フォロウィングのレビュー・感想・評価
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練られまくった構成をじっくり味わう作品
「どこまで観客はついてこれるのか」「どこまで破綻なく伝えられるか」そんな実験してる気がしてならなかった。 実際、物語が破綻しないギリギリの設定だと思う。主要な人物は3人で、これ以上登場人物が増えると関係性が複雑になって観客はギブアップするかもしれない(私だったら早々にリタイアしそう)。さらに場所も限定的で基本は会話劇。余計な装飾が無い分、プロットの複雑さになんとかついていけた。 まずそのバランス感覚ってすごい。 ただ余計な部分が無いから、監督の頭の中をそのまま映像化したような、やや無味乾燥な感じではある。映像作品として楽しむというより、練られまくった構成をじっくり噛みしめて味わう作品だなと思う。 ここから始まったんだなという感慨と、ここまで複雑なプロットをよく成り立たせたなという驚きが今、胸の中をぐるぐるしてる。
パズルのピースのように散らばった時間と、それが揃ったときの面白さ。
◯作品全体
パズルのピースのように散らばったシーンたちが、登場人物たちの真の関係性を明らかにしていく。少ない登場人物ながら、誰かの関係性が変われば別の誰かの関係性も変わる…というように、状況が変化していく仕掛けが面白かった。
中盤まではビルとコッブの友好的な共犯関係が描かれるが、冒頭に挿入された口に手袋を詰められるビルの姿が不吉な印象を残す。短いカットながら強いフックとなっているところに巧さを感じた。一体ビルは誰にやられたのか。情報の限られたモノクロの画面が、より一層展開にモヤをかけている。
中盤にはコッブと金髪の女の共犯関係、男女関係が明るみになり、ビルにとってはコッブとの共犯関係も、金髪の女との男女関係も裏切られたことになる。次にどのシーンが映るかわからない分、唐突に示される関係性の変化は刺激的な演出だった。終盤、警察へ供述するビルの話と警察側の話に食い違いがでてくるあたりで、すべてはコッブがビルに罪をかぶせる謀略だったことがわかる。そのことはコッブと金髪の女の会話で既に判明していたが、コッブは金髪の女すらも襲撃対象だったことが最後の最後で明らかになる展開が面白かった。「禿げ頭の男」からの指示とコッブを知る人物を消すことができ、コッブはビルが語る妄想の人物としていなくなる。コッブの完璧な作戦はビルと金髪の女が孤独でいることによって成り立っており、作品冒頭でやたら多く映る人混みと、その中を尾行するビルの異質さが対比的で、伏線のような役割をしていた。
時系列がバラバラであることが単純な仕掛けの部分だけでなく、すべてのピースがそろったときの面白さもしっかりとある。ノーラン映画特有の時間の演出は、監督一作目にして核心ここにあり、だった。
○カメラワークとか
・予算がないこともあってモノクロにしたようだけど、モノクロによって建物の様子から状況を推測しづらく、それがまた良かった。屋外なのか屋内なのか、建物は前のシーンとおなじところなのか違うのか。作品内で使われている場所が少ない分、建物からの情報(壁紙の色や新古の状況などなど)も少なくしているように感じた。特にコッブと金髪の女の関係性が初めて明るみになるカットでは、それまで何度も映されていた金髪の女の部屋と同じ場所だと気づけず、金髪の女がベッドで寝そべっている姿が映されたときはかなり衝撃的だった。家の色合いとかが分かっていたらカット頭で「あれ?ここは…」と勘づくことができたかもしれない。
○その他
・ラストシーンでコッブの存在がどんどんと証拠の無いものとなり、ビルが作り上げた妄想の人物のように存在が消えていくところは素晴らしかった。なんとなく『ユージュアルサスペクツ』を思い出すラスト。本作では自分で別の人物を作り出すのではなく、コッブがビルを語らせることで「フッと消えた」を作り出した。
・侵入した先の住民とレストランで出くわす場面では、ビルが強く焦る。コッブがなだめても聞く耳を持たなかった。金庫の前で人を殴ったことも、誰も目撃者がいないにも関わらず直ぐに警察へ駆けこんだ。ビルは人を見る趣味があるくせに人から見られることにはまったく慣れていない。逆の立場になると途端に脆くなるのは物語によくあることだけど、登場人物の行動の根っこにあると、やはり説得力がある。
デビュー作にすでに重要なエッセンスが
クリストファー・ノーラン監督の最初の長編映画だが、同監督作品の主要なエッセンスである「時間」についての鋭い構成力がすでに見られる。時間経過がリニアに進行していない構成の作品なのだが、それがスリラー映画としての完成度を高めている。こういう構成は人物の感情が繋がっていかないので、見るのが難しいと感じる人がいると思う。実際、難しいけど、「メメント」ほど難解でもない。 とあるスランプの脚本家が、ネタ探しにある男を尾行する。その男は泥棒を生業にしていた。二人はある家に侵入するが、色々あって事件に巻き込まれていく。しかし、その裏には男のたくらみがある。 時間軸がシャッフルされている構成は、どこか人の記憶のようでもある。人は出来事を理路整然と時系列通りに覚えているわけではない。エピソードは断片の集積として脳内に保存されている。そういう人の記憶の迷路に迷い込むような、そんな感覚を味わう作品なんだろうと思う。
揺るがない人
多くのファンを有しながら賞には恵まれず、『オッペンハイマー』で遂にアカデミー賞独占を成し遂げたクリストファー・ノーランの監督デビュー作がリバイバル上映です。自身の小説の材料にしようと、様々な人の後をつけている内に思わぬ犯罪に巻き込まれて行くクライム・スリラー。 撮影も自身が担当しているだけあって、監督第一作目とは思えぬほどシャープな映像と作り込んだ物語でした。モノクロ・スタンダードサイズという拘りも監督ならではです。でも、この時から既にノーラン独自の「時制グチャグチャ・シャッフル・ストーリー」の基本姿勢は確立していました。製作費は『オッペンハイマー』の1/100 以下でしょうが、各ショットにノーラン印が刻印されています。「揺るがない人なんだなぁ」とその事に心揺さぶられました。
天才の第一歩
長編デビュー作でこの貫禄。無名の俳優ばかりだろうに風格を感じるのは、監督?脚本?の力なのか。Amazonプライムで見ていて一つ残念だったのは途中で、あれ?3人いる?って思って最初から見直してしまったこと。時系列の入れ替えくらいクリストファー・ノーランはやってくるよー、何で待てなかったんだよ私ー。その後のノーランと比べたらとても素直な分かりやすいストーリーでしたが、微妙にユージュアル・サスペクツ感を感じてしまったのは私だけでしょうか。こっちが先ならスゴイ!と思ったけど、さすがにあちらの方が先っぽいですね。
白黒映画でも食わず嫌いせずに見てみた
あのクリストファーノーランのデビュー作。そう言われなければ絶対に見ない映画。 なにしろ白黒映画なんだ。 吹き替えもない。 時間が短いというのが唯一の救いで、本当に面白いのか不安でいっぱいの中で視聴した。 ノーラン作品をいくつか見てると、その原点である要素を感じ取れる。 時系列がバラバラなのはまさに顕著で、メメントを思い出す。 白黒な所も尚のこと。 ながら見だと絶対ついていけないので、ある程度集中できる時間にみた方がいい。 登場人物は5人ぐらいしかいないものの、なんと言っても白黒だし、時系列が普通じゃないから混乱してもおかしくない。 それでも、終盤に仕掛けられたサプライズに、これぞノーランだとうならされること必至。 ノーランが好きなら見よう。 そうでもないなら覚悟して見よう。
クリストファー・ノーランのデビュー作。面白かった。
クリストファー・ノーランのデビュー作。低予算で作られたので出演しているのは役者ではなく素人ばかり。その為平日は仕事があって人が集まらず撮影出来なかったとか。かくして撮られた映画だが出色の出来。ノーランは最初からノーランだったことが分かる。 バラバラに切って並べかえチラリチラリと見せて観客に推理させるやり口は既に最初から出来上がっていた。というかこれしかないのか?と文句の一つも言いたくなる程毎度のこと。といって好きなのでいつも観るのですが…。笑 ネタ探しの為に気になった人を尾行する行為を繰り返していた作家志望の男。今日も偶然見かけた男をつけていたが相手に見つかってしまう。 その男は空き巣が趣味で一緒にしないか?と誘う。 面白そうなのでその話に乗る作家志望の男。ある家に侵入。段々厄介な事に巻き込まれて…。 70分と短いこともあって途中で先が読めてしまった。でも上手く出来てて面白かったです。
タイトルなし
レンタルがVHSの時代にメメントを観て監督に興味を持ち、インソムニアかフォロウィングのどちらを先に観るかで悩み、インソムニアを観た。そして監督への興味は無くなりフォロウィングは観ないままとなった。再び監督にドハマりした頃には時既に遅く、VHSを観れる環境は無くなりDVDの販売やレンタルも見当たらなかったのだが、この度25周年という事でHD化され、ようやく観る事ができた。
最近のノーラン作品は難しすぎる感が有った為、観る前は少し身構えていたが、そこはデビュー作、若さを感じると言うか、適度な複雑さで楽しめた。
ノーラン版ユージュアルサスペクツ
まさにそんな感じ モノクロなのが雰囲気いいね ただ、時系列バラバラにしたのが必ずしも面白さにつながってないような気もするなー モノクロだからか、ちょいわかりにくかったけど、普通の時系列にした方がラストの展開がより引き立つような気がした ノーランもこれがデビュー作というのはすごいね 短くまとまっているのもすごい この作品があったからこそメメントがあそこまで完成度高くなったのかなと思いました
混乱
プライム対象作品になっていたので鑑賞。 デビュー作の時点で、時間軸を交差させる今の手法を使ってたんやなあ。 70分という短い作品ではあるけど、中身は濃厚。混乱したなあ。サクッとみられる作品ではないけれど、時間が短いのでクリノラファンはみて損はない!
オシャレな映画になりました
クリストファー・ノーラン監督の長編デビュー作。 1998年の作品で70分と短いですが これはまた面白い。 全編モノクロで雰囲気のある映像で セリフも極力少なくオシャレです。 ノーランらしく時系列もちょっと前後することで 複雑なように見せて実はそうでもない。 最後まで話の結末が分からない脚本もいい。
デビュー作とは思えない
とても面白かった。 時間軸が3つあって、 どう繋がって行くのか最後まで目が離せなかった。 クリストファーノーランは理系の監督だと思っていて、 全て計算されていて、時間や数字をイジるというのを デビュー作からやってたのは驚き。 お金は掛かってないだろうにチープさを感じさせない。 時間軸をイジって謎をさらに深くして行く手法だけど イジってなくても面白い脚本も魅力だと思う。 メメントよりは分かりやすく、それでいてメメントっぽさもあって、ファンとして観れて嬉しかった。
罠に嵌った男
なんかちょっとヒッチコック風。
クリストファー・ノーランも人間に興味があるんだね。
私物とかを隠す【箱】とかに好奇心を持つ・・・意外でした。
普通、尾行なんか探偵が仕事
とかじゃなければ、私はしないな。
《ストーリー》
ビルという暇な男が主人公。
小説のネタ探しも兼ねての
尾行が趣味で、尾行中の男の入ったコーヒーショップに座ったのが
ケチの付きはじめ。
尾行を見破られて逆に職質みたいな雰囲気になる。
それからなんとビルはその男・コッブの弟子になり、
空き巣の指南を受ける。
そして2人で空き巣を一緒にするようになる。
金品目当てと言うより住んでる住民のCDの趣味とか、
年齢や学歴などを当てて楽しみ、置いてあるワインを愉しだりするだけ、
の筈が。
空き巣に入った部屋に小さな写真があり、気になったビルはその女を
尾行をする。
ビルは女が入ったバーで女ナンパする。
女は訳ありで、オーナーの女。
女はビルにある物をオーナーの事務所から取り戻してと頼む。
そして忍び込んだ事務所の金庫には女の頼んだ私物以外に
大金の古札の束がぎゅうぎゅう詰めだった。
もちろんビルは全額頂いたさ!!
そしてなんかよく分かんなかったんだけど、
コッブは途中からビルを自分の犯罪の身代わりに仕立てて行く。
オーナーの女から金庫の大金の話と、ビルと女が寝た話を聞き、
おもむろにゴム手袋を嵌め、飲んだワインのコップの指紋を消して・・・・
女を金槌でめった打ちにして殺す。
そして金を持って、何処かへと消える。
後に残ったのは、金を奪い女を殺したと疑いの掛かったビル。
はじめからコッブなんて男は存在しなくて、コッブのアパートの所有者は
空き巣で奪ったクレジットカードの持ち主の、
《D・ロイド!!だった》
押収されたクレジットカードには、ご丁寧にビルの字でサインが?!
(筆跡鑑定なんか、証拠になるんだっけ?)
だけどですねー。
クレジットカードにを取得するには身分証明書(ID)とか、住所、
年齢、電話番号そして銀行などの通帳番号が必要ですよね。
架空口座のクレジットカードなんて?
スパイか?CIAにしか無理だよ!!
と言う訳で、コッブの完全犯罪はバレると思うのでした。
ヒッチコックの「見知らぬ乗客」にちょっと似てますが、
犯人が逃げて罪を被されるビル。
ラストはノーランの本作の方がずっとブラックです。
上手くいけばね。
クラシックな雰囲気なんですけれどお洒落で
さすがクリストファー・ノーランの長編デヴュー作品。
十分に面白い。
私には時間軸が変化している?
その点がそんなに良くわかりませんでした。
そんなに前後してましたっけ?
途中まで面白いけど、結末が。。。
空き巣のコッブの哲学めいた私見が面白く、被害者と出くわすようなピンチでさえ、冷静に分析していて、デザートまで食べようとする余裕っぷりにかなり惹かれた。 時系列をバラバラにして謎を作りつつ、主人公を通してコッブのカッコ良さを魅せるような作りだと思った。 かなり面白いけど、ラストに向けてのコッブの仕掛けがちょっと出来すぎていて、いわゆる無理ゲーに思えて冷めてしまった。 ギリギリ可能と思われる一線を超えてしまうと、なんでもありの世界観に思えて熱が冷める。 なんか惜しい映画。デビュー作だから当たり前か。
実に巧なつくりあがりのクリストファー・ノーランの初長編作品
ビルとコッブと女、基本この3人で話が進行していきますが、
全てコッブの手の上で踊らされていた・・というオチが素晴らしかったです。
ノーランらしく、割と冒頭から時間軸の入れ替えをすることで
「え?これってどういうこと? 今? 過去? 未来?」と色々想像しちゃうんですね。
劇中のキャラクターはコッブが敷いたレールの上を走らされている感じですが、
私たち観客もまた、まんまとノーランに踊らされているのだと思いました。
こういう話は珍しくないですし、驚きもないのですが、
まずもってそこに気づかない自分は、鑑賞中、実に映画に入り込めましたし、楽しめました。
本作を25年前に初長編としてつくっているノーランは、やはり只者ではありませんでしたね。
今まさに、そのことをノーラン自身が物語っていると思います。
本作をリアルタイムで観ていたら、自分はどんな感想を持ったのだろう?と想像を巡らせるものの
今ほど「面白い」と感じたかは微妙です。
なぜなら、ノーラン作品を知っているからこそ楽しめた!ということも、少なからずあっただろうと思うためです。
とは言え、面白い!
それでいいじゃないかと思いました。
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