劇場公開日 2006年4月29日

「芸術家としての生き方に乾杯!」RENT/レント talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0芸術家としての生き方に乾杯!

2024年11月14日
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鑑賞方法:DVD/BD

もしも仮に世の中を「持てる者」と「持たざる者」とに二分して考えたと仮定するとレント(家賃)は、「持てる者」が「持たざる者」から一方的に取り立てる「資本家側」の象徴なのかも知れないと思います。

決して富裕とは言えず、否むしろ家賃も満足に支払えず、食べるものにも事欠くような生活が垣間見えても、芸術家(≒ボヘミアン)としての自由な生き方を選びとろうとする彼らにしてみれば、経済合理性(のみ)に価値を見いだす資本の論理とは、そもそも相性が悪いのでしょう。

本作で、性別に関わらず「本当に愛する人」と結婚式を挙げるモーリーンが企画する「ダウンタウンの再開発に反対するライブ」も、その経済合理性に対する反骨そのものなのかも知れません。
(滞納家賃の棒引きをチラつかせなが、抗議ライブを封じ込めようとすることは、正しく、その経済合理性の権化とも言うべきなのか。)

芸術家仲間との死別があり、路上生活に疲れ果てる者もあり、そして芸術家(映像作家)としての生活に見切りをつけての就職のために転居しようとする者など、彼・彼女らの激動の(?)一年間(52万5,600分)を描く本作は、そのまま、彼・彼女らの「生き様」を(いかにも芸術家らしく)ミュージカル仕立てで、少しも飾るところなく浮き彫りにしている点で、またそこに、彼・彼女らを愛(いと)おしむかのように捉えるクリス・コロンバス監督の目線の温かさも感じられる点で、充分な佳作だったと思います。

(追記)
本作は別作品『フェーム』にも一脈通じるかと思います。
同作は、学び舎で芸術家としての一歩を歩み始めた若者の物語。
本作は、実社会の中で「芸術家」としての明日の開花を目指す若者の物語として。
どちらも「若さ」の清々しさを感得できた作品でした。評論子には。

talkie