アララトの聖母のレビュー・感想・評価
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歴史修正主義がここにも
1915年のアルメニア人虐殺を認めようとしないトルコ政府。今の日本の風潮が、「南京大虐殺を認めない」方向に動いていることとダブらせてしまった。真実をどこまで追究するのか、映画の中で詩的許容範囲はどこまで通用するのか、美術史家アニの心もよくわかる。「ヴァンからはアララト山は見えない」ことが象徴していた。
途中からはカナダでの撮影風景と、アルメニア青年ラフィが税関で説明する場面が中心となる。テロリストの息子として悩みだして、画家アーシャル・ゴーキーの姿と父の姿をオーバーラップし、一人で故郷を撮り続ける。俳優との会話で「ヒトラーがユダヤ人を虐殺する際に、誰がアルメニア人虐殺を覚えている?と言った」という台詞が妙に生々しく、数少ない証言にも心を痛めてしまいます。
劇中劇の手法で真実を追究しようとする映像によってワンクッション置いて、史実や民族の諍いを考えてみようという気にさせてくれる。それでも数カットの残虐シーンが脳裏に刻み込まれ、色んなことを想像してしまいました。
主人公ラフィと義理の妹シリアが近親相姦しているというエピソードがなければ、もっといい映画になったのかもしれない。
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