ほえる犬は噛まないのレビュー・感想・評価
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やっぱり、ポン・ジュノ長編デビュー作は何度も見ても面白い!
ポン・ジュノの初長編にあたる本作は日本公開を迎えるまでに3年もの歳月を要した。つまるところ、彼の真の凄さが咀嚼されるまでにはそれだけの熟成、発酵期間が必要だったということになる。なるほど、それもそのはず。この映画はこちらが追いついたと思ったら瞬時に手のひらからすり抜けていく。犬泥棒の追跡劇、女同士の友情、大学講師の悲哀、夫婦間に吹きすさぶ冷たい風など、描かれるエピソードはとにかくジャンルレス。日常生活から浸み出したリアルな描写の一部始終がとにかく効果的に炸裂するのも見どころだ。あと何と言ってもヒロイン役のぺ・ドゥナの「私はここにいます!」と主張するかのようなまっすぐな存在感にはまらずにいられない。彼女が勇気を振り絞る場面に登場する「黄色」もまた鮮烈だ。あれほどの心理描写をアナログで、しかも手応えたっぷりに描けるところも、ポン・ジュノという男が全くもって只者ではないことの証左と言えるだろう。
戦時中は日本も犬を食べてた?
韓国では、昔から犬肉を食べる習慣があり、スタミナ料理として食されてきたが韓国の国会で2024年1月、食用の犬肉を販売することを禁止する法案を可決した。
つまりこの映画が作られたときは韓国では普通に犬の肉を食べていたようだ。
ただ、日本人には肉を食べる習慣がないのである意味、この映画は冒頭からショッキングな映像が流れる。
だから犬に対する考え方から察すると犬を屋上から放り投げて殺すのは平気だったのかも知れない。
ホラーの要素もあるこの映画の中で光っていたのがペ・ドゥナ。
この映画が初主演と言うことだが最初から存在感のある女優さんである。
ドラマや映画をいくつか見たがどの作品でもひきつけられたようにこの作品でもそうである。
管理事務所を解雇されたとき、犬殺しの犯人を追うとき、犬を探す手伝いをしているとき、なによりも犬が食べられそうになったときに助けるときなどどのシーンも心に残るシーンだった。
犬を中心に其れを取り巻く人間模様がたくさん詰められていて凹凸あるストーリーも最後は差し引きゼロの平凡な終わりの印象だった。
それでもつまらなかったと思わせないのは韓国人の犬に対する接し方とペ・ドゥナの演技ではないか?
むかし、新世界で串カツ屋の屋台を引いているおじさんがいてその屋台には犬がつながれていた。
今度、その屋台に行くと犬がいなかったので「おっちゃん、犬、どっか行ったん?」と聞いたら「あんた、今、食べてるやろ」というブラックジョークがあったのを思い出した。
どっちが幸せか?
この映画を見終わってから、監督がポン•ジュノだということを知りました。
のちに「パラサイト」で、アカデミー賞作品賞(2020年)を受賞するポン•ジュ
ノ監督の才能と実力は、「ほえる犬は噛まない」(2000年初長編デビュー)の
時点で、すでに芽吹いていますね。
鼻血や切り干し大根は笑う。笑う。わろーた。\(^^)/
憧れの教授になったものの、人の良いユンジュの気持ちは晴れない。
教授のポストは、2匹の犬の死や飼い主(老婆)の死、ヒョンナムの失職、
浮浪者の逮捕、妻の退職金を使った賄賂など、罪のないものを踏み台に
して得たものだから、心から悦べるはずがない。
権威職についたけれど、秋深まる樹々を寂しく見つめるユンジュ。
一方、当てはないけど、無垢な心のまま木漏れ日の中を歩く仲良し2人。
どっちが幸せか?
こういう、いい映画を見ると
日本映画はもっと勉強しないとダメだな、ということを痛感、ため息。
本当の正義は報われない韓国社会の闇を軽やかに描く
舞台は韓国の巨大なマンションです。そのマンションには管理人オフィスがあり、そこには何人もの管理人たちが仕事をしています。また警備員のおじさんがいるし、小さな売店もある様子です。警備員のおじさんは物置になっている地下室でこっそり鍋料理を作って楽しんでいます。日本のマンションとは随分趣が異なります。
パク・ヒョンナムさんは管理人オフィスで経理や雑用をこなす若い女の子。実家暮らしで、親友は売店の売り子の女の子。悪いやつを捕まえて市民ヒーローになるのに憧れています。
彼女はマンションで発生した連続飼い犬失踪事件に首を突っ込み、1匹の犬の救助には成功しますが、管理人室をクビになってしまいます。管理人室長には彼女の活躍は伝わりません。本当の正義は報われないようです。
本作はパク・ヒョンナムを演じたペ・ドゥナさんのファニーな魅力とポン・ジュノ監督のカラフルな色やモブを使った演出が楽しめます。
マンション住民の若い女性。身重でありながら外で仕事をしています。夫のユンジュは家でゴロゴロしており、無職なのか稼ぎが少ないのか。クルミが好きで晩飯代わりに食べています。殻は夫に割らせます。
彼女は妊娠したというだけの理由で会社をクビになってしまいます。退職金で小さな犬を買い、残りは夫の昇進のために差し出します。
マンションの地下に住み着いた浮浪者の男。捕まえた犬を犬鍋にしようとしたところをパク・ヒョンナムさんに見つかり、暴行を受けた挙げ句、警察に逮捕されてしまいます。おそらく、他の2件の犬失踪事件の罪も被らされるのでしょう。最底辺を生きる者に有無を言わさずすべての罪を被せてしまう構図です。
若い女性や無力な男は浮かばれない、嫌な社会です。
いつも家でゴロゴロしているユンジュは文系大学院卒のエリートです。大学の教授を目指していますが、世渡り下手でなかなかうまくことが運びません。彼は他の住民の飼い犬を2匹殺します。理由は明示されませんが、このマンションは表面上飼い犬禁止になっており、彼なりの正義の執行なのでしょうか。
彼はキレやすい男で、妻とケンカになると手に持っていたハンマーを妻の方へ投げつけたりします。先に教授になったライバルの男が事故死したことを先輩と一緒に笑ったりします。先輩の助言に従い、妻の退職金を大学学長への賄賂にして、無事に後釜の教授に収まります。学長が無理強いしてくる酒も素直に飲み干します。失踪した妻の犬もパク・ヒョンナムさんが見つけてくれ、妻との関係も修復されます。彼の偽物の正義は罰せられません。
弱くズルくキレやすい男には、大学教授としての輝かしい未来が待っています。
この冬からは豚キムチ鍋で
『パラサイト 半地下の家族』(2019)のポン・ジュノ監督の長編デビュー作品。
鑑賞後の作品としての感想を考える以前に、アタマの中が?でいっぱい。
作品冒頭、「医療専門家の立ち会いの元、犬は安全に管理されている」旨の字幕が現れるが、全然そうは見えない。
一匹めのピンドリ(シーズー)は宙吊りにされて思いっきりもがいてるし、二匹めのミニチュア・ピンシャー(?)は本当に投げられてるようにしか見えない。おまけに妻が連れ帰ったトイ・プードルのスンジャは確実にユンジュに蹴られてる。
捌かれる直前の最初の二匹も、作り物にしては精巧すぎ。麻酔をかけられたのだとしたら、つい二週間前、検査入院した身としては、麻酔が醒めるまでの不如意さを思い出すとやっぱり可哀想。
安全の基準、ゆるすぎないか?!
『ほえる犬は噛まない』という作品の邦題も謎。
英訳タイトルからの転訳らしいが、元は英語圏の諺。調べると「怖そうに見えて、実はそれ程でも」という温和な意味から「口先だけで実行力がない」なんて揶揄も見られるが、作中の誰を指してるのか。
原題の直訳に困っての苦肉の異訳なのかも知れないが、その原題こそ、この作品の一番の疑問。
韓国タイトルを直訳すれば、『フランダースの犬』となるらしい。
見れば分かるが、カラオケのシーンやエンディングのアレンジ・ソングからも原作童話ではなく、日本のTVアニメに依拠していることは明らか。
「子供のころ、よく見ていた」という監督(1969年生まれ)のインタビューも存在するそうだが、韓国で日本文化が解禁され始めたのって2000年前後の筈なのに、一体どうやって?!
同じ疑問は、今年になってから拝見したキム・ジウン監督の『反則王』(2001 アニメ版『タイガーマスク』へのオマージュが読み取れる)でも。日本の電波届いてた?!
地下室のシーンが多いからか、『パラサイト 半地下の家族』のプロトタイプのようにも感じる本作。
何気ない日常に潜む落とし穴に嵌まってゆく庶民に視点を向けたことも共通するが、酸鼻な結末で笑えない喜劇に仕上げた『パラサイト』に比べると、騒動の張本人だったユンジュへの指弾ではなく、彼の改心と贖罪を期待させて物語の幕を引く本作の方がはるかに救いを感じ、後味の悪さも残らない。
ヒーロー願望を抱きつつも純朴な心を失わないヒョンナムを自然体で演じたペ・ドゥナの魅力も作品の救いのひとつ。素朴な笑顔と真っ直ぐな眼差しに心が洗われる。
ライトテイストのジャズ(一部ジャズロックも)も小気味よい。
2002年日韓ワールドカップでの韓国の犬食文化批判を風刺したともとれる本作は、愛犬家にはショッキングな表現だらけ(犬へのプチ虐待も風刺の一環だとしたら悪趣味過ぎるが、冒頭の字幕すらジョークなのかも)。
だが、日本でもルイス・フロイスや開国時の欧米人の文献に見られるなど、明治政府から禁止されるまで犬食の習慣は普通だったといわれる。
お隣の犬食文化が国内外から激しく非難されたのは、より苦しませて殺した方が滋養になるという残酷な迷信と、実際に食用もしくはそのための転売目的でペットの犬が盗まれる事件が後を絶たなかったことにもよるとか。
その韓国でも、ようやく今年から犬食の全面禁止が法制化されたそう(2024年1月9日、可決成立)。
星3.5くらいあげたいが、動物虐待が疑われる分、減点。
BS松竹東急で拝見。
ほかのポン・ジュノ監督作品も吹き替えでなく字幕版で観たかった。
監督の根幹は変わらない
韓国映画でブラックコメディのおもしろいのがある、と
話題になってたのはずいぶん昔になってしまった。
気になってたもののずっとタイミングを逃してきた作品。
その間パラサイトでアカデミーとカンヌを受賞するのだが
いまこの作品を見ると
パラサイトに通じるものが確実にあり、
監督の根幹は揺らいでないのだと思える。
学歴は良いのに上にいけない、
貧富の構造があり、富める者をうらやむが
富めると思ってたものにも事情があったり、
はたまた陰惨で不穏な空気は常につきまとってるのに
背中合わせにシュールな笑いの空気も
同居している。
家族関係はいびつなようでもある。
しかし結びつきは固い。
処女長編作ということで若干散漫にも思えるけれども
ここに原点があると思うと非常に面白い。
とはいえ、持ち味が誰にでも好かれるものではないので
見る人を選ぶきらいはある。
それに犬好きとしては辛い場面もあり
そういったしんどさは否めない。
犬食の文化のある韓国だから生まれた作品。
でも興味のある方はぜひ一度は観てみてほしい一本だ。
犬を食べようとする衝撃で始まる
ペ・ドゥナが好きだからー!
過去数回鑑賞
監督と脚本は『グエムル 漢江の怪物』『パラサイト 半地下の家族』のポン•ジュノ
ポンジュノ監督の長編映画初作品
犬を飼うことが禁止されている団地で犬の鳴き声が聞こえる
規則を破り犬を飼う住人がいるのだ
大学の非常勤講師はそれが許せなくて犬をこっそり盗み殺そうとしたが殺せず地下室の家具に閉じ込めてしまう
飼い主の少女から犬探しの相談をうけたペ・ドゥナ演じる団地の管理事務所職員は少女の代わりに迷い犬を探しているというポスターをあちこちに貼った
そんなある日に双眼鏡で団地を監視していると黒い小犬を屋上から落とす大学の非常勤講師を目撃してしまう
なんやかんやで非常勤講師は妻が飼い始めた犬を散歩中にはぐれてしまい管理事務所経理と共に探すハメに
犬が好きで好きでたまらない人にはおすすめできない
犬死にとかお犬様を蔑称として使うなんて許さないと日頃お怒りの人にもこの作品はおすすめできない
犬を虐待する惨いシーンが多い
犬鍋には卒倒してしまい最悪嫌韓になるかもしれない
コメディーならばと気軽に観ない方が良い
現代劇で犬食文化を扱えるのは韓国映画ならでは
邦画でも『花よりもなほ』で貧乏長屋の人々が犬鍋を食べていたけどあれ江戸時代を舞台にした時代劇だし
犬食は野蛮だから懲らしめようという考えは西洋人の感覚であり日本人が加担してはいけないしむしろそういう独善的な考えの方が野蛮
映画comによると原題は『Barking Dogs Never Bite』だがそれは間違いで韓国語を直訳すると『フランダースの犬』が本当の原題らしい
なぜそのタイトルにしたのかポン・ジュノ監督の説明でもよくわからない
監督が子供の頃に観た日本のアニメ『フランダースの犬』とこの映画の内容にどんな関連性があるのか
犬が数匹ほど登場し大学の非常勤講師がカラオケで『フランダースの犬』の主題歌を歌うのだが釈然としない
ダリほどちんぷんかんぷんではないが見た目に似合わず奥深いクリエイターだなと
2000年の作品
ペ・ドゥナの出世作
この作品でペ・ドゥナの存在を知る
当時20歳くらいの若手
初鑑賞はタイトルにも惹かれたがほぼジャッケットのペ・ドゥナの表情だけで鑑賞することを決めた
彼女に一目惚れしたのだ
ペ・ドゥナの表情を見ればコメディーかそうじゃないかわかる
他の韓国の役者とは一線を画す強烈な個性を放つ名優それがペ・ドゥナ
団地の廊下や階段で追いかけっこする赤い非常勤講師と黄色いペ・ドゥナが印象的
追いかけるペ・ドゥナが住人の開いた扉に衝突するという全員集合前半のコントでよく見た志村やいかりやみたいなシーンは好き
さらに管理事務所で鼻の穴に紙を詰めてるペ・ドゥナ大好物
非常勤講師に犬を渡すときの笑顔がとても可愛い
無闇に唾を吐くババアは印象的
ペ・ドゥナ演じるヒョンナムが慕うデブの姉貴分がよく着ているTシャツに大きくデザインされた数字の「5」も印象的
まるでストロンガー城茂TシャツのSのようだ
ポン・ジュノ団地の中には、シュールで、愚かで、愛さずにはいられない人々が住んでいる
ポン・ジュノ2000年の長編監督デビュー作。
約20年後、カンヌや米アカデミーを制す世界的名匠になろうとは、この時誰が思っただろうか。
だって本作を見たら、異色の監督が現れたと思わずにいられない。
本人も自分は変わってるからヘンな映画ばかり撮る…と、何かのインタビューで言っていた。
でも、全く理解不能の“ヘン”には非ず。後の『パラサイト』にも通じる片鱗はこの頃から。
巨大団地内で頻発する飼い犬失踪事件。
それを二つの視点、シュールな人間模様の中に描いていく。
団地の管理事務所で経理をしているヒョンナム。冴えない性格で、駄菓子屋を営む友人とボケ~ッとTVを見ながら、ニュースで取り上げられる一般人が活躍して強盗を捕まえるような“ヒーロー”になる事に憧れている。
そんなある日、団地に住む女の子から居なくなった飼い犬を探して欲しいと頼まれる。
真面目で正義感ある性格。団地中に貼り紙して懸命に探す…。
その犯人。
団地の住人、ユンジュ。
大学教授のポストを狙っているが、それには学長への多額の賄賂が必要で、そんな金はナシ。家では妊娠中の妻の尻に敷かれ、彼もまた冴えず、うだつが上がらず…。
その日も電話で働き口に繋がらず、意気消沈。おまけに、何処からかうるさい犬の鳴き声。
彼の中の何かが壊れた。
たまたま見つけた子犬(少女の飼い犬)を団地の地下室に隠す…。
それが団地を揺るがす(?)大(珍?)事件の始まり…。
この両者、ニアミスが続く。
ユンジュが別の子犬を屋上から投げ落とす。それを見ていたヒョンナム。団地内を猛ダッシュで、背中を目前に捉え、捕まえるまで後一歩!…の所で、ドアが突然開いて…。
お互い、各々の立場は知らない。ある時、ひょんなきっかけで知り合う。ユンジュはヒョンナムが子犬を探していると知るが、ヒョンナムはユンジュがその犯人とは知らぬまま…。
社会の縮図とでも言うべき団地。
様々な人間模様が蠢く。
冴えない仕事にうんざり。
仕事にあり就けず、家での立場も散々。
屋上で日干し大根を作る老女。
地下室では…
ユンジュが隠した子犬を見つけ、それを鍋のメインディッシュにしようとする老警備員。
いつの間にかこの団地の何処かに住み着き、やはり子犬を見つけ食べようとする浮浪者。
犬を食べるなんて残酷だが、ある世代では普通に食べていた事あったとか。私もリアルに高齢者からそんな話を聞いた事がある。
犬が虐げられる描写もあり、犬好きにはキツイかも…。
妻にこき使われ、さらに妻が勝手に子犬まで飼う。
生活は厳しく、こちらは金の工面に苦労しているのに、犬だと!?
遂に不満が爆発。
しかしある時妻の真意を知る。妊娠を理由に仕事を解雇。退職金から唯一の自分へのご褒美として飼った子犬。退職金の残りは、夫の働き口の為に当てようとしていた。
イライラさせる妻と思いきや、実は内助の功。
そんな妻が飼った子犬を、ユンジュは散歩中に失踪させてしまう。
飼い犬を失踪させていたユンジュは今度は自分が犬を探す立場に。
奇しくもそれに協力するのが、ヒョンナム。
皮肉と言うか、風刺たっぷりと言うか…。
ペ・ドゥナが可愛い。
本作で注目され、ドラマやコメディに変幻自在。その後もポン・ジュノ作品やソン・ガンホとの共演も多く、韓国を代表する女優に。
活躍は韓国内に留まらず、日本映画やハリウッド映画にも。
彼女の活躍はこの団地の子犬失踪事件から始まった…!
ユンジュの妻の犬は見つかった。でも、ただ良かった…には終われない。彼はそれ以前の子犬失踪事件の犯人である。
遂にヒョンナムがそれを知る時が。あの時と同じ“背中”。
警察に逮捕されるとか思ってたとは違うオチに意表付かれた。
その後の二人の明暗も。
ユンジュは金が工面出来、大学教授にあり就いたが…、何故か虚しい。
ヒョンナムは本来の経理の仕事そっちのけで子犬探しばかりして、解雇。人や社会の表裏をこの団地で目の当たりにしたが…、そこからの成長と新たな出発へ晴れ晴れと。友人と行く林の中の散歩の光が美しい。
ポン・ジュノが見つめる人間への変わった眼差し。
愚かで、滑稽で、哀れでもある。
でもそんな中にも人間への愛も滲み出る。
貧困層が閉じ込められたような団地は、それこそ“半地下”の原型だ。
登場人物の言動、物語の展開もこちらが思ってるとは別の方向へ行く。
ポン・ジュノはデビュー作の頃から“異才”だった。
ポンジュノ監督の洒落た演出と音楽堪能
おしゃれで自己主張つよいフリージャズのオープニングからフリージャズで人が走る走る団地のチェース
主人公の男がカラオケで歌うフランダースの犬、ラストのカッコいい楽曲
2003年バブル時代に建設ラッシュでいい加減に建てられたマンション群、マンションいうても団地だな。ボイラーキムの都市伝説。この時すでに格差社会は広がるばかり。韓国は決まりを守らない国だ、というセリフ。犬を飼ってはいけないのに迷い犬の貼り紙貼れる。
なにはなくとも、頼れる人間関係の暖かさこれがポンジュノ監督作品らしさを醸しだす。
ヒロインと、お友達、勇気の証である車のサイドミラー
ヌナと呼べと迫るくるみ好きな献身的な妻
黄色いレインコートの応援団
電車で紙を配る困窮者の母親
貧困と、ルールを守らず肥え肥大していく権力者と富裕層
それでも、みんな少しの楽しみ、親しい人との関係を紡いで生きていくのだ
赤と黄色
他人の飼っている犬を食わない理由を考えれば、法律、倫理、文化、風習、文明などとさまざまな観点から鯨や牛との違いも含め、何が彼らに欠落していて、赦される行いとの違いを見ることができる。しかし、考えたくもないこともある。
反転させて犬を探させる立場に追い込むのは監督らしさも感じる。あれだけのことをして裁かないのもらしさかな。トイレットペーパーは回収したのか?余罪でもこの男を立件したいところ。
人間は、平等じゃないこと。
人は見た目が10割。賄賂、当たり前。弱者(ここでは妊婦、若い女性)は、リストラ当たり前。浮浪者、犯人で(余罪も)当たり前。そんな不平等が、当たり前。そんな世の中を描いた作品。本当の平等って、あるのかしら。
日常に潜む狂気
マンションに響く犬の鳴き声を疎ましく思い取った行動をきっかけに翻弄される大学の非常勤講師ユンジュ(イ・ソンジェ)、正義感ゆえ騒動に巻き込まれていく女性ヒョンナム(ペ・ドゥナ)、警備員の男、文房具店店員、ホームレスの男。
ポン・ジュノ監督が描く彼らの生々しい狂気とおかしみ、ヒョンナムの優しさと愛らしさに引き込まれた。
BS-12を録画にて鑑賞 (字幕版)
シュールリアリズムってやつですかね。最大限に説明を減らして見せると...
マンションで犬を飼わない方が良い理由
ポン・ジュノ長編デビュー作。
とあるマンションで起きる犬の連続失踪事件。
教授を目指すユンジュとその妻、マンションの管理事務所で働くヒョンナム、マンションの警備員、犬が唯一の家族であるお婆さん。
様々な人間のそれぞれのドラマが、一つのマンションで繰り広げられる。
可愛らしいパッケージにワンコ映画、そんなものに釣られてはいけません。
そもそも犬好きにはあまり勧められない。
最悪の(褒めてます)ワンちゃんダークコメディ。
この頃からパラサイトっぽさもあって、韓国の階層社会をマンションで表すのは流石。
上から下へ、下から上へ。
左から右へ、右から左へ。
ユンジュの赤い服とヒョンナムの黄色いパーカーの追いかけっこだったり、韓国映画らしからぬお洒落な音楽だったり、何かと芸術的。
鼻血や黄色のレインコート、脱げる靴や後ろ姿など、繰り返される事物は何かのメタファーのようだけど、何か分からず…
結局ストーリーも、説明しろと言われると難しい。
だけど面白い。理由は分からないけど面白い。
犬を誘拐して殺した奴が犬探しとかいう皮肉。
1番笑ったのが、「屋上の切干大根食べておくれ」。
まあ、観てみてください。
エンドロールもなかなか好き。
途中で強奪した、車のミラーをまだ持ってて、普通に鏡として使っているし、前述のお洒落な音楽が流れてたかと思ったら、急にロックっぽい音楽になるし。
本作を語る上で避けて通れないのが、ペ・ドゥナの可愛さ。
フード被ってるとことか、犬引き渡す時の満面の笑みとか。
これはガチ恋勢が現れるのも無理はない。可愛すぎる。
多分、ペ・ドゥナの可愛さもこの作品の重要な要素の一つなんでしょうな。
あり得なさそうであり得そうなそんなお話。
決して癒されるとか心温まる話ではないけど、定期的に観たい映画だった。
もう出来上がってる
BS12でリアタイ視聴。前の週に殺人の追憶も放送してたのに、見逃した! 今回はちゃんと見られて良かったー。
なんというか、設定が違うだけで、「パラサイト」の香りがする。主人公がおっとりして要領が悪いとか、予想外の展開になるとか、ブラックなところとか、けっこう似てる。すでに出来上がっているのね。
小型犬じゃ食べるところが少ないと思うけど、スズメやカエルを食べることもあるし、好きな人にはおいしいのかな。いろいろ風刺や皮肉をこめてるらしいことは、うっすらわかる。おもしろかった。
歪んでしまった韓国庶民の日常。ストレス社会なんですね。自殺率も高い...
変わったコメディ映画だなぁ(褒め言葉)
『パラサイト 半地下の家族』でアカデミー賞を受賞した韓国のポン・ジュノ監督の長編デビュー作。『パラサイト』でポン・ジュノ監督にハマり、『グエムル』『母なる証明』『スノーピアサー』『殺人の追憶』に次いでの鑑賞です。
どういう映画かという事前知識はほとんどありませんでしたが、熱心な映画ファンとしても有名なライムスター宇多丸さんが他のポン・ジュノ作品をレビューした時に本作についても触れ、「よくできているんだけど、とにかく変なコメディ映画」と評していたのは聞いていました。
結論、確かに変なコメディ映画だった!!!
間違いなく面白いし、ポン・ジュノ監督の特有の細やかな映像演出や細部の伏線が光っており、「ポン・ジュノぽい」映画でした。『母なる証明』でもあった「ドアミラーへのドロップキック」とか、後の作品にも繋がる部分もあって、ポン・ジュノ監督好きならぜひ観てほしい作品です。ただ、動物に対する暴力描写が作中に何度か登場します。動物虐待シーンが苦手な人はご注意ください。
・・・・・・・・・・・
大学の非常勤講師として働くユンジュ(イ・ソンジェ)は、中流階級向けの小さなアパートに住み、妊娠中の妻の給料で何とか生活するうだつの上がらない男だった。ユンジュは何とか大学教授になろうとしていたが、人付き合いの苦手な彼はなかなか教授の推薦を貰うことができず、根回しの上手い後輩に先を越される始末。そんな中、住んでいるアパートで頻繁に犬の鳴き声がすることに苛ついたユンジュは、アパートの住民がこっそり飼っていた犬を地下室に閉じ込めてしまうのだが…
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ペット禁止のはずのアパートなのに犬の鳴き声が聞こえる。妻の尻に敷かれるうだつの上がらない男が、日頃の鬱憤が溜まっていたこともあり、たまたま見掛けた犬を地下室に閉じ込めてしまう。なかなか突飛な展開ですが、似たような経験がある方ならば気持ちは分かると思います。イライラしている時に聞こえる音は神経を逆撫でされるような感覚に陥りますよね。
大学教授になりたい冴えない男のユンジュと同時並行で、アパートの管理会社に勤めている正義感の強い女性ヒョンナムのストーリーが語られます。アパートで連続する飼い犬の失踪事件を追うヒョンナムも、ユンジュと同じようなおっちょこちょいで仕事が苦手なタイプの人間であり、後半では二人が邂逅して一緒に犬の捜索を行うという奇妙な展開に発展します。時々バレそうになったりして「危ない~!!バレる~!!」って感じで面白いですよね。
ポン・ジュノ監督は『パラサイト』では住宅の高低差で、『スノーピアサー』では列車の車両によって貧富の格差を表現していましたが、本作でも「アパートの階数」で登場人物の立場や格差を上手く表現していたと思います。『パラサイト』と同様に地下には貧しく獣のような生活をする人間がいましたし。
タイトルの「ほえる犬は噛まない」っていうのはかなり意味深な言葉ですが、最後まで観れば何となく意味が理解できますね。元々は"A barking dog seldom bites."というアメリカのことわざで、「危険に見える人ほど実際は脅威ではない」みたいな意味です。アパートで連続する飼い犬の失踪事件はそれぞれ別の人物が犯人なのですが、どう考えても一番の凶悪な犯人は主人公のユンジュで、地下のホームレスはそんなに悪くないですよね。実際は犬殺してないし。しかし最終的にはユンジュの犯行はバレずにちゃっかり大学教授になりますし、ホームレスは全ての飼い犬誘拐事件の犯人として逮捕されます。一番悪いことをしていそうなイメージの地下に住むホームレスは実際は全然悪くない。まさに「ほえる犬は噛まない」ですよね。
全てのポン・ジュノ作品に通じる「社会格差」というテーマが長編デビュー作である本作からも感じ取ることができる。これは本当に素晴らしいですね。『パラサイト』などを観てポン・ジュノ監督の作品に魅了された方は必見の一作でした。オススメです!!
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