ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのレビュー・感想・評価
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ガソリンが170円台!
H.Wが須賀健太に見え、イーライ・サンデー(ポール・ダノ)が吉岡秀隆に見えてしまったため、いつかH.Wの書いた作文を盗むんじゃないかと想像したのですが、全く違ってました。映画は石油屋ダニエル・プレインビューがイーライの双子の兄ポールの情報によって石油成り金になるストーリーであり、東京タワーならぬ採掘用のやぐらが見事でありました。
採掘開始。ガス漏れ事故。落下事故。炎上。音響効果とともに凄い迫力の映像であります。パイプラインを作っているところを見ると、なぜだかベンチャーズの曲を勝手に頭の中で弾いてみたりするのですが、現代音楽っぽいサントラが不気味なのに心地よかったり。自分のうちにパイプラインが通ったならば、こっそり穴を開けてかすめ取りたいところです。
アメリカンドリーム、大金持ち。成功するためには並大抵の努力じゃ無理だ・・・などと、偉人伝を描いた映画では決してなく、人を信じない、金の亡者、気に入らない奴はぶっ殺すなどという最低の人間の物語だ。牧師イーライは対立する構図というより、ダニエルにとってうざったい存在。教会に5000ドルの寄付くらいしてやれよ!と、ダニエルに一縷の望みかけたくなるけど、金儲けにならない事には契約があっても全て反故にしてしまうほどの性格だったのだ。
かと言って、イーライを完全な善人としても描いていない。ダニエルが傲慢なアメリカそのものを象徴しているとしたら、その力を利用しようとする資源豊かな国が結局は裏切られることをシニカルに描いているのかもしれません。そうなってくると、「自分はあんたの弟だ」と言って近寄ってくる男なんて日本なのか?じゃあ、孤児のH.Wは?などと考えてみると面白い。
〈2008年4月映画館鑑賞〉
万人には勧めにくい名作
「面白くない」話なんだが、
拭い去れない「何か」を残す話。
親子の絆、がメインかと思っていたが、
最後に帰結するのは、またあの男。
絶対的な欲望は何事にも屈しない。
常に不協和音なBGMの不快感が
この物語の顛末を予測させる。
ただ、この台詞の少なさで2時間40分とは長い。
やっと最後まで観られた…
何度トライしても睡魔に打ち負けてきたが、この度ようやく最後まで観ることに成功!削ぎ落とされた台詞量とありのままを切り取る長回し、その意味する全てを理解することはできなかったけれど、そこはかとない力を持った作品だった。ポール・ダノの怪演に震えた。
吸い尽くす
冒頭、セリフのないシーンが続く中で不穏な音楽が流れ一人黙々と作業をする男。
採掘現場の大掛かりなセットとリアルで痛いッ!と思わせる事故シーンなど、とにかく何かが起こりそうでハラハラして退屈になることはない。
一攫千金を狙った成り上がり男の浮き沈みを描いているかと思いきや物語の方向性は、全くもって訳が解らなくなりソコがまたイカれていて凄まじい。
P・T・アンダーソンは次作で宗教に縋ろうとする男を描くが、本作では神を否定する男をまるで怪物のように描いているのは気のせいか?
石油を掘るだけではない、人を埋める為にも掘っちゃうD・デイ・ルイスの存在感は逸品。
映画音楽として素晴らしい手腕を発揮するJ・グリーンウッドは無敵すぎる。
〈怪物〉になることでしか、生きれなかったプレインヴュー
『スカーフェイス』(1983)も力任せでのしあがった男だけど、こっちのプレインヴューというのは、それより哀しいものを感じる。言うならば"喪失感から逃けることしかできない男"。それは三人を喪ったという"事実(一人は殺害だけど)"の対処からも見える。
ただ映画が素晴らしいのは、そんな欠点を抱えた男をあくまで"人間"らしくしたこと。下手したら人の心を持たない人間になりかねないのを、この監督はダニエルの中に巣食う"弱さ"を見ようとしている。突然死んだ仕事仲間、義理の息子のH・W、そして義理の弟・ヘンリー…彼らを"鏡"の役にして、プレインヴューが見なきゃならないものが何かを照らしている。
だけどプレインヴューは結局、孤独に埋もれる道を選んだ。疑心暗鬼に救いを求めて、すべての愛から目を瞑って、挙げ句大事な息子にさえ罵声を浴びせて、縁すら切った。そのあとの階段の隅で悔やむ場面は哀しかったし、そのやり取りを言わなきゃならない通訳の人も不運です。ただ不思議とその人からは苦笑じみたものを感じた(結構貴重な可笑しさです)。
イーライには徹底的な屈辱感を与えたあとで、殺害するという形で、地獄巡りに止めを刺した。イーライという同族嫌悪の象徴たる存在すらも、呑み干した彼の末路はまったくもって分からないけど、少なくともヘンリー同様、大地に埋もれて消えたと見る。まあ石油の温床地に、血と肉体とその魂が肥料みたいになれるんだったら、きっと本望だと思う(自分は御免被りたいが)。
とにかく体力必須なのと、非常に邪悪な結末なので、見る人を選ぶでしょうが、不思議と不快感は無いです。音楽も素晴らしいし、上映時間も気にならない(確か2時間38分)。間違いなく映画ファンなら見るべき名画の一本ですね。
あんなバケモノ役者に挑んだポール・ダノにもご注目を(笑)。
泥と油と欲と血に塗れた石油王の半生
PTA祭その2。『パンチドランク・ラブ』とはうってかわって重厚な物語で観終わってヘトヘトになる。決して楽しい話ではないし、彼のことを好きにもなれないが、お金それ自体というよりは、稼ぐという行為に執着しているようにも見える。
ダニエル・デイ=ルイスがニコラス・ブレイク(セシル・デイ=ルイス)の息子だと最近知った。『野獣死すべし』面白かったなあ。
まあまあ良かった
割りと良かった、 まあまあ良かった、 くらいでしょうか。 面白い人物描写やシーンも多いものの、 退屈なシーンが随所に挿入されているため、 台無しになっている感じです。 特に序盤、 主人公が登場するまでのシーンは必要なかったはずです。 ほかにも、 なぜこんな無駄なシーンが延々と流れるのか、 という場面も多く、 せっかくの映画を薄めすぎて、 まずくしてしまっていました。 最後に主人公が牧師を殺すのも納得いきませんでした。 そういうせいかくではなかったはずなのですが。 作者としては、 [落ち] がほしかったのでしょうけど、 それは人格をゆがめるほど大事なことではないはずです。
欲望と狂気の映画
ところどころで流れる
音?警報のような音?
あれが緊張感を増幅。
なんだか「うぉぉぉぉ」って感じの映画。
欲望というか野生というか。
真っ黒い石油が吹き出す様子が
人間の欲望のような感じ。
カリスマ性を持ち怪しげな宗教で
人々を取り込み父親も蔑む若者。
泥だらけで食卓に座るシーンは狂気。
自分以外の人間を信用できず、
息子さえも利用し、
宗教家の若者に生理的な嫌悪を抱くのか、
ぼこぼにする主人公も狂気。
結局なんなんだろうと…。
不思議な虚しさを覚える映画。
ただ、なんだかすごい。
愚かな人々の悲喜劇
誰もが自分の欲望を満たすために登場してきて、そして去っていきます。
石油産業の発展と、家族、宗教をベースにした重厚なストーリーは見ごたえがある。
何故かカタルシスを感じる部分を、喜劇のような演出になってますが、役者の掛け合いが絶妙で物語によいテンポを与えているように感じます。
あとは、音楽もよい。冒頭はbgmもセリフもなく、これからの展開を期待させるけど、中盤以降は不穏な旋律が物語の発展の期待をあおるようになっている。
好き嫌いがありそうだが、オススメ映画!
この映画、スゴイか、スゴクないか、と言われると、「カナリ、スゴイ!!」。でも、面白いか、面白くないか、と言われると、・・・「面白くない」 かなぁ。
ミドコロは、ハッキリしています。
それは、ダニエル・デイ=ルイス演じる「石油屋」。この「石油屋」が、どれだけ “人間らしい行動をとっているかというのが、最大のミドコロなんです。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 では、それが、かなり エグく描かれていて、ソコがスゴイ。
ってか、ヒドイ!ってか、悪魔!
人間てのは、基本的には、『理性が欲望をコントロールしている生き物』 だと思うンだけど、
それが、この「石油屋」は違って、
『欲望のために、理性を働かせている生き物』 なんです。つまり、「石油屋」は、一見、人良さそうなんですが、内心は常に、“虎視眈々”と狙っているのです。
欲望の強さと、時折みせる理性とのアンバランスさが、まさに絶妙!!人間の業の深さが、イヤらしい程に出ています。
それが、頂点を迎えるのが、クライマックスです。
クライマックスのボーリング場で繰り広げられる惨劇は、まさに映画至上に残る名シーン!!
人間って、マジで怖い生き物だな。 と、思わせてくれる、そんな映画でした。好き嫌いはあるでしょうが、私はオススメです。
映像と音楽がオシャレ
まずすごいのは冒頭の期待感です。
ああ、ここからすごいことが始まるんだなあという何とも言えない感覚がありました。
疑心と欲望に包まれたプレインビューと、偽善で社会を舐め切った若者の戦い。まさに心の底から腐った二人が主人公なので、見ていて辛い人もいるかもしれません。
まさに裏切りや疑心ばかりで急に怒鳴り散らす場面も多いので、怖い映画だと思いました。
それでも役者さんはすばらしいし、人間の欲望や醜いところがリアルに描かれていてすごいです。
どうしてここでこんな音楽をチョイスできるだ!と驚く場面も多いです。
人にあまりオススメできませんが人生top10にはいるくらい素晴らしい映画です。
欲望の恐ろしさ
この映画は人間の欲望がいかに恐ろしいかを描いた作品。
普段人間の欲望は表に出ないのだが、いざとなるととんでもない形で表にあらわれる物だとこの映画でわかった。
本当に欲を出し過ぎるととんでもないことになる!
陰気くさいにもほどがある
情熱と野心と競争心と愛情深さが、猜疑心と憎しみと不信感と嘘と怨みと暴力と破壊と復讐に取って代わられてゆく。
自意識がひたすら内に向かい、自分の外部と調和することはまるでない。
主人公のダニエルが息子を寄宿学校から呼び戻してから、息子が結婚するまでの物語は描かれないが、この間にダニエルと外部の断絶は決定的なものになっている。無神論者は愛に見放され、カルトの牧師は世俗にまみれてどん底行き。
ぼくはこの映画は好きではないですが、ただし、映像の美しさ、カメラワーク、美術、音楽、演技はどれをとっても一流で、映画の芸術性は素晴らしいです。
でも、ただただ陰気くさくて救いが全くないので、映画として評価したくないのです。
There will be blood
冒頭シーン。自分だけの力で大地を掘り、命がけで仕事に打ち込み、最初の報酬342ドルを手に入れるダニエル。ここがすべての原点だ。
彼は、自分の欲望を達成させるに足る、必要な能力を十全に備えた男なのだ。欲望はあるが、肝心な能力の足りない人間とは迫力が違う。
彼は宗教を信じない。自分の不文律のルールに従う。自分の領域に入ってきた「敵」への容赦ない攻撃とペナルティ。
そして、強い精神的武装。目的のためなら、たとえ屈辱を受けてもものともしない。
一方、労働もせず、偽善で神を語り、欲望を達成するためには金の無心も厭わなないイーライ。
ラストで二人の積年の決着が付く。
「石油」と「宗教」と「血縁」の呪いが噴出し、題名の「いずれ血に染まるだろう」の意味が胸に迫る。
息子とのシーン。列車の中で赤ちゃんがヒゲを触る場面をはじめ、長いカメラ回しがグッとくる。
息子への丁寧な愛情がにじむ。
ずっと観てられる
ダニエル・プレインビューとポール・ダノの2人以外、ほとんど登場人物がいないんですが、この2人をずっと観てられる!
自覚してるクズVS自覚してないクズという縮図ですかね。
ラストのボーリング場のシーンは一種の爽快感がありました。
これをオスカーにするというのはアカデミー賞も捨てたもんじゃないと思いました。
日本アカデミー賞では絶対ありえないと思います。
落下する物と者
序盤の落下のイメージ、その感覚を持って映画を語ろうとすること。地中から這い出る人と、噴き出す油、その感覚を持って映画を語ろうとすること。この二つのイメージの拮抗が映画を支えている。事実、この二つのイメージはとても美しい絵になっていた。
本音を言えば、美しい女性が出てきたら、もっと面白くなったような気がする。
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