春夏秋冬そして春

劇場公開日:

解説

1996年のデビュー以来、人間の痛みと悲しみ、社会への憎悪を独特の映像美と残酷性で描いてきた韓国の異端作家、キム・ギドク。山奥の湖の湖面に佇む小さな寺を舞台に、ひとりの男の人生を5つのエピソードで語る美しく静謐なドラマ。山水画をほうふつとさせる韓国の名勝の国立公園をロケ地に選び、国民的民謡歌手キム・ヨンイムが歌うアリランが、映画を情感豊かに彩る。

2003年製作/102分/韓国
原題または英題:Spring,Summer,Fall,Winter,and Spring
配給:エスピーオー
劇場公開日:2004年10月30日

ストーリー

深い山間の湖に浮かぶ小さな庵。穏やかに年月を過ごす幼子と、彼を見守る老僧(オ・ヨンス)が二人で暮らしている。無邪気な子供が成長し、少年から青年、中年そして壮年期へといたる波瀾に富んだ人生の旅程が、水上の庵の美しい季節のなかに描かれる…。万物が息づく春。森のなかで小さな蛙と蛇、そして魚に小石を結びつけるいたずらにふけりながら、天真爛漫 な笑い声をあげる好奇心旺盛な幼子(キム・ジョンホ)。その姿を見守っていた老僧は、彼が寝ているすきに背中に石を背負わせる。目覚めた子供が泣きながら石をはずしてくれと哀願するや、老僧は予言する。「その一匹でも命がなかったら、一生その石が業となってお前を苦しめるだろう」と。子供が成長し17歳になったとき、同い年の少女(ハ・ヨジン)が養生のために山寺にやって来る。少年僧(ソ・ジェギョン)の胸に少女への熱い想いが湧き上がる。老僧もふたりの恋に気づく。少女が立ち去った後、ますます募る恋の執着から逃れられない少年は、山寺から出奔する…。寺を出奔してから十数年ぶりに、男(キム・ヨンミン)は帰って来る。自分を裏切った妻を殺した殺人犯として。男は紅葉のように真っ赤に燃えたぎる自分の怒りと苦しみに堪えきれず、仏像の前で死のうとする。そんな男を無慈悲に打ちすえる老僧。寺の床一面に経文を書いた老僧は、その一つ一つの文字を彫れと、男に命じる。そうやって心を落ち着かせるのだ、と。捜索にきた刑事に連れ去られて男が寺を去ると、自らの死期を悟った老僧は自分の体に火をつけて、ひとりこの世を去る…。刑務所を出所し、すっかり廃墟となった庵を再訪する男(キム・ギドク)。老僧の遺骨を拾い、氷に仏像を彫り、山寺の中で心身を鍛錬しつつ心を空っぽにして、安らぎを得ようと日々を過ごす。ある日、顔をスカーフで覆った名も知らぬ女性が寺を訪れ、赤子を置いたままひとり寺をあとにする。赤子は母の姿を追い求め、氷の湖上を這っていく。男は体に石臼をくくりつけ、降りしきる雪の中、菩薩像をかかえて山を登る。まるで、幼子の頃の自らの小さな罪を償うかのように。。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0【人生の喜怒哀楽をある男の幼少期から壮年期の姿を通じ湖上の老寺を舞台に描き出す、キム・ギドク監督の哲学的で静的な作品。人間の生と死は輪廻であり、年が経ても自然は変わらずに春夏秋冬を迎えるのである。】

2024年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

<Caution!内容に触れていますが、今作に限っては問題は無いと思います。>

■春
 山奥の湖に浮かぶ寺で暮らす老僧(オ・ヨンス)と幼子。幼子は無邪気な悪戯から魚に石を抱かせて殺め、それを見ていた老僧は彼の寝ている間に石を背負わせ、罪を気づかせようとする。
■夏
 やがて幼子は青年となり寺に静養に来た少女に恋をする。二人は若さ故に、性交を重ねる。その姿を老僧は静かに見ているが、少女に気の病が癒えたのならば、寺を去るように諭す。そして少女が寺を去るや、彼も出奔する。
■秋
 青年(キム・ヨンミン)は、血の付いた刃を持って寺に帰って来る。憤怒の相を浮かべた青年は、妻になった少女の裏切りが許せずに、妻を殺めて逃げて来たのである。
 そんな青年に、老僧は寺の床に般若心経を書き、青年にその字を刃で彫るように命じる。
 刑事が二人来て、般若心経を彫り終えた青年を連れて行くが、青年の表情は穏やかになっている。
■冬
 老僧は死期を悟り、湖面に舟を出し目鼻口に”閉”と書かれた紙を貼り、舟の中に組んだ薪に火を放つ。
 その後、壮年になった男(キム・ギドク)が寺に戻って来る。
 男は、身体の鍛錬を始める。
 凍り付いた湖上を歩いて、緑の絹で顔を覆った女が幼子を抱いて寺にやって来る。そして、女は帰る際に湖上の穴に落ち絶命する。
■再び春
 男は、且つての自分にそっくりな幼子の小僧と過ごしている。

◆感想

・キム・ギドク監督作は数作観て来たが、どれも強烈なインパクトを齎す作品であった。狂気に駆られた妻が、息子の局部を切り取ったり、南北朝鮮の国境沿いに住んでいた漁民が国境を越えてしまった事から数奇な人生を歩んだり。
 どれも、キム・ギドク監督の数奇な人生を彷彿とさせる如き作品で、とても面白く鑑賞したモノである。

・今作は、キム・ギドク監督の比較的初期作品であるが、”生と性と死。人生の喜怒哀楽”を”山奥の古寺を舞台に静的トーンで描いている。
 そこには、哲学的な要素も数々垣間見える。

<今作は、若きキム・ギドク監督の哲学的で静的な面が表に出た作品であると思う。人間の生と死は輪廻であり、年が経ても自然は変わらずに春夏秋冬を迎えるのであるというメッセージも伺える。
 改めて、キム・ギドク監督の制作する作品の幅広さを知った気がする作品でもあると思う。>

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NOBU

5.0キム・ギドク最高傑作

2022年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

美しく宗教性が高く生命の持つ清濁をかように気高く描いた作品を他に知らない。長きにわたる戦禍により山は刈られ畑は痩せた韓国にあってかほどの美しき四季の景色を見せられるとは思わなかった。無常と刹那が流転し大局にあっては人の生き死にや、ましてや人の罪など自然の中にあってはほんの僅かな揺らぎにすぎず、全ての営みが祈りの中に昇華する様が映像の中に描き出される。キム・ギドクと言う作家が何者であろうとも、ここに描き出された作品の美しさと意味に目を曇らせる事は愚者の所業と言えよう。このような高いテーマ性に彩られた一連の作品がもはや見れないと言う事は誠に残念である。

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mark108hello

5.0人生のループ、罪のループ

2021年12月15日
iPhoneアプリから投稿
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redir

5.0キム・ギドクは凄い!と初めて感じた作品

2020年7月6日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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kossy