「本作で結婚がメインテーマになること自体、時代の変遷を感じました。」セックス・アンド・ザ・シティ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
本作で結婚がメインテーマになること自体、時代の変遷を感じました。
いち早くマスコミ試写で見ました。
小地蔵も時々、テレビ版を見ていました。4人のキャリアウーマンの少しエッチな話題を井戸端会議で愉しんでいるという印象を強く持っていました。
その背景にあるのは、おなじみの「I LOVE NEWYORK」をKeyにした、ニューヨークへの深い思い入れがあります。ご当地のニューヨークっ子たちが見たら、あるあるって頷く、ライフスタイルや、価値観が色濃く埋め込んであり、彼らの代表として4人の登場人物が登場し、ニューヨークカーたちの気分を代弁しているというドラマのはずであったと思います。
特に今回結婚が話題となるミスター・ビッグは、かつてのテレビシリーズで、私財をなげうってカルフォルニアのワイナリーを買収するシーンがありました。ニューヨークカーにとってカルフォルニアワインは粋の象徴であり、今までの資産をつぎ込んでも買ってしまったビックは、「かっこいい奴」という、あこがれの眼差しを受けたのでした。ニューヨークカーの象徴のような男性なのですね。
また、テレビシリーズは、カウンターカルチャーやウーマンリブ運動の影響を強く受けて、家族や結婚に対する疑問、既存の倫理観への反発と自由、独身主義というポリシーを強く持っていました。自由奔放なキャラクターの言動が支持されたわけです。
そんなわけで、映画版になって、ゴージャスになった分、テレビシリーズの個性が弱められたのは残念なところ。特に結婚観で、テレビシリーズなら、どんなに恋い焦がれても、最後は結婚って何よと4人で言い合い、突っ張って終わるのがお約束事だったはずです。
それが今回は事情が変わったのは、4人の年齢が40歳平均となり、後がなくなってきたからでしょうか。それとも安直に恋愛映画路線に軌道修正したのでしょうか。このハッピーエンドな結末が、ふさわしいのか、違和感があるのか、ぜひご覧になって感じてみてください。
本作はまるで一冊のファッション誌をそのまま映画化したように、豪華ファンションがきら星のように出てきます。これだけでもう女性の観客はうっとりするでしょう。キャリーはコラムニストから一流ファッション誌の記者へ出世していて、劇中ファションショーまで登場します。
キャリーを演じるサラ・ジェシカ・パーカー自身も、役柄がきっかけでデザイナーの仕事もやるようになったそうです。
ハイライトは、キャリーのウディングドレスシーン。編集長に口説かれて、自ら表紙とウディングドレスのモデルとなったキャリー。あらゆる高級ブランドのウディングドレスシーンに袖を通します。その一つ一つが目を見張るように美しかったです。
特に極めつけは、本番の結婚式のドレス。これだけでも一見の価値有り。まさに最後の花嫁(編集長によれば40歳がドレスの限界だから最後なのだという)にふさわしい衣装でした。
でもキャリーの本音は、シンプルなドレスが希望だったのは意外でした。豪華なウェディングドレスが登場する前に、キャリーは地味なドレスにこだわります。これが結構ラストへの複線となりますからご注目ください。
そしていよいよ結婚式へ。ここで大波乱が起こりましたが、内緒。
以後ビックはあまり画面に登場しなくなります。メインストーリーの片方を引っ込めるのは、大胆なストーリーテーリングだなと思いましたね。
あと注目は、サマンサの相変わらずの奔放さ。彼女には結婚生活は向いていないかもしれません。それにしても隣の部屋のエッチを覗き込んでは駄目ですよね。見どころは、隣のイケメン男性が全裸でシャワーを浴びているところを目撃するシーン。それを物欲しそうな眼差しで見とれるところは、いかにも彼女らしいと思いましたよ。
またミランダは、深刻な夫婦不仲となります。結婚生活の難しさを、感じさせます。
ただ、テレビシリーズならミランダも新しい愛を見つけるところですが、そうでない結末に向かっていくところに、本作の背景となる時代の変遷を感じました。
2時間30分の長編ですが、随所に細かくエピソードが散りばめられて、笑えるところも多く、飽きのくる要素が皆無です。特に4人と同年代の女性なら、もあ何度もあるあると頷いて、画面に没頭してしまうくらい感情移入してしまうでしょう。
テレビシリーズ抜きでも充分楽しめます。むしろ過去にあまりとらわれない方がいいかもしれません。