「生々しく痛切な、実録ドラマの傑作だ。」ヒトラー 最期の12日間 瀬戸口仁さんの映画レビュー(感想・評価)
生々しく痛切な、実録ドラマの傑作だ。
ドイツの歴史家ヨアヒム・フェストによる同名の著作、および、本作では狂言回し的な女性秘書、トラウドゥル・ユンゲの回想録と証言をもとに、ベルリンの地下壕で過ごしたヒトラーの最期を描く。
ヒトラー役はドイツの国民的俳優、ブルーノ・ガンツ(本人はスイス出身)。人種差別や誇大妄想に取りつかれ、最後まで狂気じみていた独裁者を、見事な存在感で演じ切っている。
物語の舞台は地下壕という閉鎖的な空間だが、非常によく練られた脚本で、実に手堅い室内劇としての魅力もある。また、戦火に巻き込まれたベルリン市民にも光を当てている。
第三帝国の終焉が迫る中、ヒトラーをはじめ、子どもたちを毒殺した上で夫婦で自害した宣伝大臣ゲッベルスや、国防軍の軍人やSS(親衛隊)の幹部がそれぞれ選んだ終末の姿を、生々しく痛切なタッチで描き出した、実録ドラマの傑作だ。
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