「PJをもってしても」ラブリーボーン The Dudeさんの映画レビュー(感想・評価)
PJをもってしても
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PJほど強大な権力を持つ映画監督をもってしても、人間の感情はままならなかった。Mr.ハーヴィーの最期は試写の結果撮り足したものだという。そりゃそうだ。あれほどスタンリー・トゥッチ(祝オスカーノミネート)が憎悪をかき立てる悪人を巧く演じていて、因果応報にならなきゃフラストレーションが渦巻いてしまう。あの最期でも緩い位だ(穴に落ちろと思った)。
PJの演出には相変わらず力があって邪はない。少女の死までの展開には惹かれるものがある。しかし、『乙女の祈り』の泥人形シークエンスに到底及ばぬ死の世界の描写は退屈するし、2つのクライマックスで致命的な失敗をしている。後者の失敗は『LOTR』で得た観客の信頼をフイにしかねないほどのものだ。サスペンスとドラマを強引に掛け合わせることは意欲的だが、それによりむしろ人の感情を損ねてしまっている。「復讐より先に進むこと」がテーマと感じたが、それすらぼやけて混乱ているという感がした。上映時間も長いのでスー・サランドンのシーンは全て削除しても良かった。
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