「目に焼き付く映画。」ヴェルクマイスター・ハーモニー あま・おとさんの映画レビュー(感想・評価)
目に焼き付く映画。
映像が目に焼き付いて印象に残った。丁寧につくられていると思う。観る気がありさえすれば細かい所まで十二分に答えてくれる映画だろうと思った。
長すぎる?描写は慣れてきたら面白くなってきた。いやでもよく観察し印象に残る。そして強調するのには実はそれなりの意味があると段々気がついた
クジラは、ラストではテーマパークの大きな作り物のようにしかみえない。未知のものへの恐怖、そして踊らされるということは、所詮はそんなものらしい。
しかし暴動者たちの視点、こちらはなかなかシリアスで厄介だ。彼らがみているものは、人間はすぐに枯れて消滅する≪全く無意味な存在≫だということ。彼らはその事実の前に抵抗できず、うなだれる。絶望する。そして彼らにとってはその時、全てが無意味となる。生きることにかじりつくための病院なんぞは疎ましいもの、絶対的に不要なもの。絶望と、それゆえの怒り。
ヤノーシュは心身の逃げ場を失ってしまった。酒場で仲間に説いて楽しんだ幸福な世界観は消えてしまったらしい。
なんとか試みた物理的逃亡も、別の形の権力により阻止された。
叔父の温もりだけが、微かな救いとして残る。ここでふたりで同じ方向に向かって歩いた、あの長い場面が思い出された。
ストーリーは小説から来ているのだろうけれど、月並みに表現されていたらこんなにインパクトを持てなかった。
なかなかショッキングな世界だった。
やはり凄い監督さんなのだろうと思った。
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