ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのレビュー・感想・評価
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吸い尽くす
冒頭、セリフのないシーンが続く中で不穏な音楽が流れ一人黙々と作業をする男。 採掘現場の大掛かりなセットとリアルで痛いッ!と思わせる事故シーンなど、とにかく何かが起こりそうでハラハラして退屈になることはない。 一攫千金を狙った成り上がり男の浮き沈みを描いているかと思いきや物語の方向性は、全くもって訳が解らなくなりソコがまたイカれていて凄まじい。 P・T・アンダーソンは次作で宗教に縋ろうとする男を描くが、本作では神を否定する男をまるで怪物のように描いているのは気のせいか? 石油を掘るだけではない、人を埋める為にも掘っちゃうD・デイ・ルイスの存在感は逸品。 映画音楽として素晴らしい手腕を発揮するJ・グリーンウッドは無敵すぎる。
泥と油と欲と血に塗れた石油王の半生
PTA祭その2。『パンチドランク・ラブ』とはうってかわって重厚な物語で観終わってヘトヘトになる。決して楽しい話ではないし、彼のことを好きにもなれないが、お金それ自体というよりは、稼ぐという行為に執着しているようにも見える。 ダニエル・デイ=ルイスがニコラス・ブレイク(セシル・デイ=ルイス)の息子だと最近知った。『野獣死すべし』面白かったなあ。
欲望と狂気の映画
ところどころで流れる 音?警報のような音? あれが緊張感を増幅。 なんだか「うぉぉぉぉ」って感じの映画。 欲望というか野生というか。 真っ黒い石油が吹き出す様子が 人間の欲望のような感じ。 カリスマ性を持ち怪しげな宗教で 人々を取り込み父親も蔑む若者。 泥だらけで食卓に座るシーンは狂気。 自分以外の人間を信用できず、 息子さえも利用し、 宗教家の若者に生理的な嫌悪を抱くのか、 ぼこぼにする主人公も狂気。 結局なんなんだろうと…。 不思議な虚しさを覚える映画。 ただ、なんだかすごい。
愚かな人々の悲喜劇
誰もが自分の欲望を満たすために登場してきて、そして去っていきます。 石油産業の発展と、家族、宗教をベースにした重厚なストーリーは見ごたえがある。 何故かカタルシスを感じる部分を、喜劇のような演出になってますが、役者の掛け合いが絶妙で物語によいテンポを与えているように感じます。 あとは、音楽もよい。冒頭はbgmもセリフもなく、これからの展開を期待させるけど、中盤以降は不穏な旋律が物語の発展の期待をあおるようになっている。
映像と音楽がオシャレ
まずすごいのは冒頭の期待感です。 ああ、ここからすごいことが始まるんだなあという何とも言えない感覚がありました。 疑心と欲望に包まれたプレインビューと、偽善で社会を舐め切った若者の戦い。まさに心の底から腐った二人が主人公なので、見ていて辛い人もいるかもしれません。 まさに裏切りや疑心ばかりで急に怒鳴り散らす場面も多いので、怖い映画だと思いました。 それでも役者さんはすばらしいし、人間の欲望や醜いところがリアルに描かれていてすごいです。 どうしてここでこんな音楽をチョイスできるだ!と驚く場面も多いです。 人にあまりオススメできませんが人生top10にはいるくらい素晴らしい映画です。
There will be blood
冒頭シーン。自分だけの力で大地を掘り、命がけで仕事に打ち込み、最初の報酬342ドルを手に入れるダニエル。ここがすべての原点だ。 彼は、自分の欲望を達成させるに足る、必要な能力を十全に備えた男なのだ。欲望はあるが、肝心な能力の足りない人間とは迫力が違う。 彼は宗教を信じない。自分の不文律のルールに従う。自分の領域に入ってきた「敵」への容赦ない攻撃とペナルティ。 そして、強い精神的武装。目的のためなら、たとえ屈辱を受けてもものともしない。 一方、労働もせず、偽善で神を語り、欲望を達成するためには金の無心も厭わなないイーライ。 ラストで二人の積年の決着が付く。 「石油」と「宗教」と「血縁」の呪いが噴出し、題名の「いずれ血に染まるだろう」の意味が胸に迫る。 息子とのシーン。列車の中で赤ちゃんがヒゲを触る場面をはじめ、長いカメラ回しがグッとくる。 息子への丁寧な愛情がにじむ。
落下する物と者
序盤の落下のイメージ、その感覚を持って映画を語ろうとすること。地中から這い出る人と、噴き出す油、その感覚を持って映画を語ろうとすること。この二つのイメージの拮抗が映画を支えている。事実、この二つのイメージはとても美しい絵になっていた。 本音を言えば、美しい女性が出てきたら、もっと面白くなったような気がする。
これこそが本物の映画だ
冒頭から十分以上だったろうか ほとんど台詞がないシーンが続く それなのに 主人公ダニエル・プレインビュが いかに富に貪欲な男であるかがわかる ここだけでも ポール・トーマス・アンダーソン監督の卓越したセンスが光り輝いてる
印象薄い映画
冒頭からしばらく暇です。 自分は評論家や監督では無いので役者の演技ばかり誉めたくはないですね…作品として楽しめるかどうかが大事です 娯楽作ではなかった…。そして得るものや発見ももそんなになかった。 ただ欠陥も見あたりませんね、一応最後までは観れます。 アカデミー賞受賞作が年々楽しめなくなってきたなあ…
後味が悪い
途中から心底辛くなってきた。嫌いな人しかでてこない。気持ちが不安定な時に見ると危険。見終わった後の余韻が何とも言えず、早く消えてほしかったのになかなか消えてくれず、ある意味心に残る映画。音楽は良かった。
己こそが神と信じる男の哀しさ
この作品を観に行ったのはアカデミー賞を2個獲ったからではない。映像にILMが加担していたからだ。映画を選ぶきっかけなんてこんなものだ。 100年以上前の荒れた大地の広がりに、気の遠くなるような旋律が被さる導入部に圧倒される。 一鉱山師だったプレインビューが石油王にのし上がっていくのだが、演じるダニエル・デイ=ルイスの声音に惹かれる。資金を集めるための説明会での落ち着いた声。神をも畏れぬ怒りに燃えた声。彼にとっては、町の神父さえも民衆をそそのかし仕事の能率を下げる敵でしかない。彼の声音は神そのものだ。己こそが神なのだ。ラスト、「終わった」という一言がすべてを物語っている。 158分という時間を使って丁寧に描かれているが、唯一、プレインビューと息子との軋轢の部分が端折られている。 p.s. 80年前のボウリングの設備は興味深い。掘削のボーリングじゃなく、玉転がしのボウリングの方。
見応えはあるけれども・・・
ダニエル・デイ・ルイスの演技が凄いのはよく分かる。熱演と言うよりは、役をまさに生きている感じ。だから、彼の演技を観ているだけでも・・・正確に言うと、彼の合わせ鏡的な牧師役を演じたポール・ダノとの演技合戦は大いに見応えがあった。 でも、見応えはあるけれども心に迫らなかったのも事実。石油採掘とその見返りとなる大金の欲に見せられた主人公が、徐々に常規を逸して、孤独を深めて行く様は、確かに見応えがあるのだけれど、そこにあったのは演技の凄さであって、“物語の面白さ”ではなかったように思う。その点、「ブギーナイツ」や「マグノリア」は物語自体の面白さがあったように思うのだが。。。それを鑑みると、きっと、人を選ぶ映画なのだと思うので、数年後、もう一度見返してみたい。
アメリカの夢の裏面史
ポール・トーマス・アンダーソン監督の作品は、見逃せないものばかりだ。それは、家族愛を見せる作品が多いアメリカ映画の中で、偽善という対極的な性質をテーマにした作品を送り出し続けているからである。今回もアンダーソン監督がスクリーンに描いたのは、人間と社会の中にある偽善そのものだった。 一九世紀のアメリカ大陸で石油採掘を生業にするこの映画の主人公は、家族はないのだが、死んだ同僚が残した子どもひとりを引き取る。そして主人公は、その幼い子どもの姿を利用したり、自らの口の上手さで巧みに石油が埋まる土地の所有者たちに取り入って次々と買い占めていく。その主人公の人間への取り入り方、土地の買占め方が、羊の面をかぶった狼のように何とも嫌らしいのだが、一方、買い占められた土地所有者の中から、宗教家として世間にのし上がろうとする、やはり宗教という仮面をかぶった裏の顔を持つ若者が登場すると、腹に一物も二物もある若き宗教家と石油採掘者との偽善者同士の対決がこの映画の最大の見せ場となる。この見せ場で、アンダーソン監督の演出は、人間がもつ偽善と傲慢さを次々と表出していき、見ている者は人間の真実の姿にある種の興奮すらおぼえるくらいだ。人間の見方で、性善説をとるか、性悪説をとるかで、好き嫌いが分かれるかもしれないが、人間を正面から素直に見せるアンダーソン監督の演出の素晴らしさを高く評価できるこの作品は、今年のアメリカ映画を代表する一本と言っていいと思う。 ダニエル・デイ=ルイスの怪演ぶりがこの作品を支えているのは当然なのだが、見た後に忘れられなくなったのは、俳優の演技よりも映画音楽の方だ。武満徹を思わせるような、単調でありながら重厚さと不気味さを感じる音楽が、登場人物たちの心の闇を映し出しているようでとても印象深かった。音楽担当のジョニー・グリーンウッドの名は今後も覚えておいて損はないだろう。
ズシリと重い、見応えがある秀作
迸る、抑えられない人間の激情を米国の石油開発黎明期の奮闘を重ね合わせた質の高い映画。石油掘削点での激しく高い火柱で、ダニエル・デイ・ルイスのこれまた名演で表現される主人公の人間の悪の衝動の噴出が表現されるなど、映画的興奮に満ちた緊張感のある映像と音楽で長さを感じさせない。(むしろ、もっと見たかった) テーマゆえに暗く重たい映画で、万人受けはしないが、2008年を代表する映画として刻まれるべきと思う。
薄味派にはくどすぎる
個人的にあまり好きじゃないPTA監督の最新作でございます。 主演のダニエル・ディ・ルイスは好きですから観ました。 石油を題材にしたのは、やはり今が旬だからか。まだ未曾有の地だったアメリカで、一人の野心深き男が石油採掘に情熱を燃やすという様に、ダニエル殿ははまっています。しかし途中からは、あきらかに演出も演技もやりすぎです。 PTA監督は、今の時代の監督としてはなかなか古典的な感性の持ち主ですね。題名と展開のかけかたもうまいし、エンディングロールに切り替わった瞬間はしてやられた気分。とても才能おありです。 ですが、人によっては「だから、どうした?」と言われても仕方ない作品でもあります。娯楽性乏しく、しかもながながと奇人が変人に変貌していく様を見させられるのですから。監督の独善性が完全に暴走しています。これに耐えるには、高尚な映画を観ているんだという見栄と、自分は分かっているんだという虚勢、もしくはそれなりの文学的修練を積んでいる事が必要です。
演技ショー
どれくらいその人になりきれるかで評価するとこの作品は見応えあります。 前半のスピーディーな展開と冒頭の入り方は本当に素晴らしい作り。 しかし、中盤のだらだらした展開からラストにかけては少し眠くなる程の作りになっていて残念!もう少し息子との交流を緻密に年代をかけて描いて欲しかった。が、この主人公を演じたダニエルデイルイスは凄い!名優いやもうすでに大俳優かのダニエルデイルイスの演技は観ている者を圧倒する力があり感服した。 この作品はダニエルデイルイス演技ショー作品と言ってもいいぐらい。脇役に個性がなく中盤から終盤に納得いかないが観て損はない作品です。
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