愛を読むひと : インタビュー
誰にも明かすことの出来ない秘密を抱えながら戦後ドイツを生きる女ハンナを見事な演技で体現し、念願のアカデミー賞主演女優賞を受賞したケイト・ウィンスレット。大ベストセラー小説「朗読者」との出会いや、本作に出演するにあたって意識したことなどを聞いた。(取材・文:森山京子)
ケイト・ウィンスレット インタビュー
「最初に思ったのは原作の素晴らしさにふさわしい演技をしたいということ」
──ハンナはまさしくあなたのためにあるような役。運命的な出会いですね。
「原作を読んだのは6年前なの。もちろんその時は映画化の話はなくて、偶然読んだのだけど、完全に物語に入り込んでしまったわ。とても感動したの。だから、ハンナを演じられると分かった時は本当に嬉しかった」
──ハンナを演じることで特に意識したことはありますか
「最初に思ったのは原作の素晴らしさにふさわしい演技をしたいということ。それにはハンナの葛藤を理解する必要があったわ。ハンナは秘密を抱えているでしょう? その秘密が彼女の人間性を形成する大きな要素になっているの。彼女が感じている信じられないぐらい強い屈辱感の根源もそこなのよ。だからそのポイントを押さえることが、彼女を理解することにつながると思ったのよ。それと罪の意識ね。彼女は服役することで罪の意識を学んでいったと思う。こういったいろんな要素のバランスを保っていくのは、とても難しかったわ」
──ハンナが過去に犯した罪をどう思いましたか。その罪を許せるか、許せないのか、観客の見方も分かれると思いますが。
「私が強く意識したのは、キャラクターをジャッジしないで演じるということ。彼女が善い人であるとか、悪い人であるとかジャッジしないで、1人の人間としてその全体を描写しなければいけないと思ったの。彼女は愛の偉大さを知っているし、人を思いやる気持もある。心に暖かみを持つことができる女性として表現したかった。そして、彼女の傷つきやすさ、屈辱感、勇気も表したかった。特に、判決を受け入れるシーンでそれを表現したいと思ったわ」
──ハンナは時々強い怒りを表しますね。頑固なところもあるし。
「リサーチしていて分かったのは、秘密を持つ人間はそれを押し隠すために鎧を纏うということ。怒りもその防御の一つ。マイケルが勤務中の自分を見ていたと知って怒るのも、防御の表れということなの。でもいつも怒ったり苛立ったりしているわけじゃないわ。確かに荒削りなところはあるけど、とても優しく暖かいところもあるし、時には怯えている。そういう多様性を出したいと思った」
──15歳のマイケルとのラブシーン、大胆なヌードがあって話題になっていますね。
「正直なところ、ヌードになるのは嬉しいことじゃないけど、仕事の一部なんだから、やらなくちゃってこと。この映画はラブストーリーで、しかも2人の関係がその後の彼らの人生にとても大きくて重い影響を与えるという物語でしょ。だから、ラブシーンはとても重要なのよ。マイケルとハンナが分かち合う親密さを、充分に観客に伝える必要があったの。ラブシーンを撮った時、デビッドは18歳になっていて、とてもしっかりしていたから、撮影自体は全然難しくなかったわ」