添おうとする。ある意味、種族なんてものを越えたテーマが、アフリカの乾いた大地に乱雑に転がっているのである。
アフリカからこんなエキサイティングな映画が届くと、これからの映画の未来にワクワクしてくる。
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