「スマホ無双。」バンテージ・ポイント 六畳半さんの映画レビュー(感想・評価)
スマホ無双。
大統領暗殺事件の全貌を、その場に居合わせた8人の視点から明らかにしていくサスペンス・アクションです。
23分間の出来事を6回巻き戻しながら、徐々に真実を明らかにしていくスタイルです。
こうしたスタイル自体は真新しいものではなく、他にもいくつかあるみたいですね。
自分が知っているものでは、「ひぐらしのなく頃に」がこのような形式の物語でした。
全体的にスピード感があり、少しずつ事件の全貌が明らかになっていくのは見応えがあります。
一方で、映画のポスターに書かれているような「容疑者は8人」というような状況を期待するには無理があるシナリオです。
トーマス・バーンズやハワード・ルイスは、もしかしたら犯人なんじゃ、と思わせるような立場なのかもしれませんが、ほとんどそういう描写も見られず、中盤以降犯人集団はほぼ特定されてしまうので、犯人集団とそれを追いかけるトーマス・バーンズ、という単純な構図の話になってしまいます。
一番意外性のある人物は、実は犯人集団の一員だったケント・テイラーなのかもしれませんが、トーマス・バーンズとの人間関係もそれほど描けておらず、意外性には欠けてしまいました。彼がわざわざ危険を犯してまでシークレット・サービスに扮した理由もよくわかりません。
結果的に、8人の視点から別々に事件を明らかにするというアイディアを活かしきれていません。
また、犯人たちの素性であるとか思惑、人間関係もイマイチ明らかにならないので、事件全体の意外性にも欠けています。
あと、スマートフォンが無双すぎます(笑)自分がそういった技術を知らないだけかもしれませんが、タッチペン一つで数種類の爆弾を遠隔操作し、大統領を射殺できてしまうのにはちょっと笑ってしまった。
そうやって考えていくと、周囲が完全に建物に囲まれ、撃ち放題殺し放題なマヨール広場を、対テロ戦略調印式の会場に選択する合衆国政府ってなんなんだろうとも思ってしまいます。
と言いつつも、ストーリー全体のテンポは良く、アクションシーンは見応えがあり、スペインの街中を縦横無尽に駆け抜けるカーチェイスは素晴らしかったです。
90分という時間なので、ちょっとした時間に、一気に見て楽しめる作品だと思います。