劇場公開日 2008年5月24日

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「無宿渡世に怒りを込めて、口の楊枝が、“ひゅぅ~”と鳴る、噂のあいつがランボーだ!」ランボー 最後の戦場 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0無宿渡世に怒りを込めて、口の楊枝が、“ひゅぅ~”と鳴る、噂のあいつがランボーだ!

2008年5月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ご存じスーパーシリーズ『ランボー』のおそらくこれが最後の作品となるものと思います。最後の舞台として選んだのはミャンマーです。
 シリーズ初のRー15指定となり、90分にわたって、かなりリアルな殺戮シーンが続きます。この点については、評価が分かれることでしょう。しかし、スタローンの気持ちを代弁すれば、できるだけリアルにミャンマー軍事政権の行っている暴虐ぶりを表現して、観客に訴えたかったのだろうと思います。

 まぁとにかく軍事政権の非道ぶりは凄まじい!冒頭から、カレン族の捕まえてきた村人たちを地雷を放り投げた田圃のなかへわざと逃がし、誰が最初に死んでしまうかという掛をやっているのです。しかも怖くて動かないようなら、容赦なく全員射殺!
 このシーンだけで観客は怒り心頭。全員がランボーモードになりました。

 なぜ軍事政権はキリスト教徒が多いカレン族に対して大虐殺を仕掛けているのでしょうか。実は反キリスト教というよりも彼らの居住地で産出される貴金属や宝石、原油などの利権を略奪することが目的なんだと劇中で語られていました。
 それにしても彼らの虐殺ぶりは、女子供だろうと徹底していて、容赦なく殺戮していました。

 ちなみにこの作品には、タイ、ミャンマーの俳優や地元エキストラが数百名単位で出演しているそうですが、彼らのなかの難民や山岳部部族も家の中で密かにランボーを見て、 彼のことを知っていたと言うから驚きました。
旧作ですら、現在ミャンマーで販売禁止命令が下ったにも関わらず、ランボーシリーズが海賊版となって流通し、同政権をやきもきさせているのだそうです。そんなこともスタローンが軍事政権反対派に肩入れするモチベーションになっているのかも知れません。

 スタローンは「最後の戦場」がミャンマー軍事政権反対派への激励になっているという事実について、これらの現象は自分の映画人生で誇らしい出来事だと語っています。しかし、本作においても、ミャンマー軍事政権を批判したりない彼は、今後も同国軍事政権と対決したいと考えているようなのです。

 そんな熱い思いを映画に入魂すべく、本作ではなんとスタローン独りで主演のほか、監督、脚本まで努めています。

 しかし物語の始まりは至って静かでした。
 戦い終えたランボーは、ミャンマー国境近くのジャングルで、独り毒蛇を捕まえては、ヘビーショーに売って生活する日々を過ごしていたのです。毒蛇を扱う以外、悠々自適の平穏な暮らしぶりです。
 そんなところに飛び込んだのがカレン族に物資支援を目指しているコロラド州のキリスト教支援団。 彼らはなんと丸腰で軍事政権が横行するエリアに乗り込もうとしていたのでした。「人を救うことに価値がある」としか考えてない連中だったのです。
 余りに無謀な彼らから船を出すよう要求されたランボーは頑なに断ります。しかし支援団のサラに、「捨てきらないものがある」とズバリ指摘されて、ランボーの心の内に眠っていた正義感に灯がともったのです。
 まぁ、支援団の脳天気さときたら、絶対人を殺さないことを信条としている支援団のメンバーは、現地に向かう途中で、海賊に襲われたときやむを得ず海賊を殺したことすら、非難するのでした。
 そんなあまちゃんの支援団でも、後半自らの生命が切羽詰まったとき、結局人を自らも殺してしまうのですから、皮肉です。こういうタイプは、きっとスタローンはお嫌いなんでしょう。

 無事送りとどけたものの、この脳天気なご一行は軍事政権に捕まってしまいます。そのため本国から救出のために派遣された傭兵部隊の連中が消息を追ってランボーを尋ねてきます。その数僅か5名。彼らはランボーのボート屋として雇い、案内させます。
 支援団のいたはずの村で情報を聞くと、敵はなんと100名もいると聞き、おまけに情け容赦に殺戮する様を目の当たりにして、こりゃあ金にあわないと尻込みしだしたのです。
 その辺の生き様が金で動く傭兵と自らの信念でしか動かないランボーとの違いなんですね。
 その違いがここで名台詞を残しました。ランボーは独りでも軍事政権戦う覚悟を決めたのです。

  無駄に生きるか
  何かのために死ぬか
  おまえが決めろ
  ・・・もうこのシーンはシビレました(>_<)!

 ここはおまえたちのためにあると、ランボーに迫られた傭兵部隊は一致団結、捕まった人々の救出に向かうのでした。
 派手な殺戮シーンが目立つますが、『最後の戦場』は人間ドラマとして際だっています。
 ランボー自身もどう生きたいのかと問われて、ミャンマー行きに同意しました。ランボーが自他共に、何のために生きるのか問い続けて、その答えをストレートに行動に移している作品なのです。

 あとはラストまで一気に迫力ある戦闘シーンに突入します。今回は傭兵部隊も戦いに参加してているだけに、ランボーの出番が少なくなっています。けれどもランボーの歳を考えたら、ある程度仲間がヘルプするストーリーの方がリアルティーがあるでしょう。

 余談ですが、今回はランボーが、木枯し紋次郎のように見えてなりませんでした。キリスト教支援団の再三の要請を、そっけなく断るところなんぞ「あっしには関わりねえことでござんす」って感じがプンプン臭いましたね。またラストで無言で故郷の家に向かうシーンも臭いましたよ。
 孤独を癒してさすらう旅か! 愛を求めてさまよう旅か!
 頼れるものはただ一つ。己の腕と腰のガン!
 ああ!ランボーよ!一人ぼっちでどこへ行く!何を思うかランボー!
 無宿渡世に怒りを込めて、口の楊枝が、“ひゅぅ~”と鳴る、噂のあいつがランボーだ!
 芥川隆行の名ナレーションが聞こえてきそうな、ラストでした。

 戦い終え、望郷に駆られたランボーの淋しさを滲ませる背中がカッコよすぎ~。もう、ウルウルしました(;_:)

流山の小地蔵