「フットボール映画の金字塔」タイタンズを忘れない ken1さんの映画レビュー(感想・評価)
フットボール映画の金字塔
僕が最初にアメリカンフットボールのゲームを観たのは、1985年のスーパーボウルだった。以降、これまでの40年弱一度も欠かさずにスーパーボウルを観てきている。85年当時のプロフットボールリーグNFLでQBとして名を売っていたのは、ウォーレン・ムーンとモバイルQBの元祖ランドール・カニンガムくらいで他には見当たらず、黒人監督に至っては皆無と言っていい状況だった。
本作「タイタンズを忘れない」で描かれる1971年という年はそれより遡ること15年。保守的な地域における黒人監督や選手の起用問題が、デモにまで発展するような大問題であったことは、米国スポーツ史にとって恥ずべき歴史としてしっかり刻まれるべきだと思う。現在のNFLにおいては、黒人QBはもちろん、黒人監督も数は少ないながら、定着しつつあり、人種差別問題は過去のものとなりつつあるが、コリン・キャパニックの国歌斉唱拒否事件や、今年マイアミドルフィンズの元監督が起こしたマイノリティに対する就業規則遵守違反問題など、全てが解決したというには程遠いというのが現状だ。
デンゼル・ワシントン演ずるブーン監督が南北戦争の激戦地ゲティスバーグの墓地を訪れ「分断」がどれだけ不毛な悲劇をもたらすのかを選手たちに説く。1971年を描いた2000年の映画は、2022年の現在も世界中をとりまく「分断」へ警鐘を鳴らし続けているように思えた。
若きライアン・ゴズリングの姿も必見。個人的にマイオールタイムベスト10に入る映画だ。
コメントする