「どうして女の子って傷つけあうの?」ミーン・ガールズ(2004) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
どうして女の子って傷つけあうの?
主演のリンジー・ローハンは本作と前年の『フォーチュン・クッキー』でティーンのスターに。その後色々あったけど…。
レイチェル・マクアダムスとアマンダ・セイフライドは本作でブレイクし、今や人気女優。
舞台ミュージカル化され(日本でも生田絵梨花主演で公演)、それを基にしたミュージカル・リメイク映画が今年全米で公開され、スマッシュヒット。
今年で公開20年目を迎えた未だ人気の学園コメディ。
昔見た事あると思うんだが、ほとんど覚えておらず。それとも見てなかったか…?
初見のつもりで。
よくあるハリウッドの学園コメディの一つだが、単なる氾濫するお気楽おバカの類いではなく、なかなかテーマやメッセージもしっかりしている。
親の仕事の都合でアフリカで育ち、そしてまた親の仕事の都合でアメリカに越してきたケイディ。
ずっと自宅学習だったが、晴れて高校へ。
そこはどんなサバンナやジャングルよりも危険な世界だった…。
転校生は早速標的に。アフリカ育ちという変わった育ちが拍車をかける。地味な事もあって、冷笑や仲間外れに…。
アフリカの大地で生き生きと育ってきたが、僅か一日でKO…。そんな時、皆から浮いているジャニスとダミアンと仲良くなる。
各々派閥があり、中でも飛び抜けた存在を放っているのが…
女王レジーナと、取り巻きグレッチェンとカレン。通称“プラスティックス”。
美貌と華やかさ、ファッションもゴージャス。皆の憧れであると同時に、その性格の悪さも知れ渡っている。
レジーナとひと悶着あったジャニスはレジーナへの復讐を企てていた。ケイディも一目惚れしたイケメン男子の事でレジーナから先制パンチを受け、計画に加わる。
ひょんな事もあってケイディはプラスティックスの仲間に。仲のいいフリしてぎゃふんと言わせようとするのだが…。
本作は教育者によるノンフィクション原作があるらしいが、そのタイトルが秀逸。
“どうして女の子って傷つけあうの?”。
劇中でも描かれる女子同士の陰口、嫌み、嫌がらせ…。
今ならSNSだろうが、“悪口ノート”なるものも出てきて、そこには嫌いな女子や嘲笑女子、さらには女性教師らの悪口を書き殴り。
勉強やスポーツなんかより、意中の男子や自身のスタイルやファッション、相手を貶める事に必至。
社会の縮図であるスクールカーストの上位者や下位者。
ハリウッドの学園もので本当によく見る。邦画ではこんなに如実ではないが、『桐島、部活やめるってよ。』のような校内ヒエラルキーは存在する。
でもそれを陰湿に描くのではなく、痛快なコメディとして。
レジーナを女王の座から蹴落とし。結構やり方はエグいけど…。
遂にレジーナを陥落。気付けば、ケイディが新女王になっていた。
いい気分!
でもその代わり、大事なものを失っていた。
得意だった数学は落第寸前。意中のイケメンと仲良くなる為に始めたのに、その彼とぎくしゃく…。ジャニスらとの約束もすっぽかし、絶縁…。両親にも心配かけ、例の悪口ノートで大騒動に…!
レジーナに変わって新女王になっていたんじゃない。ただの劣化コピー。
いやそれどころか、レジーナ以上の“ミーン・ガールズ(嫌われ女子)”に…。
思い上がって失敗。
誰かを貶めれば、必ずしっぺ返しが来る。
しっかりと教訓。
では、そこから何を学ぶか。
失敗やいがみ合いはこの年頃の特有。なら、そこから反省し、仲直り出来るのもこの年頃の特有。
腹を割って女子たちの謝罪と許し。それを上手くやったティナ・フェイ先生。
皆が素直になる中、怖くて自信が無くて素直になれないケイディ。
得意だった数学の大会が背中押し。
クライマックスのスピーチがそれを物語る。
このスクールカーストという弱肉強食の世界の中で、自分らしく、皆が皆、キング&クィーン。
リンジー・ローハンのキュートさは言うまでもなく。
レイチェル・マクアダムスやアマンダ・セイフライドら“ダイヤの原石”を振り当て、ジャニスやダミアン、ティナ・フェイ(脚本兼任)や校長先生も好サポート。
普遍的なメッセージや楽しさは色褪せる事なく。
今も愛される所以。