「アバター」アバター(2009) DOGLOVER AKIKOさんの映画レビュー(感想・評価)
アバター
映画「AVATAR」を観た。
「ターミネイター」、「タイタニック」を作った映画監督ジェームス キャメロンの最新作だ。1997年に監督賞ほか、沢山のアカデミー賞を総なめした「タイタニック」の大成功から12年間 映画から遠ざかっていた監督が「タイタニック」と同じ製作者、ジョン ラントンと共に戻ってきた。
2時間40分、最新の技術を使った新作だ。
実写でもアニメーションでもない 実際に役者が演じている姿をデジタル化したモーション キャプチャー(CG)といわれる映像をふんだんに使っている。前に「クリスマスキャロル」で モーション キャプチャーフィルムを3Dの眼鏡をつけて観るおもしろさについて書いたが、「アバター」では 普通の人々の動きとCGのフィルムとを 上手に編集してあって 一つの画面に人とCGで作られた異星人とが同時に出てきても 全く不自然さがない。
そのフィルムを3Dの眼鏡で見るので 画像が立体的で深みのある画面になって まるで自分が映画の中に居るような臨場感が得られる。
この映画をひとことで説明すると、「デジタル3Dモーションキャプチャーフィルムで観るSF」ということになる。
このCGに世界に出てくる惑星パンドラのナヴィの世界がおもしろい。普通の人間の倍以上背が高い 緑色の肌をしたナヴィの人々、大きな翼をもった怪鳥、空中に浮かんでいる島、不思議な色で光を放つ植物、浮遊する生物、こんな想像上のおとぎの国に、自分もアバターになって入り込んでみたくなる。
AVATARを辞書で調べてみると インドヒンズー教の神の名とか、化身と 出てくる。この映画では、主人公が高度なコンピューターを使って人と異星人とのDNAを組み合わせてできたアバターとなって、変身してナヴィの人と同じ機能を持つようになる。
時は2154年。
惑星パンドラには 酸素がないので人間は住めない。ここに住む先住民ナヴィは酸素がなくても呼吸が出来て、動物や植物ともコミュニケーションをとる能力を持っている。人の姿に似ているが青い皮膚を持ち 身体能力は遥かに人よりも優れている。英語を話す人々とコミュニケーションをとる必要ができれば 自然と英語を使って会話する適応能力も持っている。
脊髄損傷で下半身麻痺の元海兵隊ジェイク(サム ワーシントン)が、惑星パンドラにやってきた。パンドラで優秀な科学者だった双子の兄が死んだので 兄のプロジェクトの実験を手伝う為だ。アバタープロジェクトは この惑星にしかない貴重な鉱石資源を地球に持ち帰ることが目的だ。そのためには酸素がなくても生きていられる肉体を持ち、先住民ナヴィの人々と良好な関係を作ることの出来る人材が必要だ。それでジェイクが アバターになってナヴィの人々と同じ肉体を持って 彼らの世界に送り込まれることになる。
ジェイクはお金が欲しかった。兄のプロジェクトアバターに志願して 成功して 貴重な鉱石が採掘できるようになったら 莫大な報奨金がでる。それで脊椎損傷を治療して 歩けるようになりたいのだった。
ジェイクは マシーンに横たわり アバターとなってナヴィの人と同じ肉体を持ってナヴィの世界に入っていく。マシーンのなかで眠ったジェイクの人間としての肉体は眠っている。
しかしアバターになって ナヴィの世界に入ったその日に、ジェイクは凶暴な動物に追われて ジェイクを送り込んだ軍の部隊と離れ離れになてしまう。ジェイクが 野獣に追い詰められて殺される寸前のところを、美しいナヴィの娘に救われる。娘(ゾーイ サルダナ)は ナヴィの長老の娘 ネイティリという。彼女ははじめ森の動物と協調して生きていけないジェイクを殺そうとするが、他の森の生物達が 彼女の手を止めさせた。ジェイクには何かナヴィの持っていない能力を持っていることを予測したからだった。ジェイクは ナヴィの人々から 生きるための食生活や 動物達と会話する方法や、大きな翼を持った鳥を自由に乗り回す方法などを学ぶ。また彼らの言語も学習する。そして、ナヴィの人々の文化を知れば知るほど ナヴィの進んだ文化に傾倒していくのだった。ジェイクは知らず知らずに、ネイテイリに恋をしていた。
プロジェクトでは だんだんジェイクがナヴィの すべての生き物と平和的に協調して生きる姿や、高い文化に傾倒していく様子を快くは思っていない。軍としては、貴重な鉱石さえ収奪すれば あとはどうなっても良いのであって、余計な時間や資金を費やしたくない。ジェイクを使って ナヴィと交渉などさせずに、ナヴィの本拠地がわかってしまえば、一方的に侵略して鉱物を奪えばよい。そういった強硬な軍が独走する。
ナヴィの本拠地が襲われ、ナヴィの人々が次々と殺されていった。
これを見て、ジェイクはナヴィの人々と抵抗のために 立ち上がる。
主役のサム ワーシントンは オーストラリアの役者だ。「ターミネーター4」で 初めてハリウッド映画で大役を演じた。パース出身の謙虚な好青年だ。誠実で 繊細な役柄を演じる。
デビュー作は、「ブーツマン」。オーストラリアの炭鉱の街ニューカッスルで 顔も頭もずっとよく出来ている兄には 何一つ勝てない。そんな出来の悪い弟が 兄の恋人を愛してしまう。そんなせつない役を演じて賞を取った。見た目は どこにでも転がっている普通の顔をした これといって特徴のない好青年だが、この人が傷つきやすい繊細な青年の役をやると、俄然 演技が映える。
この映画で、脊椎損傷で車椅子の男の役をやったが 本当に脊椎損傷で足が麻痺した患者のように、腰から下の肉が落ちて 膝から下の両足など、手のように細くなっていた。筋肉の発達した上半身に比べて、動かない足の細さが、本当の下半身麻痺の人にしか見えなかった。
よく役者が役を演じるために 極端に減量したり、逆に筋肉をつけたりして、肉体改造をするけれど、こんな風に足を細くするなんて、、、そこまで体重を落としたのだろうか。これが役のための 努力の結果なのだとしたら、みごと、と言うしかない。
とてもおもしろい映画だ。「SFのCGを3Dで観る」体験をこのクリスマス、正月休暇に やってみる価値がある。
これからの映画だ。
2010年には テイム バートン監督の「アリス イン ワンダーランド」も、「パイレーツ オブ カリビアン」も出てくる。どちらも3Dで観ることになりそうだ。映画を画面から離れたところから鑑賞するのでなく、画面の中に自分が入りこむような体験ができる3Dで、映画がより楽しくなってくれることが、とても嬉しい。