ダウン・イン・ザ・バレーのレビュー・感想・評価
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人格の破壊性が悲劇に。
不思議なところは主人公ハーレン(エドワード ノートン)の性格だ。
なぜ愛するトーブに向けて銃を発したのだろうか?間違ってかな?いやいやそうじゃないと思う。嫉妬かな?彼女を独占したいためかな?トーブだけが彼と気持ちが通じ合い、分け合うことができたから彼女に一緒に来て欲しかった? カーボーイのように銃を抜く練習をしていたからとっさに感情的になって抜いてしまった?
この咄嗟の衝動が読み取れない。ただ彼自身何か精神障害を抱えているのはわかる。自分の家族から愛されないし、環境への不適応が原因となり、不安が高まったり、強迫的な考えや行動になったりするし、虚言癖があるし。馬主は盗まれたというが彼は借りていいと言われたというが、口八丁のようで、警察が入ってもちょっとしたいざこざのようにかたずけてしまったから、どっちが本当かわからない。彼の虚言癖に振り回されたり、騙されてしまっているのが現実のように感じた。トーブの弟も彼をまるっきり信用しているし。ハーレンのトーブを愛する気持ちは間違いないように見えるけど。こういう役ってエドワードノートンは上手なんだよね。監督もこの役はノートンだと思ったから声をかけたと言っていた。
弟もトーブも規則、厳しさ、DVのなかで育てられ、父親は頑固一徹で自分が正しいと思っている人だから、兄弟は自分自身を自由に泳がせて、感覚的に物事を捉える環境にそだっていなかったからハーレンとの付き合いは情操教育といえるいままでになかった魅力的な教育なんだよね。 彼の発言する言葉を聞いてもわかる。一番好きなシーンでもあるが、トーブがブランコに乗ってハーレンがそれをみながら:
ローニーには何かが必要だ。。。。すべてのことはなにか目的があって造られている。木の枝は切って何か造るため、木のバランスをとるため、ぶらんこになるため。。。トーブがブランコにのっている姿をみて、自分がおもっていたことはあっていたと。。。。本当にこういう言葉は人の心を打つよね。ましてや、つきあっている時、こんなことを言われたらますます好きになるよね。本心だけど、人の気をひくような言葉が上手に使えるんだよね。
そのイマジネーションや感性は自分の家族(厳格なユダ教)にも理解してもらえなかったし、大都会で生きていくのも難しかったが、レイチェルと弟ローニはそれを感じ取ることができたんだよね。
この幸せがいつまで続くかとハーレンがトーブにいうシーンがある。これは、彼には長く続いたしあわせていうものがないんだと思う。自分の素性より人間性のなかに2面性があってトーブを愛するがあまり、そこに潜んでいる自分の破壊性をを感じているからだと思う。
馬までがハーレンの助けようとしてるんだよ。人間よりに馬とこころが通じ合うんだよね。
最後にハーレンの灰をヴァレーに撒くまえに、トーブが弟に、『何も言わないで、思うだけ』というようなことを。それはまさに、ハーレンの心と一緒に灰を風にのせて、ヴァレーを飛んでいるのを感じていたいんだ思った。
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