「原版より落ちる」サブウェイ123 激突 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
原版より落ちる
総合75点 ( ストーリー:70点|キャスト:75点|演出:75点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
名作「サブウェイパニック」の再映画化で、どうしても原版と比較してしまう。これはこれでそれなりに楽しめるしありかなと思うが、原版と比較すると落ちる。
それは犯人と地下鉄の運行指令員との交渉が楽しめた反面、二人の人間像についての話が物語の中心に据えられてしまっていて、この地下鉄を乗っ取る犯罪というものの掘り下げがやや不足した印象がある。特に今回の犯罪とは関係がないガーバーの過去の職務上の問題のことをここで描いても、作品の主題としては的外れな感じが強い。デンゼル・ワシントンが演じているからといって、無理にその役に対する見せ場を作ろうとしすぎなのでは。それならば犯罪者側の背景をもっと見せたほうがよいだろう。犯人側はトラボルタ以外はただのその他大勢になっている。
それと犯罪の裏側には、乗っ取りによって商品先物市場に影響を与えてその投資によって儲けようという作戦があるようだが、これが現実的かどうかは疑問。犯人はお金が目的とはっきりと言ってしまっているわけだし、経済に影響を与える大規模テロならともかくとして、お金目的で地下鉄を乗っ取ったくらいで取引市場で有事の金買いがそれほど起こるとも思えない。
それにこの作品は原版の持つ、犯罪と犯罪者を徹底的に追及しつつ最後にとんでもない結末を用意するという物語性がなく、簡単に推測できる結末に落ち着いていた。その意味ではちょっと質は高いが普通の犯罪作品になってしまっている。原版を知らなかったらもう少し楽しめたが、観終った時はややがっかりしたのが正直なところ。