「今後のボンドの成長が愉しみ」007 慰めの報酬 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
今後のボンドの成長が愉しみ
2009年の口開けにぴったりの作品。
かつて007、緊迫したスパイ活動を支えていたものは優雅さとユーモアだった。ゆったりと伸びる重低音が印象的なジョン・バリーのスコアも、007特有の雰囲気を盛り上げるのに不可欠な要素だった。が、反面、ボンド役が代わるごとに荒唐無稽さも目立つようになり、アクション映画の先頭を走っていたシリーズもいつのまにか後方に置いて行かれてしまっていた。そんな状況を一発で軌道修正したのが新ボンド、ダニエル・クレイグによる前作「カジノ・ロワイヤル」だった。痛いほどの格闘、そして旧作ではほとんど描かれたことがない拷問もある。敵のボスと遭遇しても、以前のような戯言の応酬はない。即、命懸けの闘いとなる。新007を支えるのはスピードとリアリズムだ。音楽も引き締まったタイトなサウンドとなり、効果音も高音域を開放したキツイものとなった。さらに、今作は106分という、昨今の大作としては異例の短さだ。無駄な贅肉を削ぎ落とした新ボンド・シリーズ、今後の楽しみは、徐々に優雅さとユーモアを身に着けていく過程かもしれない。
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