「退廃的なものに魅かれる心理ってなんなのだろう」ラストデイズ えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
退廃的なものに魅かれる心理ってなんなのだろう
夭折した天才ミュージシャン・カート・コバーンをモデルに、彼がショットガンで自殺するまでを描く。
ガス・ヴァン・サントらしく、余計な科白、説明、演出効果を排除した、情景と役者の演技主体の映像と音楽だけで描ききる。大胆かつ勇気ある映画作りは称賛に値する。
退廃的なものに魅かれる心理ってなんなのだろうと考える。劇中のブレイク(コバーン)の所作はいちいち危うい。椅子に座るだけの動作で数十秒を要し、なおかつ座らず、床にへたり込む。女性ものの下着を身に付け、ショットガン片手に屋敷をうろつき、ワークブーツの靴ひもが通っていないくせに、コーンフレークにミルクの量を細部にまでこだわりながら注ぎ、突然、死んだように寝る。
全世界を熱狂の渦に巻き込んだニルバーナの作品群は、こうした彼自身ののもつ、如何ともしがたい退廃・狂気と社会との「間」を埋めようと試みられた営為の副産物。
その創造をもってしてもなお、彼を社会に生かしむには至らなかった。ただ、それは悲劇なのかといえば、そうとも思えない。
非常に重要なシーンである宅録デモの場面で演奏される曲名は「Birth to Death」ではなく「Death to Birth」。ここに象徴されるように、僕らとは死生観が根底から真逆なのだからこそ、そうやって生きるべくして生きたのであろう。
タイトルもLast Day(最後の日)ではなく、Last Days(末路)。彼は最期に何を視たのだろうか。印象的な演技だった。
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