悪い男のレビュー・感想・評価
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「喪失した恋人の代わりに愛した女を常に見てそばにおくだけの悪い男の愛」
やくざのハンギョ(チョ・ジェヒョン)は、昼下がりの繁華街でベンチに座る女子大生ソナ(ソ・ウォン)に一目ぼれしソナの恋人の目の前でソナに強引にキスする。
ハンギョは、周りから止められ、ソナからツバを吐きかけられ否応なく退散する。しかしハンギョの目つきは尋常ではない。
ハンギョは、ソナを自分の手元におきたくてソナに罠を仕掛ける。ソナは罠にかかり清楚な女子大生がやむなく身体を売ることになる。まさにハンギョは「悪い男」だ。
ハンギョは変わっている。ソナを自分の女として肉体関係を持つのではなく、客とソナの行為をマジックミラー越しに絶えず「見る」ことと、自分の部屋から客待ちをしているソナを「見る」だけだ。
ハンギョはこの映画全編をとおして一言二言しか言葉を発しない。ソナが客をとり行為をマジックミラー越しにただ「見る」その行為の繰り返しだ。一度だけソナに「触れる」シーンがあるだけだ。その他にどのようなドラマが展開されるかというとハンギョのグループをめぐる小競り合いや暴力沙汰だけだ。その影響で一時ハンギョは刑務所に入れられ死刑直前まで追い込まれる。しかし彼を押しとどめたのはソナの悲痛な言葉であった。
ハンギョとソナが海辺にいく場面がある。そこでソナは男女二人が写っている二枚のバラバラになった写真をひろう。ただ二枚の写真には男女の顔の部分が欠如している。その写真をソナは持ち帰り自分の部屋に飾る。
売春宿から脱走をはかり、ハンギョに捨てられたソナは再び同じ海辺にいく。そして砂を手探りしていたら男女の顔が写っている二枚の写真をひろったのだ。以前にひろった二枚の写真が合体する。合体させるとそこに写っていた男の顔はまぎれもなくハンギョであったのだ。
ハンギョは恋人をソナは普通の女子大生、まっとうな人生を喪失した。かけがえのないものを喪失した人間にしか理解できない無力感。
ハンギョは愛しい人を再び喪失したくないから「自分」が肉体関係を持たずただソナを「見る」「そばに置く」ことしかできない。まるで保護者のように。
ソナは顔の部分の写真をひろった直後、写真委写っている女性が着ていた真っ赤なワンピースを買う。そして海辺で佇んでいるとハンギョが横にやってきた。ソナはまるでハンギョの元の彼女の化身になった。ソナはハンギョの保護なしでは生きていけない、化身であるのだから。ハンギョはソナの保護者となり、ソナはハンギョの化身になることによってのみ無力感から解き放たれ再生する。
男女の愛、結びつきは一筋縄ではない。直線だけでなく、曲がりくねったり、逆方向へ戻ったり、憎んだり、恨んだりしながら到達する「悪い男」と一緒にいる愛のかたちもあるのだ。キム・ギドクは倒錯的な愛を描きながらも結びつく二人の男女の愛の姿をしっかりとフィルムの刻み付けたのだ。
うん。悪い男だ。
意味わかんねぇ!動機が狂気であり狂喜!
ねじれた愛
悪い男だよ、あんた
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