「あるべきでない強さ」チェンジリング ベレエさんの映画レビュー(感想・評価)
あるべきでない強さ
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権力が腐敗するとこういうことが起こり得る、ということを映像にした作品に思う。戦争映画なんかを観ても感じることで、そういう状況下では人間の尊厳なんてものはいとも容易く踏みにじられてしまう。そして、それを奪う側の人間は、そのことをおもちゃでも扱うように他人事にしてしまえる。人間という生き物の恐ろしい一面だ。
この映画で主人公を動かしているのは、「持たざる者の強さ」である。象徴的なのは、精神病院に入れられてしまい、悪態をつくシーン。正直な話をすると、ここにはちょっとしたカタルシスがあった。それくらい言ってもいいと感じるような、ひどい対応を病院側にとられているさなかでの罵りであるから。だけど、と同時に思う。残念な気がしたというか、悲しくなったのだ。主人公がそんな言葉を遣ったことにでなく、主人公がそんな言葉を遣わなくては「ならなかった」ことに。作中のセリフにあるように、たしかに守るもののない人間は強い。けれど、それ以上に守るもののない人間は悲しい。その強さは本来必要のないものなのだから。それを持たなくてはいけなくなった、守るものを理不尽に奪われた主人公の気持ちを思うと、とてもやりきれない気持ちになった。守るべきものは絶対、あったほうがいい。
考えさせられる内容だったが、これをTRUE STORYというのは、残念ながら無理がある気がする。事実かどうか気になるのがちょっと邪魔に思えたので。
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