クジラの島の少女のレビュー・感想・評価
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伝統と男子偏重の間で
ニュージーランドの海辺の美しく小さい村。族長の家計でマオリの伝統を重んじる祖父コロは息子の元に生まれる男子が予言者になると信じていたが、出産時に母親と双子の男児は死亡、残されたのは女児パイケアだけだった。女子は族長になることは出来ない。族長になる気が亡く海外に旅立った息子に見切りをつけ、コロは村にいる12歳の男子たちの中から跡継ぎを選ぼうとするが、男子と同じように伝統を身につけようとするパイケアに祖父は伝統を汚すな、と辛く当たる。それでも祖父を慕うパイケアが痛ましい。
日本でもいまだに女系天皇を認めない、女性の首相を輩出していない、男女の賃金格差が大きいなと男尊女卑の激しい国だ。ニュージーランドは世界で最初に女性選挙権を認め、女性首相を3人輩出するなどかなり男女平等が進んではいるが、それでもこういった伝統の中にある男子偏重に縛られていることがわかる。それでも族長の血筋が自分で途絶えてしまったのは誰のせいでもないと学芸会で涙を流しながらもスピーチする主人公パイケアが優しく美しい。リーダーの器とはこういう物なのだ。
伝統とはそもそも何のために守るべきなのか、自分を慕う優しい孫を傷つけてまで固持すべき習慣や慣習はあるのか。
未だに女系天皇も夫婦別も認めない日本こそこれを見るべきだ。
Hakaは地響き Hakaは海鳴り 生命をもたらすものに幸あれ
2024年の1月のことだ、
ニュージーランドの国会議事堂で、最年少の国会議員、マオリ族の21歳!ハナ・ラフィティ・マイピ・クラークが、議会初登壇の日に強烈なハカ=Hakaを披露した。
そのYouTubeをご存じだろうか。
白いスーツに真赤なシャツ。そして褐色の肌に輝く黒髪。
とんでもない迫力に押されて、僕はその動画を擦り切れるほどに観た。
あれは
「海の彼方からやって来た
我が民マオリの歴史を誇ろう」
というHakaの内容だった。
検索してみたら2025年の今年の彼女のHakaも凄いし!(笑)
この動画も映画と合わせてぜひ見るべき。
今回、配信のお薦めで、中身も知らずに覗いてみた本作だったが、いい目っけもんをした。
「クジラの島の少女」、
原題は 「Whale Rider」。
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かつてマオリも、アボリジニも、そして北米のネイティブたちも、
白人政府による強制隔離と民族同化政策の嵐で、彼らの言葉と伝統文化が瀕死の状態にまで追いやられた歴史がある。
(⇒欧米文化の授与、すなわち母語を捨てさせて英語を使わせ、祖霊信仰を否定してキリスト教を信じさせること。親から引き離して子供を白人コミュニティで育てること。
それが侵略白人に対する“原住民ら”の抵抗心を骨抜きにし、“野蛮人”を幸せにする道だと植民地政府は考えたわけだ)。
劇中、働かずに酒浸りになってしまった若者たちの姿や、観光客相手のお土産品作りしかやることのない落ちぶれた姿が、映画にはほのめかされている。
死にかかったクジラに自分たちを重ね、
精霊パイケアの力を受けて、マオリの復活を祈念するための映画なのだろう。
しかし今やニュージーランドは、国会議員の50%が女性で占められるようになった。3年前には女性議員が過半数を超えた世界で6番目の国となった。
そしてついに外務大臣もマオリの女性だ。
男系の男児の跡継ぎしか求めない特殊な生き方をするのは人間だけ。人間以外の生きものたちは、そんな不自然な生き方はしない。
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【メモ】
僕の母が待望の初子として産まれたとき、おじいちゃんは『女か』とだけ言って部屋を出て行ってしまったのだそうだ。
だれもしらないはずのその一言なのに、祖母は母に、そして母は僕に「この言葉」を伝えた。
そんなことを口にしてしまう必要があったのだろうか。
でもどうしても積年の思いを吐き出して腹いせをしたい。またたとえどれだけ年月が経とうとも収まらぬ怒りを表したい必然が、彼女 =僕の祖母にはあったのだと思う。
祖母は母に伝え、母は僕に打ち明けたわけだ。
祖母と母の実家は、紀伊半島の南端。クジラの港の 隣町だ。
映画を観ながらそれを思い出した。
最年少でオスカーノミネートを確認したかった。まあ、なるほどね(笑)...
クジラに乗った少女
ニュージーランドの先住民マオリ族の族長継承問題、族長の跡を継ぐ者は男子とされていた。マオリ族に限らず古代より男性優位の風潮は世界中の歴史に深く刻まれている。
族長は孫娘を嫌うわけではないのだが伝統だから致し方ない、まして閉鎖的な村社会では尚更でしょう、そんな祖父と一家の葛藤の有様を主軸に、孫娘のパイケアが起こした奇跡により初めて女性の族長が誕生するまでを延々と描いています。
別にパイケアは族長になりたかったわけではないでしょう、族長の家系でなく普通の子であればよかったのです、母はパイケアの出産時に死亡、父は村を捨て海外へ、親代わりに育てられた祖父に報いたくともかなわぬ宿命、幼少期からお荷物扱いを受けた不幸な少女の物語なので観ていて楽しくはありません、伝統なんて糞くらえという心境です。
英国は日の沈まない国。新西蘭 濠太剌利 加奈陀 は英連邦
先ずは、ニュージーランドは『白豪主義』を取っていた英連邦の一国である。
また、マウイ族から見て、英連邦がどんな国であったかを知って、二つの民族の歴史を知って置くべきだ。それを踏まえて、この映画は見るべきだし、『白豪主義』は、日本や中国に対する『黄禍論』と同化して、第二次世界大戦戦の後暫くの間、威勢が続いていた事も理解しておくべきだ。ラグビー人気で、オーストラリアやニュージーランドがマウイ族に対して敬意を表し、軟化政策を取っている事も確かだろうが、一方で強引な同化政策は、今に始まったことではない。同じ英連邦のカナダでも、過去における同化政策で、過去の人達が少数民族にとった差別的行為を、ローマ教皇が代わりに謝罪をしている。だから、男女の問題と言うよりも、民族間の問題としてこの映画は見るべきである。
この映画の演出家は充分にそれを分かって、作品を作っていると思うので評価したい。良い映画だ。
途中までは見るに堪えない
前半から、もうエンディングギリギリまで、「これ20年前の映画やけど、今やったら製作も上映もできんのちゃうかぁ~?」と思うくらい女性蔑視、女性差別、そしてモラルハラスメントのシーンが多く、男性である自分でさえも気分が悪くなるほどだった。
しかし最後の最後のシーンで、それが杞憂である事が分かる。
そして現代でも、いや、現代だからこそ理解できる「女性の強さ、リーダーシップ」と言うものが上手く表現されているように思う。
かつて、男性より下に見られ虐げられていた時代を耐え抜き、対等、時にはポジション的に上に立つ時もある女性の姿。
その成長過程を、この映画の幼いヒロインを通して観る事が出来た。
(まるで人間の歴史みたく)
ただ、こんな風に古い風習を維持し続ける事こそが、自分の使命、と思い込んでる頑固オヤジは、地球上の未開の地域にはまだいるんやろうなぁ~、という思いも一方である。
この映画の舞台も、そんな未開の地域の割に、登場人物たちは聞きやすい英語を話していた。
あれは、ニュージーランドのなのね。
前述の通り、もう20年も前の映画だが、今でも十分鑑賞に堪えうる内容。
テレビで放送があったら、再度観てみたい。
(多分機会は少ないだろう。その頃には女性差別よりも、LGBTの問題の方が大きくなっていることだろう)
いきなりオスカーにノミネートされた感
マオリ族の間に生まれた少女の物語
マオリ族の子孫として生まれた少女が苦悩と葛藤を描いた姿に涙が出そうでした。
特に最後の主人公とその祖父と絆がやっと生まれたと思いました。(何故なら、前半は仲が悪かったのに、最後に海で溺れ病院で目を覚ましたとき絆が出たと思います。)
誰のせいでもない
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