「世界平和は一人のお爺さんに託されていた。」ハックル 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
世界平和は一人のお爺さんに託されていた。
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久しぶりに観たけれど、面白いな〜。傑作ですね。
しゃっくりが止まらなくなったお爺さんの前を、様々な人達や動物達が通り過ぎる。
それらをしりとりの様に紡いで行きながら、最後は世界の平和等はちょっとしたきっかけで崩れ去る可能性をも示唆する風刺精神に溢れています。
村に住んでいるのは人間だけでは無い。蛇も、蟻も、蜂も、モグラも、蛙も、ナマズも、豚も、家鴨も、その他大勢。
動物も植物も無益な殺し合いはしない。確かに強い物が弱い物を食べる弱肉強食の世界は存在するが、常に均衡は保たれている。
だからこそ人間は安心して食料を確保出来るのだ。しかし、人間が動物社会と決定的に違うモノと言えば、それは感情的な面から発生する《暴力》にほかならない。
普段は穏やかな村に起きている大量殺人の裏側を、殆どセリフ無しで表現する演出(映画のラストに村の女達による歌が2曲あるだけだ。)は素晴らしい。
それを知ってしまった観客は緊張して画面を見つめるだけ…って事も無い。
特に男が観たら実に怖い話しなんだが、それでもお爺さんのしゃっくりが絶えず画面から流れている為か、恐ろしい内容なのにのんびりとした空気が充満しています。
その空気感が一瞬の内に変わり、世界平和が怪しくなるのが、お爺さんのしゃっくりが止まってしまった時なのが物凄い皮肉です。
男達がゲームに興じている場所へ、鳥目線からの俯瞰撮影から映し、“神の目線”に見立て、歴史的に虐げられて来た女性からの「男の横暴は許さないわよ!」…と思わせる。
後にたった一人だけ残される映像は何気ないものの実に怖さ満点です。
(2008年3月29日【シアター】イメージフォーラム/スクリーン1)
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