劇場公開日 2008年4月26日

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「ガソリンが170円台!」ゼア・ウィル・ビー・ブラッド kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ガソリンが170円台!

2019年9月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 H.Wが須賀健太に見え、イーライ・サンデー(ポール・ダノ)が吉岡秀隆に見えてしまったため、いつかH.Wの書いた作文を盗むんじゃないかと想像したのですが、全く違ってました。映画は石油屋ダニエル・プレインビューがイーライの双子の兄ポールの情報によって石油成り金になるストーリーであり、東京タワーならぬ採掘用のやぐらが見事でありました。

 採掘開始。ガス漏れ事故。落下事故。炎上。音響効果とともに凄い迫力の映像であります。パイプラインを作っているところを見ると、なぜだかベンチャーズの曲を勝手に頭の中で弾いてみたりするのですが、現代音楽っぽいサントラが不気味なのに心地よかったり。自分のうちにパイプラインが通ったならば、こっそり穴を開けてかすめ取りたいところです。

 アメリカンドリーム、大金持ち。成功するためには並大抵の努力じゃ無理だ・・・などと、偉人伝を描いた映画では決してなく、人を信じない、金の亡者、気に入らない奴はぶっ殺すなどという最低の人間の物語だ。牧師イーライは対立する構図というより、ダニエルにとってうざったい存在。教会に5000ドルの寄付くらいしてやれよ!と、ダニエルに一縷の望みかけたくなるけど、金儲けにならない事には契約があっても全て反故にしてしまうほどの性格だったのだ。

 かと言って、イーライを完全な善人としても描いていない。ダニエルが傲慢なアメリカそのものを象徴しているとしたら、その力を利用しようとする資源豊かな国が結局は裏切られることをシニカルに描いているのかもしれません。そうなってくると、「自分はあんたの弟だ」と言って近寄ってくる男なんて日本なのか?じゃあ、孤児のH.Wは?などと考えてみると面白い。

〈2008年4月映画館鑑賞〉

kossy