「知的SFアクション疑似ドキュメンタリー映画。」第9地区 だいすけさんの映画レビュー(感想・評価)
知的SFアクション疑似ドキュメンタリー映画。
今年(2010年)のアカデミー賞4部門にノミネートされた映画『第9地区』を一人で観てきました。
20数年前、南アフリカのヨハネスブルグ上空に突然、巨大なUFOが現れ、その乗員達(エイリアン)は「第9地区」と呼ばれる地域に住むことになります。そして、20数年後。エイリアンの管理事業を任されている世界的巨大企業MNUは、エイリアン達を都市と離れた別の地域に強制的に移住させる計画を実行に移します。その計画の責任者となった主人公ヴィカスは「第9地区」に向かうのですが・・・。
この作品に登場するエイリアン達は、人類を侵略する目的で地球に来た訳でも、人類と交流する目的で地球に来た訳でもありません。少なくとも作品の中では、そういう説明は無いです。
ただの「難民」として、たまたま地球にやって来た彼らは、否応なしに強制収容所とも言える「第9地区」に押し込められます。
人類とはあまりにもかけ離れた容姿、文化の違い、言葉の違い・・・。必然的に人類とエイリアンとの間には深い溝ができ、差別が生まれます。
エイリアン達が地球に来てから20数年経ち、エイリアンの管理事業を一任された巨大企業MNUが彼らを人間の都市から遠く離れた地区に強制的に移住させようと主人公ヴィカスを責任者に任命するんですが、その計画の実行中に、些細な不注意な行動から、トンデモナイ事態に発展して行きます。
エイリアンが極秘に20年かけて集めていた謎の黒い液体が入った筒。これを回収しようとしたヴィカスは、その液体を浴びてしまい。体に異変が起きはじめます。
僕は、この作品を見て、蝿男の恐怖を描いた映画『ザ・フライ』を思い出しました。
人間ではない姿に変わっていくことへの恐怖。
愛する者に醜い姿を見られたくない、でも、会いたいという葛藤。
過去の怪物映画に通じるものがあると思います。
そして、この作品の舞台が南アフリカだというのも象徴的です。
南アフリカと言えば、以前は「アパルトヘイト」と言われる人種隔離政策が行われていました。
白人に特別な地位が与えられ、黒人は迫害され、住む所を制限されていました。
この図式が、この作品の人類とエイリアンの関係にそのまま当てはまります。
人類がエイリアンを迫害し、強制的に狭い地区に住まわせる・・・。
モキュメンタリー(疑似的なドキュメンタリー「フェイクドキュメンタリー」をこう言うそうです)という描き方をしているのも、作品の世界にリアリティを与えていると思います。
この作品はSFの形を借りた、凄く硬派な作品だと僕は思いました。
ラストシーンがとても良かったです。