ピエロの赤い鼻のレビュー・感想・評価
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友情と思いやり
何となく既視感があったのは、同じジャン・ベッケル監督作「クリクリのいた夏」(99)に出演していたジャック・ヴィルレとアンドレ・デュソリレが主役で、しかもキャラクターや関係性も似ていたからかと思います。私も何となくピエロというのが苦手で、まして自分の父親がピエロである息子リュシアン(ダミアン・ジュイユロ)が素直に笑えない気持ちがわかるような気がしました。それを察した父ジャック(ジャック・ヴィルレ)の古くからの親友アンドレ(アンドレ・デュソリレ)が「なぜ、父さんがピエロを演じるのか」を伝えるという構図がいいですね。印象的なのは、穴の上でピエロになったドイツ兵。戦時中の悲劇を描きながら、人間の喜劇的な面も同時に描くというのが今作の最大の魅力のように感じました。メイキングを観るとより一層、今作への愛着を感じましたが、ベッケル監督が述べていた「大事にしていることは、友情と思いやり」というのを聞いて、じーんとしました。まさにそれを詰め込んだ作品だったと思います。
笑いあり涙ありの映画ではあるが...
兵隊ではなく善良な市民2人が、男のプライドに懸けて、いや酒場の女に格好付けたくて、ドイツ軍の鉄道所を爆破するシーンは面白みがある。その前に橋の上から列車にビンを投げ「いたずら」するシーンといい、この映画が戦争映画とはいえコメディ風であることを実感させた。あとはノリを楽しめるかどうかでしょう。
捕まってからは...
・雨の中、泥だらけの穴に落とされた最中に「しょんべん」
・「俺達がやった」と言っても全く信じてもらえず
…といった笑いがある。
食料を与えたり優しく楽しいピエロは、穴に落とされた4人に銃を向ける気になれず、命令に逆らったため射殺される。この辺りからほのぼのとした展開は消えていった。「まだ時間あるのに死んじゃったよ」なんて思いながら後半を観てました。
勇敢な鉄道所の宿直人。自分が爆破したと嘘付けば敵であれ4人を救える…その方が丸く収まるという大きな心。そこには、しっかり宿直してたか反省・後悔といった仕事人としての誇りもあったかもしれない。そして自身の人生を振り返り「大きな仕事」を残して死にたいという決心も感じた。妻はわかっていた点が「大人の対応」とも言えるけど、自分だったら怒っちゃうかな(苦笑)
後に自分たちが居た「穴」を見て振り返り、ピエロを継承することで戦争の重みは理解できなくもないが、スッキリはしませんでしたね。有難み・償いを込めて自分もピエロになったのでしょう。
全体的には一般人が爆破したってのが引っかかって楽しめなかった。好奇心に思えてしまって・・・。
ちなみにDVDにはメイキングがあり、ジャケットもリバーシブル仕様なので、お気に入りの方は中古でも購入する価値があると思います。
憎しみあうことのバカバカしさ。笑いは世界共通
ナチス占領下のフランス。ゲシュタポに追われるレジスタンスのことが気になってしょうがないアンドレとジャック。そんなとき、連合軍がフランスに進軍してくるといったラジオのニュースを聞き、急に愛国心に燃えてきた二人。ドイツ軍に一泡ふかせようとフランス軍が置き忘れていった爆弾を鉄道施設に仕掛けたのだった。ナチス側に死傷者はなかったがフランス人が一人重傷を・・・
二人の爆破犯を捕らえようとナチスは躍起になり、ジャックとアンドレ、そして他に二人の青年が人質にされ、犯人が名乗り出ないと銃殺されるという・・・名乗り出られない二人。死を覚悟した4人であったが、ドイツの番兵がピエロの経験を活かし彼らを和ませてくれたのだ。そして、不遜な態度でその番兵は殺され、重傷のフランス人が4人を救うため自首して銃殺。
罪悪感と罪滅ぼし。一生背負わなければならない十字架を軽くするためにピエロの道を選んだジャック。アンドレはどうなんだ?とも思うが罪滅ぼしできない分だけ彼の苦しみも大変なものだろうと想像できる。銃殺された男の未亡人に対しても真実を告げられなかったけど、夫人は真犯人を知っていた・・・それを誰にも言わずにいるのも相当な苦しみ。彼女もまた愛国心が為した犯罪だったと彼らを咎めないところが偉い!
憎しみあうことのバカバカしさ。笑いは世界共通。どうして憎しみ合わなければならないのかをコミカルな台詞で楽しませてくれた。
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