劇場公開日 2010年7月2日

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「もうちょっと」レポゼッション・メン かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5もうちょっと

2010年7月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

拙ブログより抜粋で。
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 よくあるSFの世界観を借りたアクションSFかと思いきや、冒頭、いきなり主人公レミーの口から量子力学の思考実験「シュレーディンガーの猫」が語られ、こりゃまた本格的な哲学系ハードSFだわと身構えることになる。
 この映画の中で描かれる未来都市も、あちこちに日本語がちりばめられた無国籍な感じの『ブレードランナー』(1982年、監督:リドリー・スコット)を彷彿とさせるもので、そういう面からも一筋縄でいかない予感を受ける。
 人工臓器によって人が人ならざる者との境で苦悩し、人間としての自己のありようを見据えるという点では、おおかたそういう目論見を持ったSFだと思うし、結末もそれに沿った落としどころになっている。

 近未来SFとしては、「人工臓器に隠された欠陥が!」とかいった安易な科学批判に行かなかったのが面白い。
 話は人工臓器そのものではなく、そのローンが払えなくなった者への回収システムを中心に廻る。そんなひねりの利いた作品世界の中で、問題を起こすのは人間の業(ごう)だ。
 社会風刺も織り込んだ良くできたSFの世界観だが、しかし高みを目指したこの作品の目論見は、すんでのところでうまくいっていない気が。

 この映画、一応、衝撃の結末という触れ込みなのだが、伏線の張り方が下手なので、正直なところまったく驚けなかった。
 最初に“あの人”が細工した瞬間からして演出的に不用意で、すぐに先が読める。まあ、そこまでは話としては前段なので、隠すつもりもなかったのかも知れないが、それにしては中途半端に隠している印象で釈然としない。
 それ以上に問題なのは、これ見よがしなセリフで“あれ”を説明するから、最後の大どんでん返しも容易に予想がついた。冒頭のセリフが物語るこの映画のテーマから考えても、そこしか落としどころがないんだもの。

(中略)

 結局のところ、いろいろと面白そうな要素はあるのに、どういう見方をしても中途半端だったかな。
 哲学SFとしても、バイオレンス・アクションとしても、単純などんでん返しものとしても吹っ切れていない感じで。逃避行の中盤も中弛みを感じたし。

 惜しいのよ。もうちょっとで後世に名を残す骨太なSFバイオレンスになれたのに。
 ここはぜひ、ユニオン社にお願いして換骨してもらいましょう。ローンはもちろん、出世払いで。

かみぃ