「ちょっともったいない、と感じたリメイク作品」サブウェイ123 激突 こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっともったいない、と感じたリメイク作品
私は、この作品の元となった映画「サブウェイ・パニツク」が、今までの見た洋画のベスト10に入るくらいに大好きな一本だ。だから、今回のリメイクには期待半分、幻滅するかもしれないという怖さ半分で出かけたのだが、幻滅はしなかったがちょっと惜しい、と思わせるところが随所にあって、リメイクの難しさを感じるばかりとなった。
前作「サブウェイ・パニック」の良さは、アクションやパニックシーンではなく、登場人物のキャラクターだった。ウォルター・マッソー演じる地下鉄指令室のガーバーのとぼけた感じに対する、ロバート・シヨー演じる戦争屋の経歴をもつ地下鉄ジャックの首謀者との駆け引きばかりでなく、ジャックに関わった犯人たちのキャラも立っているところが大きな魅力だった。ところが今回のリメイクは、ガーバーと首謀者だけに絞ったために、他の人物の個性がまったく際立つことなく、ラストまで進んでしまったことはとても残念に思えてならなかった。せめて元地下鉄運転手だけでも、ラストまで個性をみせて、引っ張っていれば、映画としての面白さは感じられたのではないかと思う。
ただ、現代の地下鉄やニューヨークの街を的確に描いて、二人の主人公どうしの交渉にうまく入り込ませた迫力ある演出は、充分に楽しませてもらった。同じ「サブウェイ・パニック」を下敷きにした日本映画「交渉人 真下正義」より、こちらのほうがはるかに優れた出来だったことは、あらためて言うまでもない。トニー・スコットほどの演出力がある監督が日本にはいない、と言ってしまうとそれまでだが、アクションやパニック映画を作ろうとする監督には、この作品から学ぶところは多くあるように思う。
ところで、この作品に限ったことではないが、結局家族愛、というストーリーの運び方は、そろそろハリウッドはやめないと、本当に世界から飽きられてしまう。そこに早く気づいてほしいのだが、企画力がなくなった今のハリウッドに、それは期待できないのかもしれない。