「のめりこめなかった・・・かな。」レオポルド・ブルームへの手紙 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
のめりこめなかった・・・かな。
映画は個々の世界がそれぞれ進行。出所した男スティーヴンはダイナーで働くが、殺人犯とも思えぬくらいに真面目に働く。オフのときには小説を書いているようだ。
レオポルドは生まれる前から罪の深さを感じてしまっていた。大学助教授の父ベンが浮気してるんじゃないかと疑った母親メアリ(シュー)は悲しみから抜け出すため、家に来ていた塗装工と関係を持ち、妊娠してしまったのがレオポルド。しかしベンと娘は交通事故で死亡。そのショッキングな知らせが陣痛を引き起こし彼が産まれたという経緯。
学校では先生から「誰にでもいいから手紙を書け」という課題。友達もできない無口な少年は相手に囚人を選ぶ。スティーヴンは少年が自分に似てると思い、それを正しい方向へ導くために本を書いていたわけだ・・・
罪深い少年レオポルドのストーリーは、実はスティーヴン(ファインズ)の過去そのもの。本当に手紙のやりとりをした少年はいたのか?などと考えると整合性が失われそうにもなってしまうパラドクス。全てスティーヴンの出来事なのだと考えれば納得もできる。
それにしても母親が全ての原因を作ってしまった。ベンと娘の死はその罪とは関係ないものだけに、母親も悲しい人なのだ。「あなたはぼくを殺し、ぼくは奴を殺した」と面会にきたメアリに告げるところで、全てをやり直そうとするスティーヴンの心がわかる。縁を切ってしまうことも彼の優しさの一面なのであろう。
塗装工の男は種なしだったわかったのに、母と息子の関係が修復できないこと。それにトリッキーなサプライズによる効果があまり感じられない(途中で気付いてしまう)こともあって、それほどのめり込めない作品だった・・・それでもダイナーの経営者役のサム・シェパードがなかなか良かった。