劇場公開日 1977年2月5日

「社会派ドラマとアクションが混ざった露骨なKKKモノだが、ビミョーなテイストに....」クランスマン アンディ・ロビンソンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0社会派ドラマとアクションが混ざった露骨なKKKモノだが、ビミョーなテイストに....

2023年10月7日
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スタッフとキャストは可成りの豪華版。

冒頭から、主な登場人物のこの南部の街を構成する顔ぶれ、その人間関係を明らかにしていく過程において、きな臭さを孕んだ緊張感が漂っているのがわかる。

予備知識的に説明しておくと、題名の『クランスマン』(クランズマンが正しい呼び方のようだが)の意味するところは、KKKの構成メンバーであるという事。

KKKとは、「クー・クラックス・クラン」の頭文字と言われており、語源には諸説あるようだが、個人的には、拳銃(リボルバー)のハンマーを後ろに下げる音〜下げ切ってコッキングされる音〜引き金を引いてハンマーが落ちる音、の一連の描写のようにイメージしている。(発射音は無い)
参考までに、オートマチック・ピストルの場合には、初動では上部のスライドを後方に引く動作で最初の2動作が一連に完了するのと、音的にスライド動作と被るので、このようなハッキリと段階的な音的描写とは違ってくるので。
(ハンマー・ストロークも短く、初めからクラックス的)

ハッキリとKKKを呼称して、街を白人優位主義の人種差別主義で支配的に牛耳っておくことに執念を燃やす、町長、白人のみの教会など、基本的に黒人を排除して白人のみの街へと化すべく、活動を日常化させている連中(街の一部勢力)と、そうした連中とは人里な離れた場所で距離を置きつつその思想に異を唱える男性と、両者の間で自体のエスカレートの沈静化に努めて板挟みになる保安官、それぞれの立場による社会派ドラマ的にストーリーの大半は進む。

しかし、テレンス・ヤング監督とリー・マーヴィン氏が主演では、そんな事で最後までおわってしまうハズがない。

案の定、ホントに終盤になって、いよいよKKKの連中の我慢(不満)が限界に達し、例の象徴的な白頭巾装束での集団襲撃を画策し、武力を持ってしても阻止しようとする保安官も巻き込んでの銃撃戦へと発展してしまう。

結末を言ってしまうと、”黒人側暗殺者”と化したO・J・シンプソン以外の主要男性陣はほぼ命を落とすという、なんとも後味の悪い「共倒れ」状態です。

結果的に、幾多の苦難を超えて生き残るのは「最後はやっぱり逞しいのは女性」ということですかね....

雑駁ながら以下に関連事項と、本作公開当時の映画業界観など、

監督は『007』の最初期2作で基盤を築き、『アマゾネス』でも話題をさらったアクション系のベテラン、テレンス・ヤング監督
脚本が社会派ドラマ系のミラード・カウフマン氏と映画監督としても有名なサミュエル・フラー氏
(因みに、製作のウィリアム・D・アレクサンダー氏は黒人男性である。)

俳優陣が主演の男性二人が、
主に無骨な男性アクション系を得意とする『プロフェッショナル』『特攻大作戦』『アバランチエクスプレス』『最前線物語』のリー・マーヴィン氏と、
請われた仕事は断らずの何でも派、二番煎じ(続編映画)御用達な『荒鷲の要塞』『ロンメル軍団を叩け』『エクソシスト2』『戦争のはらわた2』『ワイルド・ギース』のリチャード・バートン氏

女優陣も、
『0011 /罠を張れ』、『007サンダーボール作戦』『ガンマー第3号 宇宙大作戦』のルチアナ・パルッツィに、
『アバランチエクスプレス』『トム・ホーン』のリンダ・エヴァンス

といった、いずれも我が国もそれなりの知名度を有した面々にくわえて、

脇役陣も話題に事欠かない面子で、
NFLのスター選手から映画界入りしたO・J・シンプソンの長編劇映画デビュー作であったり、
ビートルズや、ジョン・レノンによるカヴァー曲「スロウ・ダウン」、「ディジー・ミス・リジー」、「バッド・ボーイ」、「ボニー・モロニー」などで有名な歌手のラリー・ウィリアムズ 、
キャリアの長い『ミネソタ無頼』『太陽の中の対決』等のキャメロン・ミッチェル氏
など、

中々の布陣で、これらを見る限りには大手スタジオの大型アクション作品かと考えるところだが、そういう訳でもない.....

日本劇場公開年が東宝東和による1975年2月辺りだったと思ったが、東宝のフラッグシップ館などでの公開ではなく、中規模劇場での公開にとどまった。
時期的には、カンフー映画とオカルト(ホラー)系映画の余韻が残るものの、ブームは落ち着いてきた頃か。

同年の前半に劇場で観た映画には『ゴールド 』『ドラゴンへの道 』『サブウェイ・パニック 』『ジャガーノート 』『ブルース・リーのグリーン・ホーネット 』『新 おしゃれ泥棒』『コンラック先生』 『ロンゲスト・ヤード 』『タワーリング・インフェルノ 』『ローラーボール 』『フレンチ・コネクション2 』などといった映画が有ったが、残念ながら本作品は劇場での鑑賞候補からは漏れてしまった一本だった。

因みにこの映画、現在パブリックドメインだそうです。

製作者のウィリアム・D・アレクサンダー氏にとっては、ウィリアム・ブラッドフォード・ヒューイ の小説を基にした 『クランズマン』を自身のキャリア最大の450万ドルという巨額の予算を投じたオールスターキャストにより制作されたにもかかわらず、キャリアの上で最も成功が得られなかった作品となってしまったらしく、パブリックドメインもその辺りが関係しているのだかどうだか....

アンディ・ロビンソン