「現実を知った男の涙は・・・」家の鍵 Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)
現実を知った男の涙は・・・
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障碍者の息子と15年振りに再会し、ベルリンのリハビリ検診の共同生活を通して、父として人として成長し変化する男を見詰めた地味な社会派作品。”現実に向き合う”視点の偽りない制作姿勢は、イタリア映画のひとつの特長である親子の絆をネオレアリズモの手法で描く伝統の、今日的帰結である。ドラマとしては、ベルリンの病院で知り合うシャーロット・ランプリングの存在でストーリーに膨らみを得ている。主人公に障碍者の親の手本の様に思われて気付く、彼女の辿り着いたところに本当のことがあるに違いない。恋人を出産時に亡くした主人公の”愛情の行方”が再び息子に向けられ、淡い期待感と幸福に包まれたかに見えたラスト、自動車運転の邪魔をする息子にキレて現実に戻される。そこで流す涙の意味は何なのか。自己反省だけの涙ではないのかもしれない。ここをフェリーニの「道」のオマージュと見たが、それは失って初めて気づく涙であり、この若い父の涙は、これからのことに対する覚悟のなみだであろう。本当のことは本人にも解らないのかもしれない。
ノルウェーの美しい自然を背景に父と子の旅を描く結末は、男の複雑な涙で締めくくる。心に沁みるイタリア映画らしい作品でした。
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